神の侵攻から人類を守るだけの簡単なお仕事。~GOD×GUARDIAN~

海 豹吉(旧へぼあざらし)

不可逆浸食のクロックワークス

第1話 原典の記録と記録者による第三者的考察。

 かつて神と人が手を結んでいた時代があった。

 神は精霊と魔物を人の世に使役した。

 人は精霊から寵愛されることで魔法を行使できていた。

 人々は魔物から嫌悪され戦いを強いられていた。

 きっと、そのままで良かったのだと思う。

 そうだ、昔のままでも良かったのだ。


 当時、見上げればいつも空は青く、雲はちぎれてまばらになっていた。

 高原からやってきた風は軽く、草原をくぐると色とりどりの香りを運んでくれた。

 草むらに腰を下ろせば、心地の良い温もりがあった。よく、陽がにじんでいた。

 何もない穏やかな毎日がそこにはあった。

 ただ、そんな日常は、刹那に、瞬間風速的に、切り取られたようにして、


 ――この世界は何もかもを失った。


 その日は『大厄災(グランドマキア)』と名付けられた。

 何億、何万もの人々が亡くなった。

 何万平方メートルの土地が瘴気に飲まれて消えた。

 当たり前だった平和は幻想と化した。

 そして何より、人類に手を下したのは手を結んでいた神々によるものだった。

 結果として人々は住む世界を大幅に狭められた。

 唯一、保つことができた国土の周りには漆黒の瘴気が漂った。

 だから、もういいだろう。

「契約変更だ」

 追い詰められた人々は瘴気に対する魔術防壁を張った。

 円形にして国土を再編成し、七つの国を設けた。

 そして強者を置いて防衛させることにした。

 周囲の漆黒に対し、国の名には色が与えられた。

 そして神々に立ち向かう者には栄えある名が与えられた。

 その名は、『守護者(ガーディアン)』。

 彼らは使命を与えられた。

 神々たちと戦い続ける。

 この世界を守り続ける。

 己が宿した武器と共に、その身が朽ち果てるまで。


                         ――名もなき記録者より

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