-06.幸福をみんなで分け合った
俺たちは近くのカラオケボックスに3人で入った。
今この二人をこのまま家に帰すわけにはいかないもんな。
放心状態のまま俺に促されて、俺から渡されたナンバーズの投票券をじっと見ていた。
そろそろ戻ってきてほしい。
「お~い。大丈夫か?」
俺は二人に声をかけたが、まだ戻ってこない。
ただの屍のようだ。
「誰が屍やねん。」
と義男はなぜか関西弁で復帰した。
それを聞いて、しおりもハッと我に返ってきた。
「俺も昨日その状態だった。そして夕食後は母さんと美香もその状態になった。」
と俺が言うとまた思い出して、ナンバーズの投票券をじっと見た。
「これはあくまで実証実験だからね?まずその投票券はさっきのスクラッチとは条件が違うからね。いい?あくまで数字を選んだのが君たち自身。買ったのは俺。ここまではいい?」
二人はうんうんとうなずいた。
「その上で、抽選時に持っているのは数字を選んだ二人なんだよ。ここが一番大事なんだ。俺に授かった運っていうのがどの時点で作用するのか、少なくともさっきのスクラッチで俺が金を払って選んで購入した時点で、あたりは確定してるみたいだけどね。」
というと、先ほどのスクラッチくじの一連の流れを思い出して二人ともハッとなった。
「そう、あとはこの二つのスクラッチの束が俺の手元にある。これは俺がさっき買うときに気になったんで買い足した2つの束だ。それぞれ10枚つづりになっている。これを購入したのは俺だけど、これを転売、つまりお前たち二人に売ったらどうなるんだろうか。二人とも2,000円持ってる?」
と聞くと二人とも慌てて財布から2,000円を出した。
「じゃあ、どっちでもいいから選んで。おそらく結果はどっちも一緒だと思うけどね。」
それぞれ自分に近い方の10枚を取った。
そして俺に促されるままに二人はスクラッチを削っていった。
俺の予想通り、二人とも同じように1等から5等までが入っていた。
二人とも3,111,200円の当選金を獲得した。
「さて、これでもう一つ検証できたな。俺が買ったものを転売しても俺の運はそのまま残ってるってことだよね。一体どれだけの確立だよ。10枚のうちに1等から5等まで入っててそれが3つ連続で当たる。あ、俺だけでいえば昨日も一回あるから4連続だな。」
しおりはそれを聞いて泣き出した。
「ノリ君死んじゃわないよね。」
「うちのかあさんたちと同じ乗りだな。大丈夫だよ。死なないよ。」
「それにしてもこの当選金、俺たちがもらっていいのかよ。」
義男は俺に聞いてきた。しおりも同じ顔で俺を見ている。
「もちろんそれはお前たち二人のだよ。それはさっき俺が代わりに買ってきたとして、君たちがお金を払ってるからね。何の気兼ねなしにそれは君たちが受け取る権利があるんだから受け取ってね。」
と俺は行った。
「それに俺には今日も300万円手に入ったからね。」
と先ほど削ったスクラッチの当たりくじをひらひらと出した。
それを見た二人は笑い出した。
「ああ、そうそう。二人は宝くじを換金したことないよな?5万円以下は窓口でも払い戻してくれるらしいけど、それ以上になると銀行の支店で窓口対応になるぞ。あそこの銀行口座を持ってなかったら、口座を作るために住民票と印鑑もって銀行の営業中に窓口に行く必要があるな。そうそう、ナンバーズも同じだから気を付けてね。」
俺はそれから役所のどこに行けば住民票が取れるかを話した。
学校があるから、当分は無理だろうな。
一番早くても1学期の中間テスト後のテスト休みかな?
