不純で切実な動機―そうだ、小説、書こう。

 エッセイの初めに、少しだけ私自身の投稿のきっかけについてお話させていただこうと思います。


 創作物において、作品以外は興味ないし、著者の気持ちや裏側なんて知らない方が良い、作品だけで評価すべきだという考え方もありますので、そのあたりがとくに気にならない方だけお読みいただければと思います。


 余談ですが、私自身は子どもの頃からマンガが大好きで、それもコミックス派だったのですが、その理由のひとつに、作家さんの書いた「柱」を読むのが好きだったというのがあります。

 本編には登場しない設定や裏話、好きな作家さんの趣味や近況を聞けるのが私にとっては楽しかったので、今でも投稿者の方の書くエッセイや近況ノート等を読むのは好きです。



 投稿小説をしっかりと読み始めたのは2~3年ほど前からだったと思います。それまでもアニメ化した話題作等は読んでいましたが、日々サイトを開いて新作を読み漁るようになったのはわりと最近になってからです。


 しかし、私は完全なる読み専で、書く側に回りたいという気持ちはまったくありませんでした。だって毎日溢れるほど素敵な作品が生み出されているのに、自分が書く必要なんてないのですから。


 数多ある投稿小説の中から自分好みの作品を見つけ出したときの高揚感や満足感を思えば、わざわざ時間をかけて作品を自炊しようなんて思いもしませんでした。



 そんな私が突然書き始めた理由は何か。


 言ってしまえば、「コロナのせい」です。



 今年は世界中の人が少なからず生活に影響を受けたであろう、新型コロナウイルス。私は会社員ですが、もろにあおりを食らった業種で働いておりました。


 まず、2月から通勤がなくなりました。これは元々在宅ワーク希望だった私としては願ったり叶ったりで、今も在宅勤務が継続しており、その部分では日々幸せを感じています。


 次に、4月からは出勤日数が減りました。これについてはちょっと笑えません。働きたくない人間なので仕事に行かなくて良いのは嬉しいし、休日が増えたのは万々歳ですが、収入が激減したのは大打撃です。現在進行形で。


 今はピーク時よりは仕事量も戻り、出勤日数も増えましたが、それでも以前のような「残業込みで毎日10時間超のデスクワーク」+「準備時間含めて通勤に1.5時間かかる生活」とは一転しました。在宅ワークに切り替わり、賃金抑制のため1分たりとも残業できない仕組みになったので、仕事はきっかり8時間だけになりました。



 そうなると、自然と毎日自由な時間が増えました。以前はランチ休憩も職場周辺にはいなければいけなかったのが、今ではその1時間も家でのんびり過ごせるわけで、体感的には毎日4~5時間の自由時間が生まれました。


 出勤日数抑制によって休日も増えたため、今年4月から5月にかけて、私は大好きな投稿小説を片っ端から読み漁りました。それはそれは幸福な時間でした。


 しかし、さすがにそれだけ毎日読んでいれば、すぐにブクマした作品の最新話に追いついてしまいます。世の中にはコロナで急にヒマになった私のような人間ばかりではないので、好きな作家さんの投稿ペースにはそれほど変化がなかったのです。


 更新通知を待つだけの日々が続き、あるときにふと思いました。



 そうだ、小説、書こう。



 きっかけなんていうのはそんなものですよね。別に書かずに更新を待ち続けたって良いし、もっと他の作品を探したって良かったはずなのに、そのときの私はなぜか「ちょっと試しに書いてみようかな」という気持ちになったのです。


 それまでは毎日仕事だけでも10時間パソコンに向かって文字を打ち続けていたので、とてもじゃないけれど家に帰ってまで椅子に座って何かをしようという気持ちは起こりませんでした。

 満員電車に揺られて帰宅すると、毎日足はパンパンにむくんでいて、そうなると帰宅後にできることは、寝っ転がってスマホで読書をするか動画を観るかの二択でした。寝る前のたった1時間程度でも、それが至福の時間でした。


 しかしながら、コロナの影響で時間にも体力にも余裕があって、目も足も疲れていない。今なら何か生み出せるかもしれない。そんな気持ちで、5月から執筆を開始しました。

 

 実際に書き手側になってみて初めて気づくことや、思いもよらないことなど、様々なことが起こりました。各作品については、また別の機会にゆっくりお話しようと思います。


 初めて書いた作品が一応の完成を見せたとき、最初に投稿したのは『小説家になろう』でした。これはただ単純に、それまで読み専としていちばん使っていたサイトがそこだったからです。


 ただ、読み専から書き手に回ると、「せっかく書いたのだからもっとたくさんの方に読んでほしい」「他のサイトだったらどんな反応が返ってくるんだろう」といった疑問や興味が湧いてきます。


 ついでにぶっちゃけてしまえば、読み専のときはまったく知らなかった『カクヨム』のリワードや『アルファポリス』の投稿インセンティブという仕組みが気になり始めます。


 それまでは、「なんでみんなわざわざ複数のサイトに投稿してるんだろう?」としか思っていなかったのですが、書き手側の視点に立ってようやく理解できた気がします。


 私としては、いきなり自分の作品が書籍化して印税で何十万円も貰えるなんて夢は見ていませんし、現状では望んでもおりません。一部の天才を除いて、本気で書いて食べていこうと願っている方々の努力がとんでもないことは、想像に難くないからです。


 あくまで私にとっては小説の執筆・投稿は趣味の範疇だし、自分の好きなものを好きと言ってくださる方がいたらそれで幸せだと思っています。


 けれども、もしも趣味でほんの少しでもお小遣いが貰えたら嬉しいなと考えてしまいました。

 月に何万円も欲しいなんて思わないし、ド素人の投稿作品でいただける広告収入なんて、執筆にかかった時間から考えれば時給にしたら雀の涙どころじゃない額になってしまうでしょう。


 ただ、もしも1か月に500円程度でも収入になったら嬉しいなと夢を見てしまいました。ワンコインランチ1回分。たとえそれだけでも、自分の趣味から報酬が得られたらすごく嬉しいし、やってみないと分からないけれど、もしかしたらそれくらいなら頑張ってみたらいただけるかもしれない。


 コロナで収入激減中の私にとって、ほんのわずかでも趣味とお小遣いが結びついたら嬉しいなという気持ちと、単純に若葉マークの投稿者の作品で広告収入がどれくらい得られるものなのかという疑問。


 一度湧き上がってしまったら実践しないと気になって仕方がないので、そこから『カクヨム』と『アルファポリス』への投稿を開始した次第です。



 我ながら動機が不純だなとは思っておりますが、あくまでも広告収入目当てで作戦を練って投稿しているというわけではなく、好きで投稿しているものが結果的にどうなるのかという検証をしているだけなので、いろいろと広い心で見ていただけると嬉しいです。

 というか、本当にお金を稼ぎたいなら副業でも始めた方がよほど効率よく収入を得られますしね。


 複数サイトでの投稿はまだ始めたばかりで結果も出ていないので、果たしてワンコインが稼げるのかどうかという検証については、いつかご報告できればと思います。


 そもそも『カクヨム』のリワード基準である3,000という数値に12か月で到達できるかどうかは大いに疑問なので、こちらは時間をかけて確認していきたいと考えております。


 以上が、今ここで私が文章を書くに至った経緯です。


 次回からは、これまで投稿した作品についてどんなてんやわんやがあったか、また、どんな結果になったかを少しずつまとめていく予定です。

  

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る