第13話



「ってシスター、どこ行くの!?教会出ちゃってるけど?」


「今から迎えに行くのよ~。」


 迎えに行くってまさか、外とは思わなかったよ。

 そして着いた先は…警備隊の詰所?…おいおい。





「こんにちは、来ましたよ。」


「お、サラさん待ってましたよ!あとは…殺人タックラーの嬢ちゃんも!」


「おう嬢ちゃん!よく来たなー。」


「待って待って。殺人タックラーってなんですか!?」


 サラとは、シスターの名前だ…って聞き捨てならん異名がついている!?

 警備隊のおっちゃん達に詰め寄った。



「ん?以前侯爵令嬢を襲った男にタックル喰らわしたの嬢ちゃんだろ?

 それ以来ここじゃあな、殺人タックラーって呼ばれてんだよ!」


 がははははっ!じゃないわーーー!!

 だが、タックルは事実…っ!



「はあ…もーいーです。で、男の子は?」


「おう。今連れてくらあ。」





 そして待つ事数分。お兄さんに連れて来られた少年は、見るからにガリガリで傷だらけの身体をしていた。

 シスターも隣で息を呑んだのが分かった。これは…。



「隊長さん、彼は…。」


「ああ、どうやら隣の領地にあるスラムに住んでたようでなあ。先週肉屋のコロッケ盗んだもんで捕まえたんだが…このナリでなあ。

 あんま酷え扱いする訳にもいかんし…そんで殺人タックラーの嬢ちゃんもいる教会に連絡したんだ。」


 シスターに隊長と呼ばれた髭面のおっちゃんが答えた。タックラーは忘れろや。

 この領地にスラムはない。あのいけすかない侯爵家だが…税は重くないし領主としては素晴らしい人物なのだ。腹立つが。

 そしておっちゃんは私に耳打ちしてきた。


「あの坊主よお…コロッケ盗んだ際に肉屋のオッサンに怪我させちまってな。

 んでもそのまま逃げねえで隣の魚屋に助けを求めてな。そんであっさり捕まったんだが…性根はいい奴だと思うぜ?

 頼んだぜ、嬢ちゃん!」



 そう言いながらおっちゃんは私の背中をばしばし叩いた。痛くはないが、やめい。

 そうか…あの魔力が6しかないおじさんを…。


 私は少年に向き直った。



「はじめまして、私アシュリィ。今日からあなたの家族よ。よろしくね。」



 私はひとまず笑顔で(目は隠れてるが)優しく言いながら手を差し出した。すると


「うるせえ、タックルゴリラ。」




 気付いた時には私は、少年にアイアンクローを喰らわしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る