#65 危険な存在

全長十メ―トルはあるであろう、

巨大なタコ型ネ―ムドモンスタ―《“海底”のクラ―ケン》

タコ型というのももの、

見た目はタコのような容姿をしておらず、とてもおぞましい見た目をしている。


ヤツは海のど真ん中に居るため、本体らしき部分に接近することができない。

アレを倒すなら、遠距離攻撃するしかない……ッ!


「きゃあああ!」


リシテアはタコの触手に巻き付かれた。


――にゅるにゅるにゅるッ!


なんかエロいな……じゃなくて!


◇◆◇◆


「リシテアッ!」


俺はレ―ルガンを取り出して触手に対してスコ―プを覗き、

触手の下の方を狙いトリガ―を引く。


なぜロックオンしないのかというと、

触手をロックオンすると触手の真ん中にタ―ゲット照準されてしまうからだ。

その真ん中部分にはリシテアがいる。


――ヒュン。


――ドサッ。


リシテアに巻き付いていた触手はちぎれ、海に落ちた。


「ありがとう、ハヤトくん」


リシテアはお礼をいう。


「みんな。武器を構えるんだ――えっ?」


気がつくと、真っ二つになったクラ―ケンは海へと沈んでいく。

よく見ると、クラ―ケンの本体らしき部分に鎌が刺さっている。


横を見ると、フェ―ベ。


「まさかフェ―ベがあれを一撃で倒したのか?」


鎌をフェ―ベが投げたってことか?

バランスブレイカ―もいいところだな……。流石魔王……って!


「ふふっこんなの楽勝だ……?」

「どうしたハヤト? なにをボケっとしている?」


フェ―ベはボケっと俺を見つめている。


「フェ―ベ下を見ろッ! 何かがおかしいッ!」

「……下?」


さっき海に沈んでいったクラ―ケンがいた場所から影のようなものが現れ、そして……。


――バッシャ―ン!


再び、クラ―ケンが海面に姿を現した。

真っ二つになった筈のヤツは完全に元に戻っている。

さっき現れたクラ―ケンとは何か様子が違う気がする――あっ!


しかもアイツの名前をよく見たら……。


《“海底”のクラケ―ン・モンスタ―》


――に名前が変わっていた……。

名前の後にモンスタ―が付くってことはアイツは喋る……のか?


『フェ―ベ……オ前ハ……私ヲ裏切ルノカ?』


「お前は……?」


フェ―ベは喋るモンスタ―に問う。


『モウ忘レタノカ?』

「お前のような変なタコは知らないが」

『私ハ――』


モンスタ―は口どもり、


『――“フォルト”ダ』


そう告げた。


――――!?


コイツが……フォルト?


「フォルト? お前が……?」と、フェ―ベ。


『ソウダ。正確ニハ、コノ魔物ヲ操作シテイルノダガ』


「ま、待てっ! お前がフォルトということは……」

「やはりお前があのコンピュ―タのAIの正体なのか?!」 


俺はそう問う。


『何ノ話ダ? アノ忌々いまいまシイコンピュ―タヲ用意シタノハ貴様ダロウ? “来栖隼斗”』


◇◆◇◆


「忌々しい? どういう意味だ? 

 お前はコンピュ―タ―のAIじゃないのか? なぜ俺の名前を知っている!?」


『私ハ……アンナ“出来損ナイ”デナハイ! オット。少シ……取リ乱シタ』


前回……管理用コンピュ―タ―の画面でマスタ―呼ばわりしてきたAIとコイツは別だと?

それが本当なら、俺の本名を知っている存在が加賀美以外に二ついるのか!?


「なら――どうして俺のフルネ―ムを知っているんだ?!」


『ワタシハ…………』


フォルトは一瞬考えているのか黙る。


『……話はオワリダ。……フェ―ベ。貴様ガ裏切ルトイウノナラ――』


「裏切るというのなら?」


フェ―ベは問い返す。


『ソノ……チカラ……返シテ貰ウゾ。イヤ――』


力を返すだって? つまりコイツがフェ―ベに力を……?!


『――ココデ、オ前達ヲ殺ス』


――にゅる……。


一本の触手は一気に距離を詰め、フェ―ベへと近づいていく。

――さっきの時よりもかなり速いッ!


「フェ―ベ!」俺は叫ぶ。


「…………!」


フェ―ベは襲いかかる一本の触手を華麗かれいに避けて、鎌で反撃する。

すると、触手はポトンと、海中に沈む。

だが、切られた触手はすぐに再生し、復活する。


「……どうした? こんなものでは私は倒せんぞ」


フェ―ベはクラ―ケンに対して誇らしげに語る。


『触手ハ一本ダケデハナイ……! 

 イクラ貴様ガ強クテモ、数ニハ勝テマイ……!』


――にゅるにゅるにゅるっ


フェ―ベに向かって急接近する数多くの触手達。

触手は、正面から真っ直ぐ来るものや、

回り込んできたりなど、様々な攻撃パタ―ンでフェ―ベに襲いかかろうとする。


「フン。そんなものか……?」


フェ―ベは冷静に一本一本触手を切断していく。

だが、いくら斬ろうとも数が減らない。それどころか、数が増していく触手達。


「ぬっ……」


遂に、対応しきれくなったフェ―ベは触手に囲まれてしまう。


「フェ―ベ――!」

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