2 恋のめばえ
家に着いたのは、もう7時近かった。玄関を開けると母親が飛び出してきて、
「遅いじゃない、どこ行っていたの。お友達?誰と?」
「うん、ちょっと遅くなってごめん。」誰とどこで何をしていたのかは、答える気にならなかった。母親の顔はなるべく見ないようにして、自分の部屋へ入った。真斗とのキスがばれるのではないかとドキドキした。
大人ってこんな時どうするのだろう。キスしたり抱き合ったりして、その後何もなかったかのように、平気な顔をして過ごしている。今の私は、顔にも態度にも出てしまいそうだ。
「お姉ちゃんどうしたの。ママが心配してたよ。」妹の彩海が部屋に入ってきた。お願いだから一人にしてよと思いながら、
「どうもしないよ。」と言葉を返す。
「お姉ちゃん、勉強は進んだの?アタシ知ってるよ、真斗君とでしょ。」何で彼氏の名前まで知っているのかと思ったが、
「進んだわよ。彩海こそ宿題終わったの?」と訊き返した。
「いいな、勉強よりもほかの事が進んだりして…キスした?」何と鋭い洞察力、ませた妹にはこういう所が
「なに馬鹿な事言ってるの。する訳ないでしょ、あっちに行っててよ。」と顔が赤くなっているのが、自分でも分かった。
家族との夕食は、食べた気がしなかった。会話も上の空で、自分でも変な態度だなと思った。母親はおそらく何かを感じ取っているに違いない。それを考えると、益々居づらくなって、早々に部屋に引き返した。
部屋に入ってスマホを見ると、真斗からメールが来ていた。
〈今日は楽しかったよ。二人だけの秘密ができたね。すぐにでも逢いたい〉
これまでにないラブコールで、どきっとした。
〈今日はありがとう。真斗が近くなったような気がするよ。うれしかった〉とわざと冷静さを装って返した。
ベッドに入っても、なかなか寝付けなかった。真斗に肩を抱かれてキスされて、私はそれを待っていた。真斗の唇が触れた時は、頭の中が変になりそうだった。何なのだろう、これが茜の言っていた心で感じるという事なのかな。
彼と彼女の関係、恋愛のスタート地点でまごまごしていた私は、一つ目のハードルを超えた。真斗に逢いたい。優しく触れられたい。自分の手で胸を抱きながら、眠りに付いた。
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