第5話 落ち込む前に、話を進めて

「美味しいねぇ。ミク、後でデザートも食べようね」

「あっ……はい……」

 施設の食堂も人が多く、少し人酔いして、あまり食が進まないミクに対し、リコは頼んだハンバーグ定食を二つも頼んで、一番に食べ終えようとしていた

「食べ過ぎよ。いざという時、動けなかったらどうするの?」

「大丈夫だよ。最近、町は平和だし、ミクもいるし」

 リコの食べっぷりに呆れるクルミに、口一杯のご飯を頬張り、美味しそうに食べ終えると、ご機嫌でクルミに話返すリコ。ミクと色々と話をする予定だった食事も、話が進まないまま。ミクの食事が終わりそうな時、やっとモモカがミクに話しかけた


「ミクちゃん、その本だけど……」

「あの……。渡すのは……」

 隣にいたモモカが話はじめると、膝の上に置いていた本を、取られないように慌てて抱きしめ、うつ向くミク

「そうだね。ゴメンね、大切な本だもんね」

 そんなミクの様子を見て謝るモモカに、本を抱いたまま少し顔をあげて、モモカに問いかける

「あの、お母様とお父様のこと知っているのですか?」

「もちろん。でも、会ったことはないけどね」

「居場所はずっと探してたんだけど……やっと見つけたのにねぇ」

 リコが二人の話に割って入ると、それを聞いてミクがリコにも問いかける

「私のお家を探していたんですか?」

「そうだよ。お家というより、ミクを探していたけどね」

「私をですか?」

 ミクの言葉に頷いたリコ。また口一杯にご飯を頬張ると、ミクが抱いている本を見て呟いた

「でも、一人でいたなんて……なかなか大胆なことするよね、ほんと」

「ちょっと……リコ」

 慌てて話を止めたクルミ。リコの話を聞いて、少し顔を伏せてしょんぼりしているミクがいた


「あっ……ゴメンね、ミク。お詫びに、このトマトあげる!」

 と、リコのサラダに入っていたトマトを取ると、ミクのサラダに入れようとした時、クルミがそれを遮るようにリコの腕をつかんだ

「ダメよ。リコがトマト嫌いなだけでしょ。ちゃんと食べなさい」

「そんな……酷い……」

 クルミに戻されたトマトを見て落ち込むリコを横目に、ミクが隣にいるモモカに恐る恐る声をかけていた

「あの、お母様とお父様は……」

 心配そうな顔のミクに、安心させようとミクの頭を優しく撫でて微笑むモモカ

「今、この施設の人達が探しているから、心配しないで。それより、ちゃんと食べてデザート食べよっか」

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