高3女子のわたしは週末だけ勇者やってます
海嶺
第1話
魔王、それは瘴気と呼ばれる闇の空気を纏いし魔族の王。数十年の時を経てこの世に復活した。そして、対抗するには聖女か勇者を見つけ出し、光の力を持って退治することしか手段がないと伝えられている。
「やはり聖女は行方不明のままです」
「仕方がない…勇者を召喚しよう」
聖女はこの世界で生まれし者であり、勇者は異世界より呼ばれし者である。今よりおよそ二十年前ほど、聖女はこの世界に存在した。そして、魔王を封印することに成功していた。
しかし、魔王を封印直後に聖女が行方不明となりその力は徐々に弱まっていた。通常であれば数百年単位で魔王が復活することはないのだが、聖女不在により二十年程度で魔王は復活してしまったのだった。
ここ、ランデイ王国で『勇者召喚の儀』が行われようとしていた。
王様を筆頭に、王家に仕えるの魔導士、王子という最小限の人数にて行われることとなった。魔王復活はまだ一部の者しか知られていないため、国民の不安を煽るようなことをしないためである。
王城の地下に広い部屋があり、その真ん中に大きな魔法陣が描かれていた。
魔導士が魔力を込めて召喚の魔法を発動させる。
魔法陣の中心が眩しく光ったかと思うと、そこに人が立っている。無事に召喚の儀は成功したらしい。
目が慣れてきたため、召喚された人物を確認する。が、予想とはだいぶ違う人物が立っていた。
「何、ここ?」
ベージュのジャケットを羽織り、白いシャツには緑色のリボン。チェック柄でやや丈の短いプリーツスカートといった出で立ち。いわゆる『女子高生』であった。
彼女は今の状況が分からずにキョロキョロと辺りをこれでもかと見回している。
(失敗したのか?)
その場に居た者は皆そう思ったが、描かれた魔法陣は消えており無事に成功したことが分かる。
女性の勇者が召喚されるのは実は初めてのことだったが、藁にもすがる思いでこの国の現状を彼女に伝えるのであった。
「ふーん。分かった!勇者になってこの国を助けて欲しいのね。それは分かった!でも…わたし学生なんだよね。それも高3だよ!何が何でも高校だけは卒業しないといけないの!
だから、学校のない週末だけなら勇者になっても良いよ」
「コウコウとは何か分かりませんが、勇者になっていただけるのですか!?」
魔法陣は成功を訴えているが、もしかしたら失敗かもしれないと思い、内心はとても怯えている魔導士が彼女に向かってそう言う。
「だから、週末の土・日だけなら、だよ」
「ドニチは分かりませんが、二日ということでしょうか…」
「そう。でね、今日は木曜で明日は金曜だから帰してくれない?土曜にまたこちらに来るから!嘘はつかないよ。約束する!」
にっこりとそれはそれは輝く笑顔で召喚された彼女が言うものだから、誰も否定の言葉を発することが出来なかった。
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