第11話 拭えぬ不安を除くため

「ミクの様子は?」

 医務室から出てきたリコに声をかけるクルミ。ふぅ。と一つ深呼吸して、二人に話しかけた

「やっと落ち着いた。今は寝てるけど、しばらくしたら目が覚めると思うって」

 ミクの様子を聞いて、ホッとするモモカ。だが、その隣にいるクルミは浮かない表情でリコの話を聞いていた

「本当に何があったか分からないの?」

「うん。一緒に寝てたら突然苦しみだして……で、本が無くなってたんだ」

「あの本が?」

 リコの話に驚くクルミとモモカ。そんな二人を見て、リコが一度頷くと、また話しはじめる

「うん。ミクの枕元に置いてたんだけど……ベッドの下にも無くて、ミクも気にして呟いていたけど……」

 と、リコが話し終えると三人無言になり、本部の騒がしい音が、リコ達がいる医務室の前の廊下に響き渡っている


「とりあえず、部屋に戻って探してみましょう。ちなみにレイさんには報告はしたの?」

「……まだ。バタバタしちゃってたし」

 クルミの話に苦笑いで伝えるリコ。目をそらして気まずそうにしていると、クルミが何やら考え込みはじめた

「それじゃ、リコはレイさんに報告してきてね。私達は本を探してくるから」

「えー……。一緒に行こうよ……」

 一人で報告に行くことに嫌がるリコに、クルミが背中をポンッと叩いて微笑む

「リコしかミクと一緒に居なかったんだから、頑張って行ってらっしゃい。多分怒られないから」

「……わかった」

 しょんぼりと落ち込み、トボトボと歩きはじめたリコの後ろ姿を、見えなくなるまで見届けると、二人は寝室の方へと戻るため、リコとは違う廊下を歩いていく



「一体、何が起こっているのかしら?」

「さぁねぇ……」

 大分部屋まで近づいてきた頃、モモカが呟いた言葉に、素っ気なく答えるクルミ。二人の周りでバタバタと、騒がしく動き回る人達に挨拶もしながら、話し歩き続けていく

「レイさんも、本のこと何にも教えてくれないのよね……」

 クルミが困ったように話した内容に、モモカがうんうんと、何度も頷いている

「クルミは、ミクのこと何か聞いてる?」

「あんまり……本部総出で、ずっと探してた子としか聞いてないなぁ」

「クルミもかぁ……。私もそうなんだよね。あとはミクちゃんの本を持ってくるようにとしか……」

 クルミと話ながら、うーんと考え込んでしまい、少しずつ足取りが遅くなっていくモモカ。少し前を歩いていたクルミが、足を止めまたふぅ。と一つため息ついた

「まっ、お喋りはとりあえず後にして、急いで本を探してリコの報告のお手伝いに行きましょ」

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