うまく平日に休みが取れればいいけどね。
親にばれちゃうと大変なことになるから当分は親にも内緒にしておくように話した。
「じゃあ、中間テストのテスト休みに換金だな。」
「おぉぉぉ。」
と義男はうなりだした。
俺は二人に念を押しておいた。
「あくまでこれは検証だからね。いつでもいくらでもわいてくる打ち出の小づちとは違うから勘違いしないでね。二人はあくまで俺の検証に付き合ってその報酬がそれだからね。外れることも想定してるから。特に今日買ったナンバーズは外れる可能性が高いと思うんだ。」
「あ、数字を私たちが選んだから?」
「うん。買ってきたのは俺でも数字を選んだのは俺じゃないからね。明日はこの逆をやりたいんだ。俺が数字を選んでお金を渡すから二人に勝ってきてもらう。それで当たるかどうか。そしてその次は来週になるけど俺が数字を選んで二人が二人のお金で買ってくるんだ。そうするとどういうところに運が作用しているかわかる気がするんだ。」
二人はその検証に納得してくれたようだ。
「とりあえずなにも歌ってないしなにも飲んでないけど、ここを出ようか?もうすぐ窓口が閉まっちゃうから、二人ともせめて3等以下の当たりくじを換金してきなよ。」
そう言われてすぐに二人は宝くじ売り場の窓口に向かった。俺はカラオケ屋の料金を払ってから二人を追いかけた。二人とも笑顔だ。
ちゃんと換金できたみたいだ。
「注意しなきゃいけないのはこういうところをチンピラとかに見つかるとややこしいことになるからね。十分注意してね。」
俺はそう言って2人と一緒に家に帰った。
それぞれの家の前まで送って行って、二人ともに念押ししておいた。
俺は
「ただいま。」
と、ようやく家にたどり着いた。
「遅かったわね、晩御飯出来てるから食べちゃいなさい。」
といわれて、俺はとりあえず2階に上がって着替えてから、ダイニングテーブルに座って、夕食をいただいた。
今日は煮物と焼き魚だ。
うん、おいしい。
美香はもう夕食を済ませてさっそく勉強しているらしい。
関心関心。
俺も予習復習はしておいた方がいいな。
俺は風呂に入って寝る前に復習と予習を済ませて眠りについた。
その後の検証結果として、
次の週の火曜日にはしおりが700万円、義男が同様に700万円ほどになった。
おふくろのビンゴ5は当たって、700万円ほどになっていた。
来週は美香がビンゴ5を買う予定だ。
俺たちは根が小心者なのか、特に豪遊することもなく、週に2度ほどバーガーショップによってハンバーガーを食べるのが関の山だ。
義男もしおりも夏にはバイクの免許を取って、バイクを買う予定だ。
バイクの免許は親に話して承諾書を取る必要があるから、今までの貯金で教習所に通うと話をしたらしい。
バイクは3人とも中型バイクを買う予定だ。
それで保管場所は俺の家の納屋にすればいいと相談していた。
まずは免許を取らないとな。
俺は何度かスクラッチくじで買い方を試していた。
そんなに何回も1等賞から5等賞まで当たってたら切りがないし怪しまれるのが落ちだろう。
そこで狙った等だけを当てれないか試してみた。
すると、スクラッチカードを買うときにその狙った等があるかどうかがわかるようになってきた。
これで当分の小遣いには困らないだろう。
俺は母さんにお願いして俺の手元にあったスクラッチの当たり券310万円を換金してもらって父さんの口座を作って、300万円入れておいてもらった。
10万円だけ手元に残しておいた。
そのお金でスマホをもう一台買って、父さんの投資専用にそのスマホを設定しておいた。これで父さんの口座にもお金がたまっていくだろう。
宝くじばかりじゃあまりにも目立ちすぎるだろうから、俺は母さんと相談して株の口座も開いてもらうようにした。
これは俺たち家族全員の口座を作っておいた。
俺と義男はサッカー部を見学して、入部することにした。
しおりも俺たちの見学についてきていたところをサッカー部の主将に懇願されてマネージャーを引き受けることになった。
これでまた3人で一緒にいれる時間が増える。
俺たちは放課後汗を流して、一緒に部活を頑張っている。
さて、今日は火曜日だ。
明日もスキルメールは来るのかな?
来るとしたら今度はどんなスキルを授かるんだろうか。
そんなことを楽しみにしながら俺は部活で疲れ果てて寝た。
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