ササミ肉のホネ
森へ
「コツコツ(澄み渡る空が気持ちいい)」
夜に生きるはずのアンデットが日の光を全身に浴びているのは違和感だけしかないがここには一匹のスケルトンと一匹のトカゲしかいないので誰もツッコまない。
「誰がトカゲじゃ!」
「コツコツ(いきなり大声を出してどうしたバハニュート?)」
「いや、なんか今誰かがワシのことをトカゲ扱いした気がしたのじゃ。」
「コツコツ(俺たち以外誰もいないぞ?)」
周囲を確認してダスケはバハニュートへ視線を移す。
「うむ、確かに誰もおらんのじゃが何故かそう思ったのじゃ。ま、気にするな。それより魔物を探すのじゃ。レベルを上げ、MPを増やし、早くワシのホネを召喚するのじゃ。」
自称龍神であるバハニュートはどうしても命令口調になるようだ。
ダスケも魔物を倒してMPを上げて至高のホネループを実現したいので特にバハニュートの言葉に否はない。
「コツコツ(それじゃ、魔物を探しますか。)」
ダスケは転移陣が隠されていた洞窟を出て森の中を進む。
バハニュートは自分では歩かずにダスケの頭に乗っかっている。
始めは自分で歩いていたのだが速さ1のダスケよりも移動速度が遅いためにダスケが頭に乗せて歩くことにしたのだ。
一秒でも早く魔物を見つけレベルを上げMPを増やさないといけない。
それ以外のことは些事でしかないのだ。
魔物を探してダスケは森の奥へと進んでゆく。
生身の人であれば草木の葉で切り傷ができたり虫に刺されたりと散々な目に合いそうなくらい植物が鬱蒼と茂っているがスケルトンのダスケには関係ないためドンドン進んでゆく。
「ペッペ、ダスケよ。少しはワシのを気にかけてくれんかの。」
ダスケの頭上に乗っているバハニュートはダスケが木々の間を通り抜ける度に枝と葉が顔にぶつかっているようだ。
「コツコツ(あっ、忘れてました。でもバハニュートっで実体がないって話じゃなかった?)」
トカゲ姿のバハニュートは精神生命体であって幽霊に近い存在である。
なので物理的影響は受けないはずなのだ。
そのこともあってダスケはバハニュートの存在を忘れて行動していたのだ。
「普通はそうなんじゃが今はダスケに置いて行かれないように頭にしがみつくために実体化しておるんじゃよ。」
精神生命体は物理現象の影響を受けない。
つまりそのままではダスケの頭に乗ってもすり抜けてしまうので結局自力で移動しないといけない。
実体化することで物理的影響を受けるようになり、ダスケの頭にしがみつけるようになるのだ。
「コツコツ(なるほど、気を付けるよ)」
「うむ、それより、ようやく獲物が現れたようじゃぞ。」
バハニュートの言葉で誘い出されたかのように繁みから体が緑色で体長一メートルほどの人型の生き物が現れた。
額に小さな角が三本生えたゴブリンである。
「ゴブリンじゃな。」
「コツコツ(ゴブリンだ)」
「グギャグギャ!」
冷静なバハニュートとダスケどは対象的にゴブリンは驚きから大声を上げている。
「コツコツ(なんて言っているんだ?)」
「ワシに低能なゴブリンの言葉が分かるわけないじゃろが!」
「コツコツ(え!?でも、俺の言葉は分かるんだよな?)」
「お主は分からずにやっておったのか。ワシがお主の言葉が分かっているんじゃないぞ。お主がワシに念話で話しかけておるだけじゃ。」
「コツコツ(俺ってそんな特技があったんだな)」
「あったみたいじゃな。」
「グギャグギャ!」
驚きから立ち直ったゴブリンは自分を無視されていることに怒りを覚えたのか再び大きな声を上げる。
「言葉は分からんがヤル気満々のようじゃぞ。」
「コツコツ(それじゃ、第一村人ならぬ第一魔物をやっつけますか。)」
ダスケが戦闘態勢にはいるのに合わせるかのようにゴブリンは手に持ったこん棒を振り上げた。
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