16.協力者

拓人はぼーっとしながら1限目の授業を受けていた。


「……ここの部分は大事だから覚えといてくださいね。」

ふむふむ。ここは大事なのか。

「ここも大事だから覚えといてくださいね。」

うんうん。ここも大事なんだな。

「ここもここも大事だから覚えてくださいね。」

ん?なんか覚えるとこ多くない?この授業国語なんだけど。

「ここからここまで全部大事だから覚えといてくださいね。あとこっちからそこまでも大事ですよ。」

いやいや多すぎるというか先生怖い怖い。なんか少し笑ってるし。

しかもなんでみんな違和感ない感じで受けてるの?俺感覚おかしくなってるのか。

「ここも大事だからね。はい、授業は終わりです。」

いやおかしいだろー。ちょっと後で蒼太に聞いてみるか。



「蒼太、今日なんか先生怖くない?大事だからねって何回も言ってたけど。」

ぽけーっとした顔で蒼太は言った。

「ん?いつものことじゃない?あの先生笑ってるけどいつも試験の出るかもしれないところ教えてくれるしいい先生でしょ。」

「え?そうなの?」

「っていうかマジで大丈夫か?拓人が授業ちゃんと聞いてるとか台風で家なくなるぐらいこわいわ!なんか頭おかしくなった?」

「いやいや、そんなわけないでしょ。」

「そうか。まあ授業をちゃんと受けるのはいいことだしな。」

「そっか、あれが普通だったのか。いつもちゃんと聞いてなかったから変に感じたのか。」

「なんか言ったか?」

「なんでもない」


なんか俺今日変だな。何かに緊張してるような。

……柏木さん……いや、そう、思いたくない。

でも、でも。。。



「おい!斎藤寝るな!」

「あ、はいい。」


「やっぱいつもと同じだわ!」

蒼太は笑ってそう言った。



その後3つの授業を受け、時間はお昼。

柏木さんに呼ばれたから俺は体育館の裏側に行かなければならない。

あまり気にしないようにしていても場所のせいで告白なんてことかもと思ってしまう。少し仲良くなれたと思っているから振りたくない。

これも怠慢なのかな。


そう少しソワソワしながら早歩きで向かった。


ちょっと早く着いた俺は体育館で居残りでバレーをやってるクラスを見ていた。

あの人スパイク上手いな。トスも結構綺麗。

あー、俺も少しバレーしたいな。


「待たせちゃった?」

呼ばれた方向に振り向くと顔を少し赤くした柏木さんがいた。


「大丈夫だよ。それで用って何?」

「一つ話をしてもいい?」

そう言って話し始めた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

私ね3年前ぐらいに両親どっちも死んじゃったの。


私自身は悲しかったけどお母さんとお父さんからは色々なものを貰ったし、楽しい思い出も悲しい思い出もあって十分充実してたから寂しさより感謝の方が大きかった。


だから一人でも生きていけると思ってた。

でもそんなに社会は甘くなかった。


学校じゃあ心配しているような言葉をかけてただ興味本位で近づくやつばっか。

友達だと思ってた人からも心のこもってない同情。

バイト先でも陰口ばっか言われる。


そんな生活をしていたら気づいたら何のために生きてるんだろうって思い始めてた。

両親も友達もほとんど居なくなって私ぐらい消えても誰も気づかないんゃないかって。


もう自殺しようかとも考えてた時芽衣と出会った。


芽衣はそんな私に一つの言葉をかけてくれた。

「今死んじゃったら自分のことを悲しんでくれる人を悲しませちゃうよ?」


たったその一言。ただそれだけだったが私はその言葉に救われた。


それからは学校でも話してくれたりして、少しずつだけど生きたいと思えるようにっていったの。


まだ今でも怖くなっちゃう時もあるけどそれでも頑張れるっておもえるようになった。

だから芽衣のためには何かしたいと思ってたの。それで最近斎藤くんの何かを手伝ってるって聞いて呼んだの。


ごめんね勝手に呼んで。それでも一つだけ言いたいの。



「私もそれを手伝わさせてくれない?」

そんな真剣な顔で言われたら断れるわけないじゃないか。


「ーーーーーーーいいよ。」

でも告白じゃなくて本当によかった。


「ありがとう。今日はそれだけ言いたかったの。後のことよろしくね〜。」

そう言った柏木さんの目には涙が溢れていた。

だけど俺はそのことにふれることは出来なかった。だってあんなにも辛そうな顔をしていたら嫌でも分かってしまう。


俺は、、また自分の気持ちから逃げてしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最近学校から帰ってくるとすぐ寝ちゃって思うように更新できませんでした(。-∀-)

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