スケルトン放浪記~なんとなく落ちてる骨を拾って食べてみた~

kage3

至高のホネと高級霜降り牛3.5倍のホネ

第1話 地下に降り注ぐ一筋の光

ここは暗くジメジメしたどこにでもある洞窟。


ただとんでもなく地下深くにあると言うことを除いてはだが。




暗く人の目には何があるのか全く分からないほど闇に閉ざされた地の底にある洞窟になぜか一体の白骨死体があった。


ここで死んだ誰かが白骨化したのか、天井にいくつも空いている穴から落ちてきたのかは誰にも分からない。


白骨化した後に風化するには十分過ぎる歳月が経ってるにもかかわらず不思議なことにその白骨死体は未だに完全な全身骨格として横たわっている。




白骨死体が風化しないのにはもちろん理由がある。


それはこの死体が白骨化した頃から徐々に空気中の魔素と瘴気の濃度が上がったために空気中の魔素が白骨死体に浸透したためだ。




魔素とはこの世界の根源である神の粒子である。


魔素が集まることで素粒子となり原子となり分子となり物質となる。


つまり魔素により物質は変化する。


洞窟の白骨死体も白骨に残っていた残留思念に反応した魔素によって白骨死体の骨が作り替えられたことによって風化を免れたのだ。


風化を免れた白骨死体は少しづつ魔素と瘴気を吸い続けて現在に至る。




暗闇に覆われ、魔素と瘴気の濃度が徐々に高くなる以外に変化がなかった洞窟にある日変化が訪れた。


光溢れる町中では気が付かないほど弱弱しいが確かにが洞窟内に初めて光が届いたのだ。


それは地上に続く穴に偶々高級品であるガラスの欠片が投げ捨てられ、穴の一部が崩れて鉱石が露出し、地下水が染み出し、蒼き月がもっとも強く輝きを放つ夜に地上へ繋がる穴の真上に顔を出すといういくつもの偶然が重なることで起こった奇跡のような出来事であった。


ただその奇跡は決して闇を切り裂く一筋光などではない。


なぜならその光は朱き太陽の光でなく蒼き月の光ではあるから。




朱き太陽の光が植物を育て生命に活力を与える力のを持っているのに対し、蒼き月の光は魂の疲れを癒し、精神を安定させる力を持っている。


そのため人々は夜に寝ることで魂と精神の疲労を回復させることができるのだ。


ただ物事には良き面と悪い面があることは世の摂理である。


朱き太陽の光は温かい光で活動力を上げるが強くなりすぎると人も魔物も植物も関係なく全てを焼き尽くす業火となって降り注ぐ。


それと同じように蒼き月は優しい光で魂の疲労を癒してくれるが強すぎる光は死者の魂を活性化させアンデットを発生させる原因の一つになっています。




地下深くに到達した弱弱しい蒼き月の光ではとても死者の魂を活性化させるなど言うことはない。


精々ちょっと心が落ち着く程度の効果しかないだろう。




そもそも蒼き月の光が力強く降り注いでも死者の魂が活性化するだけであり、それだけでアンデットが発生するわけではない。


先ほども言ったように青き月の光はあくまでアンデットが発生する原因の一つでしかないのだ。


アンデットが発生するには死者の活性化だけでなく、ただの魂だったのものがアンデットになるための相応なエネルギーが必要である。


そのエネルギーとは魔力である。魔力は運動エネルギー、熱エネルギー、質量エネルギーになる前のエネルギーである。


そして魔力になる前のものが魔素である。


この世界の根源である魔素は物質だけでなく全てエネルギーの元でもあるのだ。




ここ地下深くの洞窟には自然と白骨死体に浸透するほどの魔素に満ち溢れている。そこに弱弱しいが蒼き月の光がやってきた。


あと一つのものがあればこの白骨死体はアンデットとして動き出すだろう。


そしてその一つがあることを示すかのように誰もいない静寂の世界に誰も聞かせるでもなく骨が動く音が小さく鳴り響いた。

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