第12話 嫌な未来を見ぬように
「外の世界を知らない、魔術を使えない……。更に本は行方不明になった、と……」
ため息混じりに話す男性。昨日の会議の資料が散らかっている机の向かいに、緊張した顔をしているリコと、一緒に来たクルミとモモカも、リコにつられて緊張した表情をしている。男性の座る椅子がキィと鳴って、ミクの報告をしたリコの緊張感を増していく
「リコ。本当に、何があったか分からないのか?」
「……はい。寝ていたら突然でした」
恐る恐る話すリコに、また深いため息をついくと、机に手を置き、目をつむり無言で考え込んだ。しばらくすると、リコの隣にいるクルミとモモカの方を向いて、話しかけた
「それで、容態は?」
「安定しているそうです。しばらくしたら、目が覚めるだろうと」
「そうか……」
クルミから報告を聞くと、再び黙りこんでしまった男性。戸惑いから、三人とも不安そうに顔を見合わせた
「リコはあの子と付き添っているように。二人は今から、あの子の家に向かうように」
「えっ、レイさん……今からですか?」
「ああ、あの子の事がわかる資料を持ってきてくれ」
再び話しはじめたかと思えば、今からという突然の指示に、モモカが戸惑い聞き返すと、またキィと椅子の音を鳴らして三人から背を向けた。返事に困ったモモカがクルミを見ると、目が合い小さく頷いた
「……わかりました」
モモカが返事をすると、それを聞いて椅子を動かし、三人の表情を確認すると、また椅子を動かして三人に背を向けた
「今日中には帰ってくるように」
報告が終わり、お辞儀をして部屋を出ていくリコ達。バタンと部屋の扉が閉じると、静かになった部屋で、またキィと椅子の音が鳴らして椅子から立ち上がると、部屋の窓の方へと歩いていく。窓から見える町と朝焼けの景色を見ながら、一人ポツリと呟いた
「嫌な未来でも見たのかね……。ライ兄さん」
「レイさん、機嫌悪そうだったね」
報告を終えて、ホッとした表情のリコがクルミとモモカに話しかける。二人も安堵で、ふぅ。とため息ついた
「まあ、ミク以外の事でも、色々とバタバタしているからね。仕方ないかも」
クルミの話を聞きながら、ふぁっとあくびをするリコ。緊張感が解れたのか眠たそうに目を擦る。リコに起こされていたクルミとモモカも少し眠そうな様子で、三人並んでトボトボと廊下を歩いていく
「ところで、二人は今からミクの家に行くの?」
もうすぐ三人の部屋へ着く頃、リコがクルミとモモカに問いかけた
「そうね。でも、少しだけ休んでから行こうと思っているけれど……。ここから遠いかしら?」
まだミクの家に行ったことのないクルミが二人に聞くと、それに答えるように、リコがうん。と小さく頷いた
「ちょっと遠いかもね。それより、二人にちょっとお願いがあるんだけど……」
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