私のサーヴァントは今日も私の魔力をコケにする

孔明丞相

キミの魔力は不味すぎる


「不味い。あまりにも不味い。その辺の下水でも啜っているようだ」

「あーもーっ!毎度毎度減らず口が本当に減らないわね!」

「褒め言葉かな?」

「違うわよッ?!」


 随分な物言いをしてくるのは私のサーヴァント。真名を聞き出そうとしたけど、頑なに話そうとしなかったちょっとおかしなサーヴァント。


 初めて会った時に最初の言葉が「キミの魔力は不味すぎる」だったの。


 どうかしてるわ。まったく。


 私は魔術師。

 十五になると家の掟でサーヴァントを召喚することが決まっていた。


 でも、呼び出しに応じたのがこいつとはね……。


 私だって半端者だという自覚はあるから英雄王だとか、騎士王だとかの凄い英雄は無理だって思ってたけど……。こいつは一体どこの誰?


「失敬な物言いだな、マスター」

「貴方の初めの一言よりかはマシよ」

「キミの魔力は汚い。私でようやく息ができるレベルだ。両親はあんなに美味しい魔力を持っていたのにどうして……」

「そんなこと私が知りたいわよ!!」


 そうなのだ。

 母上も父上もとても澄んだ綺麗な魔力を持っている。でも、私のは何かとてもガサツで稚拙でこいつの言葉を使いたくはないけれど汚い。


 魔力を練り込む訓練も頑張ったのにいつまで経っても魔力が澄んだ物にならない。


「やれやれ……。呼び出しに応じたのが私だからよかったものの、その他の英雄なら刺し違えてでも殺されていたぞ?」


 肩を竦めてしょうがなく、と言った感じで話すこいつは近くに腰を下ろし、優雅に寛ぎ始めた。


 呼び出した英雄に殺される……?

 それほどまでに私の魔力は汚いの……?


「あぁ、ボロっカスだ」

「そこまで言わなくてもいいでしょぉおおお!!」


 私は指先に魔力を込めて練り上げた魔力を弾丸にして放った。


 しかし、それは当たる瞬間にぱっと霧散し、何事も無かったかのような静寂が訪れる。


「何か言いたいことは?」

「……何でもないわよ」


 仕返しとして魔術が飛んでくれば私は呆気なく死ぬ。それをわかっているせいか、あいつの微笑みがとてもうざったらしい。


「キミは魔力が様になっていないにも関わらず小手先の技ばかり身につける」

「……ふんっ」

「先程の攻撃もあと少し集中して練り込んでおけば私に届いたのに」

「はぁ?何?指導しているつもりなの?別に結構ですぅ!」

「やさぐれてしまって……反抗期か?」

「あんたに言われたくないわよ!さっさと私に真名を教えなさい!」

「だから言っているだろう?私に攻撃を当てられたら、と」


 挑発気味に言ってくるので、この瞬間にももう一度放ってしまいたいが、挑発している時こそ、こいつは油断がないことは既に周知しているので大人しく受け入れるしかない。


「まぁ、頑張りたまえ」

「ふぎぎぎ……」


 私の髪をいじって遊んでくる。

 尚更イラッとくる。


 ふと、私の髪から手を離して、こいつは笑顔でこういった。


「キミは怒ると面白い味になるね」

「面白い味?なんの事よ?」

「魔力ことさ。いつもは下水の味なのに、怒るとクセはあるがそれはそれで美味しい魔力になる」

「あんた……まさかそれで毎日毎日私を怒らせてるんじゃないでしょうね」

「ご明察。……おっと美味しい魔力をありがとう」

「ふがーっ!!」


 組み付いた。流石にこの行動は予想外だったようで、目を丸くさせたあと、私の慣性に伴って、共倒れになった。


「キミは一体何がしたいんだ……?」

「全部手玉に取られているようでむしゃくしゃするのよ!」

「ざまぁないね」

「ふがーっ!」


 父上。母上。


 私は貴方達のような綺麗な魔力も敏腕なサーヴァントを得られませんでした。

 挙句の果てにはサーヴァントにからかわれてしまう始末です。


 ですがいつか必ず美味しい魔力……間違えた、綺麗な魔力にしてみせます。


「おっ、今度は生ゴミの魔力になったな」

「うるさいわよっ!このやろー!」

「うわっ!?服を脱がせようとするな!キミは何をする気なんだ?!」

「仕返しよぉおおお!!!」

「うへぇ!鉛の味になった!」

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