第4話 そこそこイケメン
「.......誰?」
「ふふ。いい反応してくれるじゃない」
30分以上もかけて施術してもらったあと、鏡を見ての俺の第一声がこれであった。確かに顔は俺なんだよ? でも、それ以外の何もかもが違う。何もかもと言っても髪型と雰囲気が違うだけなんだけど。
基本的にボサついていた俺の髪が今は、普段ならここまで短くしないであろうくらいにカットされたので、普段よりスッキリしているように見える。さらに、ワックスで髪を整えられているおかげでよりスッキリしているように見える。ワックスを使っているといっても髪の毛がカッチカチに固められているわけでなく、フワッとナチュラルな感じに整えてくれているのでチャラそうな感じも全くない。
俺の偏見かもしれないがワックスで髪の毛をいじっている人って大抵の場合においてチャラい感じの人ばかりな気がするのだ。というか、ワックスというアイテム自体がチャラい。
「やっぱり髪型が普段と変わるだけ全然印象変わるね! かっこいいよ蒼空!」
「自分でもびっくりしてる.......」
「ふふ。誰が施術したと思ってるの? こうなるのは当たり前でしょ?」
「さすがです優香さん!」
「けど、本当なら髪の毛も染めてあげたかったんだけどまだ高校生だしね。それは大学生になってからのお楽しみね」
うん。確かにこの変化はすごいし、俺もここに来る前と今では確実に今の方がイケメン寄りであるのは間違いないと思う。ギリギリこのオシャレな美容室にいても場違いでは無いようにも思えるし。これはすごい変化だし、すごいことであることには間違いないのだが.......
「なぁ、今の俺がイケメンかって言われると確かにここに来る前よりかはイケメンに近づいたとは思うけど、別にイケメンって言われるほどでは無くないか?」
「まぁ、まだ今日の目的達成はしてないしねぇ。私からしたら現時点でもそこそこイケメンだと思うけどね」
「確かに今の蒼空くんでもそこそこイケメンだけど、そこそこなのよね」
これは俺はディスられているのだろうか? ここまでしてもお前はそこそこにしかなれないんだよっていうことを遠回しに.......いや、もうハッキリ言われちゃってるな。褒めたあとにこれって.......上げて落とすとはまさにこの事なのか.......。
「さて、蒼空! 今からお昼ご飯を食べてからが本番だよ!」
「.......本番? もう終わりじゃないの?」
「言ったよね? 蒼空をイケメンにするって」
「え? だから、ここに来たんじゃないの?」
「言うなればここは途中経過。ゲームで言うなら中ボスって感じね!」
今日の目的ってイケメンになることだよな? イケメンと言えばやっぱり顔だよな? 顔で唯一いじれるパーツである髪の毛を美容室で整えて貰った時点で途中経過ということは.......やっぱり.......
「整形」
「手術じゃないからね! なんで蒼空はすぐにそっちに持っていくの!」
「いやだって、もうこれ以上いじれるところなんて.......」
「はぁ.......どう思います優香さん?」
「ねぇ、蒼空くん。この美容室を見て今の蒼空くんに足りないものってなんだと思う?」
この美容室を見て俺に足りないもの? 俺は美容室の中を見回して見るとやっぱりオシャレで綺麗な内装だなぁって思うくらいで他には.......
「あっ、いい匂いがするって.......俺ってそんなに臭うの!?」
「どうしてそうなるの!?」
「ふふ、あはははは。蒼空くん最高だね! 久しぶりに心の底から面白いと思えたよ」
どうやら違ってくれたらしい。本当に良かった.......。もし仮にそうだったなら俺は自殺してしまっていたかもしれない。ずっと周りからあいつは臭いだなんて思われていたと思うともう死にたくて仕方ないと思う。
「じゃあ、なんだって言うんだ?」
「優香さんはこの美容室を見てって言ってたよね? 蒼空はこの美容室を見てどう思う?」
「オシャレで綺麗なところだと思うぞ?」
「あら、分かってるじゃない」
「ありがとうございます」
「いや、私が分かってるって言ったのはそう言った事じゃなくてね.......まぁ、お店が綺麗って言ってくれてありがとね」
つまり、どういうことなんだ? 分かっているのにそう言ったことじゃない? これはなぞなぞクイズか何かなのか? だとしたら俺には無理だ。こういった類のクイズは昔からずっと苦手なのだ。
「それで、結局なんなんだ?」
「ねぇ、蒼空。オシャレって別に物や建物だけじゃないよね?」
「というと?」
「オシャレな人とか言ったりするでしょ?」
「こことかそういう人達御用達だろって.......あっ、服か」
「はぁ.......やっと分かってくれたね」
なるほど。確かにイケメンの人達はみんなオシャレな服を着たり、ネックレスだのピアスだのをつけてしている気がする。けど、服やアクセサリーだけでそんなに変わるものなのだろうか? ぶっちゃけ服なんて着れて周りから変に思われなければ何でもいいと思っている俺にはよく分からないな.......。
「何はともあれまずはお昼ご飯に行こ!」
「分かった」
「優香さんも今日はありがとうございました!」
「いいのよ。ちゃんとこっちも貰うものは貰ってるしね。蒼空くんもまた来てねぇ~」
「はい。ありがとうございました」
そう言って俺達は店を出て次なる目的地を目指して行くのであった。
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