幻
玉井冨治
第1話
あれは幻だろうか。
太陽の逆光で見えなかったけど、彼女は絶対僕の運命の人。
僕は見た瞬間から、そう思ったんだ。
確かに科学的な根拠はどこにもない。
でも、確かに僕はそう感じたんだ。
体のどこかの直感で。
「榊原さん。見えた?」
「ううん、見えない。浩介君は?」
「ああ、僕は見えたよ。調整してあげるよ。」
いま、僕達天体サークルは天体観測をしている。
女の子のメンバーは少ないけど、可愛い子が沢山いる。
榊原さんはその中でもかなり可愛い。
それに、頭もいい。
僕はそんな彼女に運命を感じている。
あの時夢で見た女性は彼女のような気がするのだ。
このサークルに入ったのも、彼女が入るといったからだ。
あの時の女性の顔は見えなかったけど、姿かたちは彼女そっくり。
「見えたー。ありがとう。」
星を見ているとみんな静かだ。
なんだか二人だけの空間みたい。
「ねぇ、僕ね榊原さんの事入学前から知っていたんだ。」
僕は夢の話をした。
話を聞いた榊原さんは驚いた顔をした。
「私もその夢見たわ。あなたを見た瞬間、あの夢の人だと分かったの。」
やはりこれは運命だったのだ。
僕達は科学的に証明できない世界に生きている。
だから、非科学的なことも科学なのだと気づけた。
幻 玉井冨治 @mo-rusu
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