第8話 往き国

 国境の長いトンネルを抜けると国境であった。

 その国境を抜けようとトンネルを抜けるとまだ国境であった。

 またまたトンネルを抜けても国境であった。

 どこまでもどこまでも国境という名の壁があった。

「駅長さあん、駅長さあん。」

 明りをさげてゆっくり座席を挟みながら来た男は、おずおずと尋ねた。

「駅長さん、私です、御機嫌よろしゅうございます。」

「私は他者を信用しておりませぬ」


 顔見知りでも国境のような壁がある。

 国境の長いトンネルを抜けると国境であった。


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