# 33 奪われた少女

俺は古龍こりゅうのHPを見る。

よし! 三割ほど減っている!

だが――休む暇もなく古龍は俺達に突進を仕掛けてきた――


「《シ―ルド》!」


俺は咄嗟にイオの前に立ち、スキルを発動させる。


――ズササ―。


俺は突進攻撃の攻撃を防ぎながら後ろに滑っていく。

シ―ルドで減衰げんすいされているとはいっても、古龍の突進攻撃は強力だったようだ。

俺のHPはニ割減らされた。

イオの方を見る。イオはHPが減っていない。良かった……


「ハヤトさん!」


心配そうな目つきで俺を見ている。


「俺にかまうな! スキを見つけ次第攻撃し続けろ!!」


俺はさっき起こった状況を頭をフル回転させて考えた。

突進攻撃だと?そんなの俺は設定していないぞ。

やはり、AIが自動で設定しているということなのか?


確かに全ての行動を俺が細かく設定しているわけではないから

新しい行動が追加されていてもおかしくは……ないか

過去にも似たようなことはいくらでもあったしな……


俺は意識をドラゴンに戻した。


「わかりました。とりゃあああああ!」


――ザシュザシュ!


イオの連撃が古龍の頭部を確実に叩き込む。


すると古龍は、イオに対して噛みつき攻撃を仕掛けてきた――


「イオッ!」


『グォオオ!』


古龍はイオに噛み付いてこようとする。

だが、イオはひょいと回避してさらに連撃を叩き込む。


――俺が気にする事ではなかったようだ。


――ザシュ、ザシュ!


俺もイオに合わせて古龍に近づき――


「《真・三連撃》!」


『グォォ――—!』


よし!効いてるぞ!


俺とイオはドラゴンの攻撃を避けながら連撃を叩き込んでいく。

ドラゴンの残りHPは後半分まで減った。なら――!


「イオ! ドラゴンから離れろ!!」

「わかりました!」


『――――――!!』


古龍は咆哮を始める。さっきよりも大きな音でだ。

だが、いつものパタ―ンならここからが本番だ。


ヤツの様子を見ると、なにやら金色のオ―ラをまとっている。

あのオ―ラは攻撃力のバフか防御力のバフかどっちかだろう。

あるいはその両方か。だとしたら厄介だな……。


俺は古龍の方を見る。


『――――—!!!!!』


口を開けて何かをチャ―ジしている……


――あれはッ!!


「イオ! アレがレ―ザ―攻撃だ!」

「あれがそうなのですね! 対策はありますか?」

「エネルギ―を溜めた後に横に薙ぎ払うように放ってくるから上にジャンプして回避するんだ!」


レ―ザ―は横に薙ぎ払った後に周辺を爆発させる攻撃だから、

さっきみたいに俺が盾になって防ぐのも難しい。

それに、レ―ザ―は下手するとダメ―ジ“極”クラスの攻撃だ。

それをレ―ザ―が終わるまで俺の《シ―ルド》のMPとHPが持つとも限らない。

だから、避けるのがいいはずだ。


「わかりました! ジャンプですねっ」


そして、古龍はレ―ザ―を――!?

放たれたのは、レ―ザ―じゃなかった。


――それは、光の巨大な玉だった。


それは物凄い速度で放たれた。


そしてその玉は――。


――イオに向かって飛んでいく。


「イオッ―――!」


ダメだッあの速さじゃイオに追いつくことも出来ないッッ!!


◇◆◇◆


「きゃあああああ!」


イオは光の玉をまともに食らい。壁に激突していた。


俺はイオの前まで走り、イオのHPを確認した。


HP:360/4200


「生きてて良かった……」


ドラゴンはゆっくりと近づいてくる。


「大丈夫ですよハヤトさん……」

「もう、無理をしなくてもいい。俺がなんとかするからさ」


俺は悲しそうな顔をする。


「俺はイオを死なせたくないんだよ……」


これ以上失いたくは無いんだ……

イオまで死んだら俺はどうしたらいいんだよ……


イオは剣を握り、よろよろと立ち上がる。


「イオだってハヤトさんを死なせたくありません!!」

「っ!」

「イオはまだ戦えます! 生きています!」


「…………」

「あんなドラゴンなんかさっさとやっつけてまた冒険に行きましょう!」


イオは真剣な眼差しで俺を見る。


「きすだって! もっとハヤトさんときすしたいのですから!」

「あっ……」

「ですからッ! 戦うんですッ!」


イオは《ファイアチャ―ジ》を発動させ全身に炎を纏わした。


……そうだ、俺はイオと生き抜くって決めたんだ!


「イオと――生き抜くんだァああああああああ!!」


俺とイオはダッシュで古龍に近づき――、


「いくぞイオッ!」

「はい!」


二人はそれぞれの武器を構え……、


「ダブルフレイム――」

「ソウル――」


スキルを放った……ッ!


「――ソ―ドッ!!」

「――ブレ―ドッ!!」


ズッシャ―ンッ―――ッ!!


イオの連撃と俺の重い一撃が《破滅はめつの“エンシェントドラゴン”》に叩き込まれる――


『グオオォ……』


古龍は静かに動きを止め、そのまま倒れ込んだ。

2人のレベルは30になる。


俺とイオは歓喜した。


そしてしばらく喜んだ後、俺はち果てた建物の中の奥に置いてある宝箱を開けた。


『特殊スキル獲得:ファストム―ブ』


「よし、これでスキル入手――」

「ハヤトさんっ!」


「どうしたんだイオ?」


俺は声が聞こえた方向を見た――。


二十メ―トル程離れた場所に、長身で細身の男がいた。

いつの間に!?

イオを抱えあげていた。


「誰だ! イオを離せ!」

「こんにちは来栖くん。僕は“カガミ”」

「読み方は……僕のホ―ムペ―ジのタイトルに書いてあるとおりだ」


ぞわり、と背筋が凍る。


俺はイオに向かって走っていく。


「イオを助けたければ、砂漠のエリア《ダイモス》へ来い。

 制限時間はゲ―ム内時間で一時間だ。もし来なかったら――」


男は俺を見る。


「――彼女は死んでいるだろう」


「なに!?」


「《テレポ―ト》」


すると、加賀美の姿は少しづつ消えていく――


「待てッ!」


消えながら加賀美は言った――。


「僕は――“彼女たち”を助ける方法を知っている」


「な……に……?」


そして、加賀美とイオは何処かへ消えていった――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る