三座の女神の秘密

 わぉ、久しぶりのナレーター役。いつ以来か思い出すのも大変なぐらい。先代は結崎忍、今は夢前遥のシノブだよ。ミサキちゃんが女神の秘書役って設定になっちゃって、シノブはいつもお留守番。


 それだけ信頼されてる部分もあるのだけど、とにかく出番が少なくて。今回の宿主代わりだって、なんかミサキちゃんのオマケみたいでモヤモヤしてたぐらい。それはさておき、話題はディスカルと結ばれたミサキちゃんこと三座の女神の話題に。ユッキー社長は、


「ミサキちゃんはわたしとコトリの最高傑作と思ってる」

「じゃあ、シノブはどうなんですか」

「シノブちゃんは時代の要請で妥協しちゃったから」


 これも良く聞くと失敗って意味じゃなく、武神的な要素を盛り込まざるを得なかったぐらい。


「シノブちゃんは教育担当が基本設計なのだけど、あの頃のエレギオンの必要性から第三の司令官が必要だったのよ」

「第三とは?」

「わたしとコトリが二人でトップだったけど、二人ともエレギオンを留守にしなきゃならない相手が出た時に三人目が必要でしょ」


 だから留守番が多いのか。


「それにわたしだって、コトリだって不死身じゃないから、二人とも倒れるって可能性もあるわけじゃない。その時に三人目が必要なんだけど、ミサキちゃんじゃ平和すぎて、無理があるのよね」

「そうなんよ。シノブちゃんは最後の切り札というか、もし首座と次座の両女神がいなくなった時にエレギオンを指導する役割と目的もあったんや」


 なるほど。ホントはミサキちゃんのような無防備平和都市宣言みたいな女神にしたかったんだけど、渋々最後のリザーブ的な要素を盛り込んだのが四座の女神のシノブってことね。


「でもね、ミサキちゃんにも失敗しているところは幾つかあってね」

「そうなんよ、どこをどう間違えたか頑固なんよ」

「たぶんだけど真っ直ぐな信念を強くしようとして、やり過ぎたぐらいと思ってるけど」

「あれはユッキーが、あそこを・・・」

「よく言うよ、コトリが・・・」


 ミサキちゃんの基本キャラは真面目な常識家。そうしたのは首座と次座の二人がぶっ飛びキャラだからの自覚からで良さそう。二人の関係だけで言うと、


 首座の女神・・・秀才型の優等生

 次座の女神・・・天才型の遊び人


 これぐらいでまとめられるけど、ユッキー社長も相当どころでない破格キャラ。だからブレーキ的な役割を期待したぐらいかな。だから女神懲罰官は適任だし、二人の暴走を適当に制御するのに必要ぐらい。エレギオンHDでも縁の下の力持ちぐらいの役割だものね。


「ミサキちゃんが激しいってホントですか」

「疑うなら三十階に今から行ってごらん。エレベーターを出ただけでわかるよ」

「さすがにビル中には轟かへんけど」


 そこまで・・・シノブだってそれなりのつもりだけど、ちょっと大げさな気が。そしたら二人は悪戯っぽく笑って、


「あれを一緒にするのは無理があるって言ったやんか」

「でもさ、最高の癒しになるじゃない」


 三座の女神が癒しの女神と呼ばれるのは、その特性として傷ついた心を癒すパワーを送りこめるのよね。ここで癒しのパワーは、通常なら静かに手を握り送り込むんだけど、


「まさかですが、アレの時にも」

「そうよ。あれ以上相手にパワーを送るのに相応しい体勢はないじゃないの」

「そうやねん、感じれば感じるほど癒しのパワーは強くなって、エクスタシーの時にドット送り込まれる感じかな。この送り込む時に感度はさらに上がって、さらに大きな癒しのパワーが出来て・・・」


 ちょっと待って、そんなサイクルになれば、


「癒しのパワーを送りこむだけで感度があがり、感度が上がるとさらに大きな癒しのパワーを送りこみ、それで感じたらさらにって・・・無限ループになるんじゃ」

「そうなる」


 『そうなる』って、サラっと言いますけど、癒しのパワーの元は女神のエネルギーですから、それだけ大きな癒しのパワーを送ったらミサキちゃんはたちまちガス欠に、


「そこんとこ心配しとってんけど、癒しの女神がアレやる時にはオルタネーターの効率が物凄い上がってフル回転するから問題ないみたいやねん。やればやるほどパワーがみなぎる感じかな」


 うわぁ、なんちゅう行き当たりバッタリな。まあ、そうなりゃ、灰になるまで燃え尽きるしかなくなるじゃない。なにか想像もつかない世界だけど。


「そんな機能が必要だったのですか」

「う~ん、ちょっとしたオプションのつもりだったのよ。物堅い常識家だけじゃ、男が寄り付かないと困ると思って」


 なにか無理やりなオプションよね。というか自分の男にしか使えないじゃない。


「そういうけど癒しの女神が燃えまくる時に送られるパワーは凄いのよ。だからミサキちゃんの相手の男は、深い満足感と穏やかな心の状態になるのよ」


 そりゃ、そんだけの癒しのパワーがテンコモリ送り込まれれば、深い満足感と穏やかな心になるのはわかるけど、


「どこまでパワーは増大するのですか?」

「そりゃ、感じれば感じるほど」

「たとえば失神するぐらい?」


 そしたら二人は顔を見合わせて、


「シノブちゃん、癒しのパワーって良いパワーと思わない」

「そうと思いますけど」

「送られた方もイイ気持ちになるのよ」


 手からでもあれは良かった。


「大きければ大きいほどイイじゃない」


 それはそうだけど、


「ユッキーがドンドン大きくしようって言うから」

「コトリだって賛成したじゃない」

「まあ、そうやけど・・・もう一つのオプションはやり過ぎやったと反省してる」


 えっ、えっ、えっ、もう一つのオプションって、


「シノブちゃんもわかると思うけど、最高に感じると意識さえ飛ぶぐらいになっちゃうじゃない」

「ええ、まあ、そうですが」

「でもさぁ、飛んだらそれ以上、感じられないじゃない」


 エライ話だけど、意識が飛ぶぐらいって極限でしょ。


「あの頃のコトリは千年のブランクを経て、ようやく再開ぐらいだったし・・・」

「ユッキーだって、やっと飛び始めた頃やったし・・・」

「どこまでだろうって興味があったんよね」

「絶対にイイと思ったのよ」


 なにをやらかしたの。


「それに癒しのパワーの増大もそこがリミットになってまうやんか・・・」

「あの加減って、あんなに難しいって思わなかったのよ。もう懲りたけど」


 懲りたって四千年前に何をした。えっ、えっ、えっ、


「ま、まさか、飛ぶリミッターを・・・」


 コトリ副社長が高みって表現をよく使うけど、あれって風船を割れない様に、割れないように膨らませてる感じに近いかもしれない。当たり前だけど、より大きな風船が割れるほど強烈。ただしある一定以上はどの段階で割れても意識ごと持ってかれる。あれが人の耐えられる限界でイイと思う。


 失神するのは同じでも、その瞬間の強烈さを競うのがいかに女神でも感じられるリミットになるのよね。これがいわゆる飛ぶ高さのレベル。もちろん失神してからまた風船を膨らますのもありだけど、やはり限界がある。


 あれ以上膨らませて、もっと強烈な刺激を得る方法なんて考えもしないというか、あれ以上は体が耐えられないと思う。シノブが一番強烈に感じた時なんか、これで絶対死ぬと思ったもの。


「イイ喩えだと思うわ。それはわたしも似た感じだもの。あれを越えるためには、意識を飛ばさずに味わったらどうかって思ったのよ。そうやって耐え切ったら、そこを越えて次に行けるはずだって」

「そやから、ほんの少しだけリミッターを上げただけのつもりやってんけど・・・」


 なんだって! あの強烈なのを全部味わせて耐えさせるって・・・こいつら鬼畜か。そういえば嫌な話を思い出した。だいぶ前にミサキちゃんに、


『やっぱりミサキはシノブ専務には遠く及びません。意識が飛ぶなんてないですもの』


 あの時は意識が飛ぶほどにはミサキちゃんがまだ感じたことがないと思ったから一生懸命慰めたけど、よくよく考えると四千年の蓄積があるミサキちゃんが、そんなはずないじゃない。そうなると、


