虎と芽衣と紗矢と・・・。

 火曜日は午後の3時間が英語という最悪の日だったが、それもなんとか乗り越え、3人はまた芽衣の家に向かった。


 今日は、芽衣も虎と紗矢と一緒に帰ることにした。


 さくらと真人はどうやら2人で真人の家で勉強しているらしい。


 礼は、まだ部活があるらしく、まじかよーと1人でぶーぶー言っていた。


 少し、雨がぱらついているが傘をさすほどでもなかった。虎と芽衣がいつものように並んで歩いて、その後ろを紗矢が追いかけるように歩いていた。


 数分歩いて、芽衣の家に着く。


 「どうぞ」と芽衣が先に入り、「お邪魔しまーす」と虎と紗矢が入って行く。


 2階の芽衣の部屋に着くと、芽衣は妹の部屋に行って着替え始めた。虎と紗矢は少し落ち着かない。


 数分後現れた芽衣は、黒のロゴ入りタンクトップにダメージジーンズといったコーディネートだった。


 間違いなくかわいい。

 タンクトップのロゴには「あなたとずっといたい」というような英語が書かれているようだ。


 昨日と同じようにテーブルに教科書を広げ3人で勉強を始める。


 今日は心なしか芽衣と虎の距離が近い。


 しばらくは放っておいたが、我慢できなくなって、紗矢も虎の横に隙間なく座った。

 

 虎からすれば両手に花かもしれないが、多分これは言われているようないい物じゃないな、と完全に集中力を途切れさせていた。

 

 芽衣が少し動くたびに胸が虎の腕に当たる。・・・芽衣さーんと言いたくなるが、顔がだらしなくなっているのだろうと、何も言わないでおいた。

 

 左側を見ると紗矢が寝息を立てている、実は虎からの返信を待っていて昨日は寝ていなかった。


 虎の左腕によりかかりながら寝てしまっているらしい。

 

 芽衣がパソコンをいじって、BGMにかけてくれた動画の音だけが部屋に響く。ピアノ曲だ、名前は知らないが、優しい感じの曲だ。


 「虎、」芽衣は思い切って声をかけてみた。


 「ん?」


 「虎は今好きな人いるの?」


 少し、時間が空く。


 「ああ、いるかな」


 「多分、虎のことを考えて眠れなくて、ようやく虎の横で眠り姫やっているような子だよね」


 「そう、なるのかな、多分」


 「そうじゃないかなって、思っていて・・・」芽衣の両目から涙があふれて止まらなかった。


 「高坂 芽衣は、黒木 虎のこと好きでした、私、私、あなたのことが好きでした」芽衣は虎の右腕にしがみついて声を押し殺して泣いた。


 「芽衣・・・ごめん」ようやくそれだけ言えた。


 「今日は帰るよ、芽衣。紗矢、起きて」

 

 「ん?時間?」紗矢は寝ぼけているようだ。


 「ああ、一緒に池袋まで帰ろう」


 「うん」

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