第十章 初めての体験
1 高ぶる気持ち
冬休みはあっという間に過ぎた。これから本格的に寒さが増してくる。セーラー服は風通しが良過ぎて、冬には不向きだ。上から指定のセーターを着て、これもまた指定のコートを身に着けて、私は新学期の始まる学校へと向かった。
学校に着くと、茜や修学旅行で同じ班だった美樹と七瀬が出迎えてくれた。始業式が始まるまで、クリスマスはどうだったか、冬休みをどう過ごしたかとか、話が盛り上がった。何となく茜が寂しそうなのが気になっていた。真斗との進展具合は、言い出せないでいた。
午前中で放課になり、真斗と学校帰りに駅前のカラオケ店に入った。二人きりになれる場所と言ったら、ここしか考え付かず制服で初めて入った。コートを脱いで曲を見ていると、真斗が飲み物を持って入ってきた。しばらくは話をしながら、合間に歌を歌った。
1時間が経過した頃、真斗が「我慢できない」と言って私に抱き着いてきた。
「駄目だよ、真斗。見られるよ。」私の制止も聞かず、真斗は唇を重ねてきた。駄々っ子をあやすように、私は真斗の頭を
延長を知らせる電話に平常心に戻り、延長はせず二人でカラオケ店を出た。
真斗も私も、部活動は休まずに出席し、時間がある時に会っていた。会った時は、どうしても帰りが遅くなってしまい、母親にとがめられる事もあった。ただ困っているのは、二人だけになれる場所だった。公園は寒過ぎて30分といられないし、その都度カラオケに行かれる訳がない。
公園で寒さを
卒業式が終わって皆が帰った後、真斗と空き教室でキスをしていた。寒さしのぎにはなったが、学校という場所では真斗が望むような展開には到らなかった。そこへ茜が廊下を通りかかったので、
「茜、どうしたの?泣いているの?」
「あっ、愛海か、真斗も一緒なんだね。また後で話すよ。」と茜は言って去っていった。
後から聞いた話では、倉橋英之と正式に別れたという。倉橋先輩は東京の大学に進学が決まり、茜も喜んでいたが、連絡が取れず会う事ができなかったと言っていた。
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