第12話
時間の流れは早いもので、私が記憶を取り戻してから2年。私は8歳になった。
あれから平和な日々が続いている。リリーナラリスは…子供達と完全に打ち解けているし、「リリー様」と呼ぶのを許可している。
あれなら、もう悪役令嬢なんぞにはなるまい!強制力?…知らん!!
そして何人かの子は教会を卒業した。
その中のベラちゃんだが、なんと今トロくんとお付き合いしているらしい!
ベラちゃんは街の食堂で働いているが、結婚も秒読みかも~?んふふふふ。
いやあ、最初はヒョロヒョロだったトロくんが、いつの間にかムッキムキになっちゃって…リリーの後押しもありベラちゃんに猛アタックしたらしい。
青春だね~いいね~。
そういえば私は、教会の中では顔を隠すのをやめた。髪邪魔だし。以前リリーが
「ねえアシュリィ。私、あなたの顔を見てみたいわ。」
「わっ私もです!アシュリィ、だめ?」
「ん?ん~…。
母が言うには私…珍しい目の色らしいんですよ。だから隠してただけで、だめってことは…。」
「あら!では見せてちょうだい!」
「うーん。はいどーぞ、つまらないものですが。」
私はぺろーんと前髪を上げた。
そしたらリリーもベラちゃんもカルマもシスターもトロくんも他の子達も、真っ赤な顔して固まった。
…そんなに衝撃な色してた?赤い目っていうと悪魔っぽいよね。でも以前調べたら、魔族も別に目の色が赤いわけではないらしいし…。
リリーは比較的早く復活した。
「そっそそそそんなお顔をしていたのね。たしっ確かに赤い目は見た事ありませんが…こっこっこの教会内では隠さなくてもいいのではなくなくて?」
「リリー様、面白い事になってますよ?」
愉快な事になっているリリーの発言に、他の子達も賛同していた。
…まあ、その方がラクだしいっか。
「あなた、綺麗な顔立ちをしていますわね…。」
「ええー?いやいや、綺麗っていうのはリリー様みたいな人!いっつも側で美少女を眺められて眼福ってモンです。」
「アシュリィ、おじさんくさい。って無自覚なのね…。あ、カルマの初恋が奪われた…。」
「?カルマがどうかした?あ、ベラちゃんは可愛い系だよね!というより褐色の肌に大きな瞳、南国の離島のアイドルって感じ!」
「あい、どる?」
「おっといかん。ささ、休憩終わらせて勉強の続きしましょう!」
…という事があったのだ。懐かしーい。
さーて、今日もリリー来るかな。魔導書読みたいって言ったら、持ってきてくれるって言ってたんだよねー!
本格的に魔法の勉強が出来る!!とか考えていたら、後ろからシスターに声をかけられた。
「アシュリィ、アシュリィこちらにいらっしゃい。」
「シスター?私何も怒られる事してないよ?」
「違うわよ…頼みたい事があるの。」
「あ、なーんだ。どんな?」
「全く。実は…今日から新しい子が入るのよ。ただちょっとその子気性が荒いようで…みんなに馴染むまであなたに付いてほしいの。」
「ちょっとぅ、か弱い女の子にそんな事言うなんて。」
「か弱い女の子は素手で猪を狩らないわよ?」
「……。」
もうこの2年で、私のステータスが桁違いなのはバレバレだ。明確な数字は誰にも教えていないが…みんな悟ったらしい。
リリーすらも「最初はあなたに勝つ!とか思ってたけど…そんな気すら失せちゃったわ」と言っていた。
喧嘩は誰にも負けないし、素手で狩りをする。どんだけ走り回っても息も切れないし寝惚けて壁に頭突きしたら大穴が開いた。
…うん、認めよう。私はゴリラだと。
「…で、どんな子ですか?」
「それがねえ。年齢も分からないし名前が無いって言うの。青い髪の男の子としか聞いてないわ。」
ふうん?私も誕生日はあやふやだったけど大体の日を自分で決めた。
しかしその子は名前もないときたか…。
「…とりあえず、会ってみます。」
「お願いね。」
そうして私とシスターは、男の子を迎えに行った。
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