3 初体験のあと

 私達はしばらくじっと抱き合いながら、余韻を味わっていた。すると、下の玄関が開いたような気がして真斗に告げると、「妹が帰って来た」とあわてていた。真斗は私から離れるとベッドから起き上がり、すばやくTシャツをかぶった。引き裂かれたロミオとジュリエットのような気持ちで、私も驚いて身づくろいに走った。髪を整え、何もなかったような顔をするのもつらかったが、精いっぱい演じながら、真斗に付いて下へ降りて行った。麻実ちゃんは疑う様子もなく、「来ていたんだ」くらいの接し方だった。うちのませた妹とは随分違うと思ったが、何も知らないこんな子をだますのは居たたまれなかった。


 真斗が途中まで送ってくれて家に帰った。妹の彩海は部活でまだ帰っておらず、母親も買い物に出ているようだった。「良かった」と私は心の中で思った。誤魔化すのは馴れたものだと言え、今日はさすがに顔を合わせるのはつらかった。真斗の汗の臭いが着いているような気がして、名残惜しい気持ちもあるが、シャワーを浴びる事にした。身体を洗い流していると、さっきまで真斗が触れていた感覚が呼び覚まされて動揺した。

 シャワーから出ると、母親が帰っていてびっくりした。

「何を驚いているの。シャワーに入っていたの?」母親の問い掛けに「うん」とだけ答えて、自分の部屋に駆け上がった。


 その晩ベッドの中で、真斗との行為をもう一度振り返っていた。真斗と結ばれて、名実ともに恋人と呼ばれる関係になった。私は真斗と一つになれて、うれしくて泣いていた。真斗はいたわってくれたが、それよりも私とできた事自体を喜んでいるように見えた。私は真斗の事が愛おしくてたまらないのに、男の子は現実的なのかな、私には男の子の気持がよく分からない。でも、二人の関係はより深まったのは事実だ。そして、真斗の事をもっと知りたいと思った。

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