分からない

「……最悪」


 昨日、家に帰ったあとすぐにシャワーを浴びて寝たにも関わらず私は朝から気分が全く優れないのだ。昨日の夜のことを考えるだけで吐き気がするのだ。それも当然と言えば当然なのかもしれない。それに今日も学校はあるのだが、学校に行く気にはなれない。


「はぁ……」


 それでも学校には行かなければならない。こういった変なところで真面目なのは私のいい所であり悪いところな気もする。自分に融通を効かせられないのは中々に生きづらいものがあるのだ。


 私は嫌々ながらもシャワーを浴びて制服に着替える。普段ならば朝食も食べてから行くのだが、食欲なんてものはあるはずもないのでコーヒーだけ飲んで家を出る。


「あっ」


「「ん?」」


 学校のすぐ近くまで来ると私が1番会いたくない人達がそこにはいた。思わず声が出てしまったので、前の2人も私に気づいて振り返る。もちろん、私が会いたくないのは蒼空とあの女だ。


「「「…………」」」


 居心地の悪い沈黙が続く。蒼空は昨日の夜のことがあったからか、余所余所しい感じがしている。その事にあの女も気付いたのか不思議そうに私と蒼空を見ていた。


「えっと……おはよ?」


「……おはよ」


「「!?」」


 私は挨拶だけ返して2人を追い抜かして先に学校へと到着する。私が挨拶を返したのが衝撃的だったのか、2人はありえないものを見るような目で私を見てきた。それも当然なのかもしれない。なぜなら、私自身も挨拶を返したことに驚いているのだから。


「……どうして?」


 私は復讐がしたい。そのために生きている。だが、最近はそのことに関しても疑問を抱くようになってしまったのだ。私は復讐がしたい。今までならば、それが私の生きる理由だった。それは今も変わらない……そのはずなのに。


「……私は何がしたいんだろ」


 復讐した先には何があるのだろうか? ……分からない。私は生きているのだろうか? そんな風にまで考えてしまう復讐に意味なんてあるのだろうか? そもそも、本当にあの女が全て悪いのだろうか? 


 分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない。


「……大丈夫か?」


「!? ……なにが?」


「いや……その、泣いてるから」


 泣いている? 誰が? 私が? そう言われて目に人差し指を当てるとそこには確かに涙らしき水滴がついていた。なんで? どうして私は泣いているの?


「宮崎さん大丈夫?」


「……大丈夫よ」


 あの女にまで心配されるなんて……。私はこの居心地の悪い空間が嫌で席を立って教室の外に出ようとするも……


「あっ」


「宮崎さん!?」


 あの女の叫び声とも言えるような大きな声を聞きながらも私の意識が遠のいていく。倒れ込む直前に誰かに支えられたような気もするが、それが誰かも分からぬまま私の意識は暗転いく。



「あぁ……このまままもう……起きなければいいのに……」





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