第45話 カクヨムコン
9月最後の月曜日、そろそろこの表現にも飽きてきましたでしょうか? その日の放課後にパレット達はいつものように視聴覚室へ。扉を開けると先輩2人が熱心に何かを話していました。
好奇心旺盛なミッチーは、すぐにその先輩方の真後ろの席に座ります。そうして元気良くその好奇心を満たそうとしました。
「何話してるんですかー?」
「えっと……あの……コンテストの……話、です」
「何のコンテストですか~」
「カクヨムコンの事よ!」
創作が漫画メインのミッチーは、その言葉が一瞬理解出来ずに首を捻ります。そんな友人の態度を見たパレットは、すぐにフォローに入りました。
「カクヨムコンって言うのはKADOKAWAのWEB投稿小説サイトのカクヨムが毎年冬の時期にやってる大きなコンテストの事だよっ! 大賞に選ばれると賞金100万円と作品が書籍化されるの!」
「へ~っ。よく知ってるねパレット」
「ま、まぁ……。趣味が小説の人にとっては割と常識だし?」
「あ、この間書いてたネタってカクヨムコン用だった?」
「は?」
先日パレットはミッチーに自作の創作ノートを見られています。それで誤解されたみたいでした。パレット自身、コンテストには全く興味がなかったので速攻で否定します。
「違う違う! あれは単にネタを思いついたから練ってただけ。コンテストに臨むなんて考えた事もないよ!」
その遠慮とも謙遜とも取れる反応を見て、大西先輩の目が輝きました。
「え? 何々? パレット新作考えてるん? 長編? ジャンルは?」
「や、そんな先輩も食いつかないでくださいよー!」
「カクヨムコンは参加費も参加資格もないお祭りよ? ネタがあるんやったら参加せんと嘘やけん!」
「えーっ」
「そうだそうだ! 参加しろー!」
先輩の言葉にミッチーも追従します。この思わぬ流れにパレットは困惑しました。
「いやでも書籍化を目指す本気の方々が参加するコンテストですよ? 私なんかが……」
「何言うとるん? そりゃそう言う人達も多いのは当然やけど、自分の実力を試したいだけの人や、コンテストだから読まれる確率が高いのを利用してただ読まれたいってだけが理由の参加者も多いんよ?」
「えっ?」
「そう……私達も記念受験的な感じで……参加するんだから」
部長までこの勧誘に参加して、パレット包囲網が見事に出来上がってしまいます。この窮地を脱するために、パレットは一計を案じました。
「じゃ、じゃあ、そう言う作品が書けたら参加するかも……です」
「ヨシ! 言うたね? じゃあ一緒に参加しよ!」
「いや、あくまでも作品が書けたらで、10万文字とか私にはまだ……」
「長編無理やったら短編でええやん」
そう、パレットは短編部門の事をすっかり忘れていたのです。カクヨムコンで募集されている短編作品は1万文字以内と言うボリュームで、短編賞に選ばれれば作品がコミカライズされると言う特典が付きます。つまり、漫画のような面白さが求められていました。
先輩に逃げ道を封じられつつ、パレットは愛想笑いでごまかします。
「そ、そうですね。短編なら狙えるかもです。でも書けるかな? あはは……」
「まだ時間はあるから、その間にいいものがきっと思いつくって!」
「ちょ、ミッチー、いい加減な事……」
「私もパレットの参加が楽しみやわ~。一緒にお祭りに参加して盛り上げよね!」
「あはは……」
その後も話はカクヨムコンの話題で盛り上がり、パレットは先輩達をおだてたり、ミッチーにツッコミを入れたりして話の矛先が自分に向かないように努力をします。そうして、出来れば自分が参加する流れを忘れてくれたらいいのになとか思ったのでした。
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