2 海辺のふれあい
約束の朝は、真夏のじりじりとした暑さを予感させる青空だった。ボートネックのTシャツにコットンのショートパンツを身に着けて駅へと向かった。駅には、すでに真斗と藤森君が来ていた。二人とも柄の付いた半そでのシャツにジャージ風のハーフパンツを着ていた。時間ギリギリになって、梨沙がやってきた。レモン色のタンクトップに白のパーカー、薄いピンクのフレアスカートという格好で圧倒された。しかも腰高のミニで、下着が見えそうだ。
電車に乗って金沢八景で乗り換えて、三浦海岸に向かう。思っていたより混雑していたが、途中で座る事ができた。藤森君と梨沙は立ったままで、イチャイチャとしていた。降りる駅に近付いた所で、梨沙が寄って来て、「愛海先輩、部活お疲れ様でした。今日はよろしくお願いします。」と罪のない事を言ってくる。当たり障りのない会話を交わしている内に駅に着いた。
朝の9時半、平日にもかかわらず、海岸には多くの家族連れやカップルが
飲み物を二つずつ持った二人がやってきた。男子の裸は学校のプールで見慣れているが、こうして海岸で見るとよりたくましく見える。真斗は胸と肩に筋肉がしっかり付いているし、藤森君は脚の筋肉と腹筋がすごい。
「おー!似合ってるよ、梨沙。ビキニか、いいね。オッと!愛海ちゃんも、そのワンピースいいよ。」藤本君はすかさず
ビーチマットを敷いて4人で座っていると、すぐ横で藤森君が梨沙の背中に日焼け止めクリームを塗っていた。私が自分で塗っているのを見て真斗が、
「愛海、背中に塗ってやろうか?」と遠慮しながら言ってきた。断る理由もないので、クリームを手渡した。真斗は恐る恐る肌に触れてくるので、くすぐったくて仕方がなかった。男の子に直接肌に触られるのは初めてだし、真斗の手だと思うとぞくぞくした。
「よし海に入ろう。」と叫んで、藤森君が飛び出した。その後を梨沙が追いかけていった。私達は、真斗が手を差し伸べてきたので、手を繋いで海に向かった。水の中では、真斗が抱き着いてきたり、真斗の背中に私が抱き着いたりして、開放的な気分になっていた。泳ぎ疲れて砂浜に上がり、4人でビーチボールで遊んだり、砂を掛け合ったりして時間を過ごした。
昼食を摂って寝転んでいると、藤森君と梨沙の姿が見えなかった。しばらくしても帰って来ないので、
「ねえ、あの二人どこへ行ったのかな?トイレに行きながら見てくるね。」と声を掛けたが、真斗は関心がなさそうにまだ眠っていた。一人でトイレまで歩き、辺りをキョロキョロしていると、海の家の陰に見覚えのある色の水着を着た二人を見つけた。声を掛けようと近付くと、二人は水着のまま抱き合っていた。すぐに何をしていたか分かったので、
「どうだった?どこかにいた?」と真斗に訊かれたが、
「どこにもいなかった」と嘘を付いた。胸がバクバクして、真斗に聞こえるのではないかと思ったくらいだ。
しばらくして二人は、何事もなかったかのように帰って来た。そのあと、また海に入ってしばらく泳いでから帰りの支度をした。日も傾いてきて、騒がしかった砂浜は静けさを取り戻しつつあった。
帰りの電車では運よく座れた。私は海の疲れもあって、真斗の肩を借りて頭をもたせ掛けて眠っていた。海の
目が覚めると、真斗の手が私の肩に置かれていた。真斗の手は肩から髪の毛に移り、優しく髪の毛を撫でながら、
「前に一回逃げられているから、どうしようかと迷っていたんだけど、今日はいいよね。」公園での事は、あの後謝っていた。周囲に人がいる恥ずかしさと、真斗の手の温かさとで胸の鼓動は高鳴っていた。そして、海岸での藤森君と梨沙の姿が、目の奥でちらついていた。
電車を乗り換えた後は、指と指を絡める恋人つなぎをして立っていた。
「愛海、疲れたみたいだね。それにしっかりと日焼けしてるし。」
「うん、真斗みたいに体力ないからね。身体が火照ってるみたい。」というと、にこやかに
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます