学園のアイドルに抱いてくれないと眠れない身体にされたから責任取って結婚してと言われた
しゆの
学園のアイドルと寝た
「眠い……」
昼休みに教室で
ここ数日まともに眠れず、今はほとんど何も考えられなくなっているくらいだ。
寝たいけど眠ることが出来ず、このままではまともに授業を受けることが出来ないだろう。
机に突っ伏しても睡魔があるだけで眠れそうにない。
こんな状態だというに海斗のことを心配しているクラスメイトはいなく、ご飯を食べたり友達と話したりしている。
原田海斗はボッチなのだ。
友達なんて一人もいないし、両親は海斗が高校入学と同時に海外に行ったから家でも一人。
つい最近までは家族のように可愛がっていた犬を飼っていたが、残念なことに寿命で亡くなってしまった。
歳だったらからしょうがないことだ。
幼い頃から寝る時も一緒で、亡くなったショックと寝るときの温かいモフモフとした感触がなくてまともに眠れなくなってしまった。
眠気が凄すぎて食欲なんて起きるわけもなく、このまま机に突っ伏して昼休みを過ごすしかない。
「原田くん、大丈夫?」
一人の少女が心配そうにして声をかけてくる。
「ん……
彼女──
ボッチで友達がいないのに何で声だけでわかったかというと、愛奈は学校一の美少女だからだ。
腰まで伸びているサラサラとした桃色のストレートヘアーは艶があって綺麗だし、長いまつ毛に藍色の大きな瞳、シミ一つない透き通るような綺麗な肌は誰もが見惚れてしまう。
愛奈の髪は染めて出る色ではないため、天然だということがわかる。
ヨーロッパの一部の地域で見られる髪色で、外国の血が混ざっているから美しい髪と瞳の色をしているのだろう。
美しい容姿をしているのとボッチである海斗にも話しかける優しい性格のため、愛奈は物凄くモテて学園のアイドルと言われている。
毎週のように告白されると聞いているし、フラれても諦めない人もいるとのこと。
そんな愛奈であるが、今のところ誰とも付き合う気がないようで、全ての告白を断っているようだ。
海斗にとっては愛奈が誰と付き合おうと関係ない。
二年連続で同じクラスになったとはいえ、ほとんど話したことがないのだから。
それどころか二年になって一ヶ月ほどたつが、話しかけられたのは今日が初めてかもしれない。
一年の時は少し話しかけてきたが、結構素っ気ない対応をしたからか次第に愛奈は話しかけてこなくなった。
「とても大丈夫だと思えないし保健室に行こう?」
「ん……」
愛奈は今にも倒れてしまいそうな海斗の手を取って立たせた。
そして腕を自身の肩にかけ、愛奈は海斗を支えるような格好になる。
華奢な体躯である愛奈が一人で男性を支えるなんて不可能なので、海斗は眠い身体に鞭を打って力を入れる。
女性特有の甘い匂いや柔らかな感触が少しだけ海斗の脳を刺激するが、眠すぎて今はどうでもいいことだ。
早く寝たいという気持ちしかなく、愛奈に支えられながら保健室に向かう。
この時海斗には物凄く嫉妬の籠った視線を向けられたが、愛奈の人徳のおかげか何か言われるということはなかった。
☆ ☆ ☆
「先生いないね」
保健室に着いた海斗と愛奈であるが、保険の先生は不在だ。
先生といってもずっと保健室にいるわけではないので、仕方ないことだろう。
愛奈は保健室にあるベッドに海斗を寝かせてから何かを探すように辺りを見回す。
「あったあった」
探していのは体温計で、海斗の熱を測るために探したのだろう。
体温計を手に取って熱を測ろうと海斗に近寄ってからワイシャツのボタンを外す。
心配して肩を貸すくらいなのに男子の身体には慣れていないらしく、海斗の胸板を見て愛奈は頬を赤くする。
まるで自分の方が熱があるんじゃないかと思わせるくらいに真っ赤になってしまうが、愛奈は熱を測り出す。
「微熱だね……」
体温計には三十七度二分と表示されており、睡眠不足からくる自律神経の乱れで微熱になったのだろう。
きちんと睡眠を取れば熱も下がる。
ただ、そんなことは愛奈に知るよしもないだろう。
熱が高くなくても微動だにしない海斗を心配そうに見ている。
「ジョン」
「え? きゃ……」
あまりにも眠気が限界だったため、近くにいた愛奈を抱き締めてベッドに引きずりこんでしまった。
ジョンというのは飼っていた大型犬の名前で、海斗はモフモフを求めて愛菜の身体を触りまくる。
完全に愛奈のことをジョンと間違えてしまっており、寝るために話そうとしない。
眠すぎて死んだことすら忘れてしまっている。
「ジョンって何?」
そこまで話したことがない愛奈にジョンのことがわかるわけもなく、愛奈は海斗に抱き締められるだけだ。
ジョンと寝ている時は強く抱き締めることはなかったが、数日ぶりに一緒に寝れると勘違いしている海斗は思いきり愛奈のことを抱き締めてしまう。
「服着てたらモフモフが感じられないじゃないか」
「え? 原田くん、それだけはダメだよ」
目をつぶっているにも関わらず、海斗は愛奈が着ているブレザーとブラウスのボタンを的確に外そうとする。
流石に服を脱がされることだけは阻止することは出来たが、未だに愛奈は海斗に抱き締められたままだ。
強い力で抱き締められている愛奈は抜け出すことが出来ない。
耳まで真っ赤にしており、愛奈は恥ずかしい気持ちでいっぱいだろう。
「ジョン、おやすみ」
「え? 寝ちゃうの? 原田くん、起きてよ。てかジョンって?」
愛奈の叫びは届くことなく、海斗はそのまま夢の中に入っていくのであった。
抱き締められている間はずっと愛奈の顔が赤かったのは言うまでもない。
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