「どうなってるのですか」

「まだ飛んだことないのなら青天井になっちゃってる気がする」


 ぎょぇぇぇ、青天井ってどんなレベル。それも五千年の経験者が言う青天井だよ。


「目的はとりあえず達成してるのよ。ミサキちゃんがイクときの癒しのパワーは首座や次座の女神でさえ遠く及ばないものになってるはず」


 軽く言うけど、その代りどれだけ感じてるかを考えただけでも背筋がゾッとする。


「だってあの上でしょ。あの上になると人では決して届くことのないまさに神の領域。ミサキちゃんは四千年前にそこに達し、粛々と昇り続けていることになるわ。今ごろはわたしたちでは想像すら出来ないところにいることになる」


 重々しく言うけど、そうしたのはアンタらでしょうが。


「それでも元気にやってるから、なんとかなってると思てるよ」

「そう、結果オーライ」


 結果オーライで片付けたら可哀想よ。たぶんだけど、シノブがダイナマイトとしたら、えっと、えっと、えっと、核兵器級の大爆発になってるとしか思えない。それもだよ、失神しないんだよ。全部受け止めて感じてるんだよ。


「それでよく色情狂になりませんね」

「そうね。基本設計が良かったと思ってる。とにかく真面目で、お堅い常識家だから、アレの時にちょっと感じ過ぎるのはオプションの隠し味になってくれた」

「もっとも鷹の爪一つのつもりだったのが、ハバネロ漬けになったのが予定外やったけど」


 よく言うわ。死んでもおかしくないぐらいの隠し味じゃない。改めてミサキちゃんを尊敬し直した。クールでお淑やかで、猥談になるとすぐに真っ赤になるお堅いミサキちゃんに、そんな秘密があったなんて。なんちゅう強靱な精神力。そうそう、


「どうしてあれだけ挑発したのですか」


 そしたらまたも顔を見合わせて。


「からかったら楽しいじゃない」


 まあ、そうなんだけど。


「ミサキちゃんはね、あれだけ感じる事が出来るし、燃えるのも大好きなんだけど物堅いのよね。お手軽には絶対しないのよ」


 それはシノブも同じ。お手軽過ぎるのはこの二人。


「普段なら別にイイんだけど、ディスカルには癒しの女神の救いの手が早急に必要だったの。下手すりゃ自決しそうな感じもしたからね」


 たしかに、


「だからミサキちゃんを焚きつけたのよ。ウカウカしてたら盗られちゃうって危機感を持ってもらったの」

「そうやねん。だからあれも女神の仕事の一つ。今ごろディスカルはメガトン級の癒しのパワーを何十発も叩き込まれてるよ。それが出来るのはミサキちゃんだけだし」


 癒しのパワーは手を介して穏やかに流れ込むだけで気持ちが良くなるけど、イク時のメガトン級の物が一挙に流れ込んだら・・・叩きこまれるディスカルはウルトラ極楽浄土だろうけど、叩き込んでるミサキちゃんは狂乱なんて生易しいものじゃ済まないよ。


 叩きこむたびにメガトン級だよ。シノブが知ってる最大級の何百倍、何千倍みたいなのが炸裂するんだよ。いやもっとかもしれない。死んだっておかしくないし、そんなものを失神ぜずに受け止めきったら発狂しないのが不思議なぐらい。


 その状態が燃え尽きるまで延々と何十発も続くんだよ。それに、これって、やればやるほど果てしなく感度が上がるんだよ。ミサキちゃんの耐久力って、女神レベルでも桁がいくつ違うことか。



 このもう一つのオプションだけど余程懲りたみたいで、シノブにも付けられなかっただけじゃなく、張本人の二人もリミッターはいじくってないのよね。


「ユッキー、遊び心もホドホドにせんとアカンてわかったもんな」

「イイ勉強になったもの。ミサキちゃんがタフで助かったわ」


 タフで済ますな! 生きてる方が不思議なぐらいだぞ。


「シノブちゃんも経験したい?」

「死にたくありません」


 一度ぐらいならメガトン級に興味はあるけど、やったらたぶん死ぬ。


「そうよね。わたしだって死にたくないし」

「リミッターは戻せないのですか」

「あれの調製は無理ね。やってみてよくわかったし。でもミサキちゃんもいつかは失神すると思ってる」


 そうなったらギガトン級とか。今度こそ死ぬ、絶対死ぬ。やっぱりエレギオンには三座の女神のブレーキが必要不可欠。ほっときゃ、なにやらかすかわかったもんじゃない。

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