第十七章 もうひとつの初めて(番外編)

 1 信じるこころ

~私が幼馴染の彼を意識し出したのは、中学生になってからでした。初恋の相手でもあり、多分ファーストキスの相手でもあります。私が告白されたのを彼に相談したのが、すれ違いの始まりでした。そして、彼には私の親友を紹介し、ますます遠い存在になっていきました。でも、彼は私の元に戻ってきました。~茜


 愛海から真斗と別れたという話を聞き、茜は真斗を呼び出した。

「真ちゃん、随分愛海を傷付けたみたいだね。女の子の気持ちを全然分かって上げないから。愛海を悩ませて、悲しませて。」茜は真斗を睨みつけた。

「悪いとは思っているけど、彼女とは恋愛の考え方が違ったみたいで…。」

「愛海もそんな事言っていたけど、女の子は受け身なんだよ。男の身勝手な欲望を押し付けるのは、恋愛のルールに反すると思うな。」茜が何を言い出すのかを探ろうと、真斗は真顔だった。

「それに愛海を裏切って、他の女とも付き合ったでしょ。最低だよ。この前の約束はどうなったの?藤森とは切れたんだよね。」

藤森が仲尾梨沙を妊娠させて別れた事、数人の女子とトラブルになっている事を、茜は噂で聞いていた。当然真斗も知っているはずだ。

「茜の言う通りだ。俺、どうかしていたよ。藤森とは、今は遊んでない。」

茜は真斗が愁傷になっている様子を見て、信じてみようと思った。そして、真斗の本気を引き出したくて、一緒に勉強を始めた。


 9月になって、茜と真斗は放課後を図書室で、土日をお互いの家で、ほとんど茜のペースで勉強していた。両家の親は、二人が一緒に勉強する事を喜んで見守っていた。真斗は遅れを取り戻そうと、茜に付いて行った。目標は、地元の大学に二人そろって合格する事だった。1か月後の中間テスト、2か月後の模擬試験の結果は目を見張るものがあった。真斗の学力はまだ茜には追い付いていないが、成果を実感していた。

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