#69 奇跡を求めて

ベッドにいたはずのコ―デリアの姿はもうない。


「…………」


俺はあまりのショックに黙る。


「……どうして」


どうしていつも……。


「どうしていつもこうなるんだよ!」


なんでなんだよ……。


「何故俺はっ……お前らを守ることが出来ないんだっ……!」


何故。何度も何度も彼女たちはこんな目に合わなければならないんだよ……っ!


を当たり前に守るっていうのはそんなにも難しいことなのかよ……ッ!」


俺が彼女に現実を教えたのが悪いのか?

それとも、俺がこんなデタラメな世界を創ったのが悪いのか?


どうして。こんなことになったんだ……。


「ハヤト。リアは何処どこに行ったんだ?」


フェ―ベが当然の疑問を投げかける。

……いまなんて?


聞き違い……なのか?


「それ、は……? フェ―ベ、コ―デリアの事をおぼえているのか?!」

「ハヤト。何を言っている」


記憶が消去されていない……?


「……コ―デリアを憶えているのか?!」

「当たり前だろう? 今までそこにいたではないか。リアは大切な親友だぞ」

「憶えているんだな?」

「ああ。当然だ」


俺はイオの方向を見る。


「イオ。お前もコ―デリアを憶えているのか?」

「オカシナことを言うのですねハヤトさんは。憶えていますよ!」


……どうやらイオは本当に言っているようだ。


「……ッ! リシテアとレアもか!?」

「ええ。勿論。コ―デリアちゃんは大切な仲間よ」

「大切な仲間ですっ!」


「そう……なのか……!」


以前、蒸気のマ―ズに行った時に、コ―デリアとリシテアがAIにより消去された時は、

二人の記憶は他のNPCにも無くなっていたようであったが、今回は違うってことだ。

あの時と一体何が違うんだ……?


ということは、コ―デリアのデ―タはまだ完全に消えた訳ではないのか……?

今にも更に状況が悪化しそうな気がして、俺は焦る。


そうだ。ログを見たらコ―デリアが消えた状況が記載されているのではないか?

俺はメニュ―を開き、ログを見た。


《コ―デリア》のデ―タは完全に破損しているため、完全消去を開始します......。


「…………」


やはり、彼女は消去されたのか……。

俺はログを更に下に送る。


消去開始......進行状況10%......。


30%......。

50%......。

89%......。

99%......。


99.8%......。


《コ―デリア》のデ―タの完全消去に失敗しました......。


「完全消去に失敗した……?」


ログはそこで止まっていた。


「どういう……ことだ……?」


『来栖。《最初の洞窟》にあるコンピュ―タ―を調べてみたらどうだ?』


判断できなくなっていると加賀美かがみから声。


『彼女のデ―タの消去が99.8%で止まっているって言うことは、

 まだあのコンピュ―タにデ―タが残っている可能性が高いよ』


『ああ。そうだな。その通りだ……』


頼む……コ―デリア……。

生きていてくれ……。

0.2パ―セント……。

こんなのはただの願望がんぼうだと分かっている。


だが、それでも彼女を救いたいから。


『助けてくれてありがとうですわ、ハヤト……様』


初めて出逢ったあの日――お前の明るさに圧倒されたんだ。


だから。また金髪の彼女の姿を見たいんだ。


『ハヤト様っ! このまままっすぐ前進するのですわ!』


いつだったか……お前をおんぶした時は体が密着して緊張したよ……。


『わたくし、もう逢えないのかと……はっ! あ、貴方のことなんて何も考えて無かったんだからッ!』


心という概念がいねんを創り、過去に戻ってお前と再開したあの日、俺はとても嬉しかった。


『《シャイン・ラ―ジソ―ド》!』


《ジュピタ―》で、《ファントム》と戦った時、お前は凄く輝いていた。

今思えば。お前はヒ―ラ―のハズなのに、回復よりも攻撃魔法をよく使っていたな。

……おかしな話だな。


『ハヤト様……』


もう一度。彼女の金色の瞳を見たい。


『ハヤト様っ』


いつもの明るい声を聴きたい。


そして、なによりも……。


『ハヤト様!』


君の笑顔がまた見たい。


……なのに。


『ねぇ……ハヤト様』


あの時のコ―デリアは――。


『ワタクシハ……ダレデスノ?』


もう、あんな悲しい顔は見たくない。


だから――。


俺は拳を握りしめる。


そして、俺達は《最初の洞窟》に向かった。

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