第37話 テンション

「おお!こいつは驚きだ!」


光るバッタを倒したら、変な所に飛ばされて大量の魔物に囲まれてしまった。

種類は2種類。

でっかい蠍とおっきな蛙型の魔物だ。


それが数十匹。

大きな空間にわらわらと蠢いている。


「んじゃ行くよ!」


此方に気づいて囲んできた魔物相手に、開始の言葉をかける。

まあ別に宣言する必要など無かいのだが、何となく。


「おりゃあ!」


回し蹴りで蠍を蹴り飛ばす。

その際蹴りで粉々にならない様に力加減して、蛙の魔物を巻き込んで吹き飛ぶ様にしておく。

実は私、蛙があまり好きじゃなかった。

触れない分じゃないが、触らずに済むのならそれに越した事はない。


「おりゃおりゃおりゃおりゃあ!」


蠍を蹴って、蛙にぶつける。

ボーリングのピンの様に弾け飛ぶ蛙達。

うん、これ結構楽しい。


「はい、終了!」


最後の魔物が消滅。

見渡して確認するが、もう一匹も残っていない。


「しっかしな変な所よねぇ」


魔物達はエネルギーとなってこのダンジョンに吸収されてしまう様で、死体一つ残らない。

まあ死体がゆっくり腐敗して無くなるとか臭そうだから、こっちの方がいいっちゃいいけど、不思議な場所だ。


「ドロップは……ま、いっか」


魔物達が大量にアイテムを落とすが、特に興味が無いので全て放って行く。

必要ない物を拾っても手荷物になるだけだ。


魔物を狩りつつ暫くダンジョンを駆けると、変な場所に出る。

それはそこまでの自然物とは違う、明らかに人工的な手が入れられた場所だった。


誰がこんな物をこんな場所に建てたのだろうか?


「ドワーフでも住んでるのかな?」


ファンタジーとかだと、ドワーフは地底に住んでいたりする事も多い。

まあこの世界に存在するのかは知らないが、妖精という種族がいるのだから、ドワーフが居てもおかしくは無いだろう。


ま、考えても仕方がないので、私は入り口っぽい所から中へと入った。


「さっきの大量にいた所と同じモンスターか……あと、あれはスライムか何かかな?」


少し進むと、先程大量に始末した魔物と同種の蠍と蛙が私を見つけて寄って来る。

それと奥の方に少しうねうねと動く粘体性の魔物が見えた。

恐らくスライムか、ゼリーとかそう言った名のモンスターなのだろう。

まあ全然違う名前の可能性もあるけど。


「とりゃ!」


しかし場所が変わったとは言え、やる事は変わらない。

蠍を蹴り飛ばし蛙にぶつけ。

スライムは雰囲気的に打撃があんまり効かなさそうなので、拳にエネルギーを纏わせて粉砕する。


「お」


鼻歌交じりに魔物を討伐しながら進んで行くと、ズシンズシンと大きな足音が近づいてきた。

曲がり角に大きな毛むくじゃらの手がかかり、高い位置からぬっと牛の顔が出て来る。


「ミノタウロス!」


魔物とバッチリと目が合った。

次の瞬間、ミノタウロスは雄叫びを上げて突っ込んで来る。

私も負けじと雄叫びを上げて突っ込み返した。


いざ勝負!


「ぐおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」


「おおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」


ミノタウロスが口の端から涎を飛ばし、両手に持つ斧を駆けながら振り上げる。

私はそれを拳で迎え撃った。


衝突――巨大な斧と、私の拳がぶつかり合う。


ビシリ。

金属的な破壊音が響き。

ミノタウロスの手にし戦斧の刃が粉々に砕け散る。


「ぐぉぉ!!?」


「はぁぁ!!」


私は斧を砕いた勢いのままに、拳をボディへと叩き込む。

衝撃で肉が弾け、ミノタウロスの上半身が跡形もなく粉々に砕け散った。


「勝利!」


私は右手を掲げて勝利のポーズをとる。

ミノタウロスは、明かに今までの魔物と一線を画す強さだった。

此処から先、どんどん魔物が強くなっていくのかと思うと心が躍ってしまう。


「よーっし!」


高揚した気分を押さえきれずに、私は奥へと駆ける。


さあ次はどんな魔物だ!

バンバンかかってこい!

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