第23話 襲撃

林の中に1発の発砲音が響く。


モヒカン達が撃った銃弾は、俺達のトラックの下へ逸れていった。


よく見ると銃口が斜め下を向いている。


どうやらタイヤを狙っているらしい。


彼らは、バイクに乗りながら、2人は銃を構え、4人は釘バットを持っていた。


ボス格のデブモヒカンは、ハーレーにどっしりかまえ、武器はまだわからない。


銃口がこちらに向けられたまま、道が連続するS字カーブに差し掛かる。


敵との間で林が視界を遮る。


少しの間だけ、銃撃を防げそうだ。



「おい、あいつらのタイヤ打てるか?」


俺は炊飯器に聞く。


「誰に聞いてんのよ、当たり前じゃない。」


「ウィーーーン。」


炊飯器の上部からハンドガンがせり上がる。


「キシーン。」


という音と共にハンドガンがセットされた。


側部からは細いロボットアームがニョキニョキと伸び、引き金に指をかける。


ビジュアルとしては、顔だけのちょんまげ、もしくは顔だけアイスラッガーといった面持ちなのだが、妙な迫力がある。


人を殺すことのできる銃がセットされているせい。 あるいはこの状況では唯一頼れる存在だからだろうか。


「撃ってくれ。」


俺はすがるような声で頼んだ。


「はぁー、それじゃダメね。」


炊飯器がやれやれというモーションをする、機械の体なのに、やけに滑らかに動く。


「安全装置が解除されていないわ。」


敵が加速し、徐々に距離を詰められているのが見える。


「アナタにやる気がないなら、ワタシ、何も出来ない。」


この場面で何を言っているんだ、コイツわ。


呆れ顔をする俺に少年が話しかける。


「ツクル、その機体が言ってるのは間違ってはねぇんだ。」


「指輪による生態認証があんだよ。 だから、ツクルが本当に銃を撃つと思って指示しないと、そいつは、安全装置を解除出来ない。」


なんて不便なシステムだ。


俺の銃を撃つ覚悟が足りないといいたいのか?


俺はあのモヒカン達を追っ払いたいし、撃つ覚悟はある。


確かに殺す気はないし、怪我もさせたくはないが、この状況だぞ。銃を撃つ気はあるに決まっている。


このゴミシステムのせいで殺されるのはまっぴらごめんだ。


何か方法を考えろ。何か。



林の中に2発の発砲音が響く。


俺の目の前には、炊飯器がいた。


背伸びして、銃口との間に立っている。


俺を防御してくれていたのだ。


「お前、大丈夫か。」


「ダメマスターを守るのも、パートナーの仕事なのかしら。」


炊飯器の側面に、弾が掠った傷がついている。


コイツ、俺のために身体をはりやがって。


思わず抱きしめそうになった時に、少年が倒れた。


荷台に血が広がる。

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