8 どたばたチーム結成!

 あんなさわぎがあったから、当たり前といえば当たり前なんだけど、入学式は延期、すぐに全員下校してくださいとのお知らせが先生からあった。

 また、明日は休みになるらしい。土曜日と日曜日をあわせたら、三連休だ。

「残念だな……入学そうそうにこんなことになるなんて」

 学校の近くにある、砂場とベンチ、ブランコだけの公園でつぶやく。

 周りには、今日一緒にアサンブラージュと戦った子たち。

「どうした直陽、せっかく休みになったんだから喜べばいいじゃないか」

「月湖、みんながみんな予想外の休みを喜べるメンタルを持ってはないんだよ?」

 そう言うのは、ナイルライノこと緑笛結りょくてきゆい

 朝、ボクが話しかけた先輩の人だ。あれからすぐに打ちとけた。

 結ちゃんは、髪を耳にかけながら言葉を続ける。

「にしても、身近にこんなにバランサーの子がいるなんてびっくりしたなあ。花袋とはよく協力して戦ってるけど」

「あ、そうなんですか」

「もう、敬語はいいって。……花袋はこのあたりでも強い子だからね。いろんな子と戦ってるよ」

「ま、全員と一緒に戦ったことはさすがにないし、変身前の姿を知ってる子はさらに少ないけど」

 普通のしゃべり方で花袋が言う。花袋はやっぱり、戦いなれしてる人らしい。……うーん。

「花袋、強いのになんで誰ともチームを作ってないの?」

 前から気になってたことだ。

 もしかしたら、ボクが知らないところでチームを作ってるのかなと思ったけど、そんな感じもないし。多分、ひとりで戦ってるんだろう。

 どう考えても、みんなと戦うのと比べたら危ない。

「……人づきあいがそこまで得意じゃないんだよ。私、いつもへらへらしてるけど、わりと空気読めないところあるし」

「そうなんだ……」

 謙遜に聞こえるけどなあ。けっこう気がきく人だと思うし。

「ボクは、もしチーム組むなら花袋がいいけどなー」

「そうだね、あたしも花袋となら戦いやすいし」

 ボクの言葉に結ちゃんがうなずく。

「へえ、人気じゃん花袋」

「からかわないでよパトリス〜。はずかしいな……」

 花袋が照れくさそうに言う。

 自分でも言ってたとおり、花袋はいつも笑ってるから少し新鮮だ。

「というか、もうこの五人でチーム組めばいいじゃないか」

「え?」

 月湖ちゃんの急な言葉に驚く。

「だって、同じ学校の人間だから、すぐに集まることができるし、打ちあわせとかもしやすい。それに、直陽はまだバランサーになったばっかだから、それなりの人数での助けがあったほうがいいだろ?」

「…たしかに」

 月湖ちゃん、強引だなと思ってたけど、意外としっかり考えてるんだな……。月湖ちゃんの言うとおり、みんなひとりよりまとまったほうがいいだろう。

「なるほど。たしかにそうだね。わたしはさんせー」

 手をあげながらパトリスちゃんが言う。

 一匹オオカミみたいな子だと思ってたけど、意外にも一番に賛成した。

 なんだ、パトリスちゃんもちゃんとしてるじゃん!

「しっかりした子が周りにいたほうが、安心してのんびりできるし」

 ……いや、あいかわらずのマイペースだった。

「あたしもいいと思う! みんなと協力して敵を倒すの、かっこいいじゃん!」

 そう言うのは結ちゃん。うう、ボクと違って、まぶしい笑顔だ…。

 チームのまとめ役、というかリーダーは、この子だな。

「……えーっと」

 なかなかイエスと言わないのは、花袋。

 さっき言ったとおり、人づきあいが苦手だから悩んでるんだろう。

「あ、無理にとは言わないよ? 花袋にも事情、あるだろうし」

 さっと結がフォローに入る。花袋は少し考えてから、口を開いた。

「じゃあ、最初はおためしとして入っていいかな。ちょっとしてから、正式に入るかどうかを決めるってことで」

 そう言って花袋は笑った。なるほど、それならいいね。

「じゃ、直陽。キサマはどうするんだ」

 じっとこっちを見て月湖ちゃんが言う。それは、もちろん。

「ぼ、ボクも入りゅっ!」

 ……大事なところで、思いきり噛んだ。

「いいんだ……どうせボクなんてこんなつまらないやつなんだ……」

「だいじょうぶ、直陽。今の……っ、めっちゃおもしろ……あはは!」

 ひいひいと花袋がお腹をかかえて笑う。

 ポケットからも、レイニーの震え声が聞こえた。

 もう、そんなに笑わないでよ! はずかしいじゃんか!

「ようし、それじゃ、オレふくめこの五人でチーム結成だ! 名前はどうする、名前は!」

「名前……なんとか戦隊とか?」

「べたすぎる! ボツ!」

 月湖ちゃん、いろいろが早すぎるよ!

「まずはおたがいのことを知ることからじゃない?」

「……たしかにそうか」

 ボクの意見を聞いて、月湖ちゃんは腕を組んで考える。よかった、落ちついてくれた。

「仲よくなるためには、やっぱり遊ぶのが一番だな」

「まあ……『同じ釜の飯を食べた仲』、って言葉もあるぐらいだしね」

「結はもの知りだな。そう、『同じガマの目をわけた仲』だ」

「いや違うよ!? どうしてカエルの目をわけっこするのっ!? 気持ち悪いよ!」

 結ちゃんが驚きながらつっこむ。月湖ちゃんはきょんとしたあと、「とにかく」と話を続ける。

「今、オレもみんなも、おたがいを知らなさすぎる。だから、一緒に遊ぶぞ。その中でいろいろを知っていこう」

「遊ぶって言っても、なにするの?」

「そうだな、とりあえず出かけるぞ」

 ふふん、と鼻を鳴らして月湖ちゃんが言う。いいことを思いついた、とでも言うような顔をしながら。

「明日、駅前のデパートに集合だ! めいっぱい遊ぶぞ!」

 その目は、いっぱいに輝いてた。

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