第15話 甘い誘惑に言葉をかけて

「ここのアイスが美味しいんだよ」

 本部から少し離れたお店にやって来たミク達。人が多く、不安そうなミクを支えるように、モモカと手を繋いでお店に入っていく

「待ってて。買ってるから」

 ソファーに座り、本を抱いてキョロキョロとお店にいる人達を見ているミクと、その隣に座りミクを見守るモモカを残して、クルミとリコが注文のため席を離れていく




「ミク、モモカ。お待たせ!」

 しばらくすると、大きなカップにアイスをたくさん乗せて、リコとクルミが戻ってきた

「ちょっとリコ……。買いすぎじゃない?」

「そう?でも、ミクが食れなくても私が食べれるし」

 お店にいる人達もみんな見るほどの量の多さに呆れるモモカ。だがその隣で、ミクがテンション上がってニコニコと笑っている

「スゴいです!こんなに食べていんですか?」

「もちろん。でも、お腹壊さないようにね」

「はいっ!」




「レイさん、何話すのかな?怒られるの嫌だなぁ……」

 アイスを半分食べ終える頃、待ち合わせの時間が近づいて、不安そうにアイスを頬張るリコ。隣で聞いていたクルミが、アイスを食べつつため息混じりで返事をする

「怒らないでしょ。今日の報告を聞きたいだけじゃないの?」

「そうだけどさぁ……。そういえばミク、持ってた本、どこ行ったかわかる?」

「あっ、本は……」

 リコに聞かれて、隣に置いていた絵本をぎゅっと抱きしめた

「お母様が、これはもう私の本と言って、私の中に入れて消えてしまいました。でも、この本がまた来てくれたので、本当に嬉しいです!」

 嬉しそうにニコニコと微笑み話すミク。だが、リコ達は話す内容が分からず、少し首をかしげている

「えっと……ミクのお母さんが?」

「はい。夢の中でお父様と一緒に、私に会いに来てくれたんです」

 話を聞いても、いまいち話が読めないリコ。モモカとクルミも顔を見合わせて不思議そうな表情をしている

「ちょっと、この本の中、見てもいい?」

「はい。もちろんです」

 本をリコに渡すと、モモカとクルミも一緒に絵本の中を確認していく


「でも、どうしてこの本を持ってきてくれたのですか?」

「リコが、本がなくなっていたから、新しいのをってね。でも何もなくて、本は唯一これだけあったんたけど……」

「でもこれ、何も書かれてないよ」

 パラパラとページをめくっていくが、何一つ書かれていない本に、リコ達が不思議そうな顔で本を見ていると、ミクが本を渡すようにと、リコに手を差し出した

「いえ、この本は……」

 リコから絵本を受け取ると、そっとページに触れると、何も書かれていない真っ白なページに、少しずつ文字が浮かび上がってきた


「文字が……」

「この本は、お婆様が生まれる前から、代々受け継がれている本だそうで……。いつもは真っ白な本なのですが、触れる度に、いつも違う物語が書かれて出てくるんです」

 驚くリコ達に、絵本を読みながら楽しそうに話すミク。その様子を呆然とクルミとモモカが見ている


「モモカ……クルミ」

 リコに声をかけられて、クルミが慌ててミクに声をかけた

「ミクちゃん、本を読むのは素敵なことだけど、おやつのアイスが溶けちゃうから、あとで一緒に読もっか」

「あっ!本当だ、もう溶けてる!」

 モモカに言われて、絵本をソファーに置くと慌ててアイスを食べはじめるミク。美味しそうに頬張る姿を見て、クルミが小さく頷いた

「これも急いで報告をしましょう。ミクに何が起こっているのかも聞かなきゃね……」

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