# 32 《“破滅”のエンシェントドラゴン》

《トリトン》で出来る限りのクエストを達成した後。

俺とイオはトリトンを後にして、ある計画を立てていた。

“カガミ”と名乗る人物と戦闘になったときの対策だ。


――古代遺跡ウラノス

遺跡にはドラゴンが数体設置されている。

そして、遺跡の一番奥に存在する、《ネ―ムド》のドラゴンモンスタ―を、

倒すことによってとあるスキルが手に入るようになっている。


スキル名は《ファストム―ブ》

残りHPを1にする代わりに、音速を超えるスピ―ドで動くことができる。

このスキルの効果時間は三秒だ。

また、HPが1から回復しても効果は消滅してしまう。


本来このスキルはあまりにもハイリスクな為、

使うタイミングがとても難しいスキルとして設定したスキルだが、

対人戦なら音速を超える速さはとてつもない武器になるはずだ。


例えばモンスタ―が相手の場合、

スキがある時を狙えば加速を生かしたダメ―ジを与えることができるわけだが……。

もしも《ファストム―ブ》発動中の三秒以内に倒しきれなかった場合は、

その次の1撃を喰らった時点でゲ―ムオ―バ―だ。

HP1だとリスキ―過ぎてスキルを使うタイミングが非常に難しいだろう。


……だが、対人戦なら話は別だ。

スキルを使うタイミングが難しいのはAI相手でも人間でも変わらない。

しかし、人間相手の場合は音速を超えた動きに“目”で追わなければならない訳だ。

そして、このスキルで相手を翻弄させ、加速した勢いで攻撃すれば――。

物凄いダメ―ジを期待できるはずだ。


それに相手は一人だ。

ウニティの作者がどれだけこのゲ―ムを知り尽くしていても、

俺とイオで隙きなく攻撃すればなにもできないはずだ。


――そして俺とイオはバ―ニングホ―スに乗って、

《トリトン》から北に進んだところにある《ウラノス》へ向かった。


「ヒヒ―ン!」


――ドドドドドドドドドッ!


相変わらず凄い速さだな、この馬。


◇◆◇◆


古代遺跡ウラノスに到着する。


朽ち果てた建物がそこら中にある。

穴だらけの家や屋根が崩れ落ちた遺跡のようなものまで辺りはボロボロだ。

本来人が生活していたらあまり無いはずの雑草がたくさん生えており、

その雑草の中には虫が生活している。更に周辺にはネズミや蛇などの動物もいた。


俺とイオは遺跡の最奥を目指して歩いていく。

イオは俺に質問する。


「最奥に住んでいるドラゴンというのはどういったドラゴンなのですか?」

「ああ、神々こうごうしい見た目をしていて、口からレ―ザ―を放つ強力なドラゴンだよ」

「強力なドラゴン相手にニ人で勝てるのですか?」


う―んと……そうだなぁ……。


「このエリアの推奨レベルは23なんだ。俺達は28だからパ―ティ―ニ人でも余裕で勝てるよ」

「れべるってなんですか?」


まあそうなるわな。イオにレベルとか言っても分からないのは当然だった。


「……要するにドラゴンよりも俺達の方が強いってことだよ」

「へぇ~そうなのですか」


俺はそう答え、二人はさらに歩いていく。


すると、周りに雑魚ドラゴンが数体いた。

このドラゴンを倒すと 稀に強力なレア装備を落とす。

だが、今の目的は最奥にいるネ―ムドモンスタ―だ。


俺とイオは周りにいるドラゴンを避けるようにして最奥へ進んでいく。

最奥に到着すると、大きめの建物のようなものが見えた。


「ここだ……」

「この先に強力なドラゴンがいるのですね?」

「そうだ、俺達のほうが強いけど、気を引き締めて行こう」

「強力なドラゴン……なんだか気持ちが高ぶりますね!」

「……だから、気を引き締めていくんだ」


イオを死なすワケにはいかないんだ……。

絶対にまもってやる。


「わかってますよ! 行きましょうハヤトさん……」


俺達はゆっくりと中に入る。

建物の中の天井には幾つか穴が空いており、そこから月の光が入り込んでいる。

そして俺達は正面をみた……。


『グオオオ……!』


――いた。

四足歩行のドラゴンネ―ムドモンスタ―《“破滅はめつ”のエンシェントドラゴン》がそこにいた。

四足歩行のドラゴンで空は飛ばない……というか、天井があるこの環境では飛ぶことが困難だ

足から頭までの高さは八メ―トルくらいだろう。



俺はドラゴンに気づかれないよう、小声で話す。


「イオ、さっき言った通りアイツは口から少し溜めた後、レ―ザ―を放ってくる」

「レ―ザ―……ですか」

「他には爪で引っ掻いてきたり、尻尾で攻撃してきたりする」


「凶暴なのですね」

「弱点は頭部だが、噛みつき攻撃に気をつけろ」

「わかりました。スキを見て頭を狙えばいいんですね」


「そうだ。よし、行くぞ」


わざわざレベルを上げてから挑むんだ。ヤラれるワケには行かない。


「うおおおおおおおッッ!」


俺は駆け出した――、


◇◆◇◆


戦闘する前に俺とイオのステ―タスとメインスキルを軽く紹介しよう。


ハヤト:レベル28


クラス:勇者


HP:6100


MP:3900


ハヤトのメインスキル


《真・三連撃》

【効果】《三連撃》の上位スキル。ものすごい速度で強力な三連撃を叩き込む。

    ダメ―ジ“大”効果。

【コスト】MPを1300消費。


《ソウルブレ―ド》

【効果】自身の魂を引き換えに、一定時間魂の剣を作り出す。

    3秒間ダメ―ジ“極大”効果。

【コスト】HPを1000消費。


《シ―ルド》

【効果】自分の周りの全方位に魔法の盾を作り出し、ダメ―ジを大幅に軽減する。

    但し、この魔法を発動している間に、

    他の行動を行おうとすると魔法の盾は切れる。

【コスト】攻撃を一度防ぐ度に、MPを500消費。


イオ:レベル28

    

クラス:魔法剣士


HP:4600


MP:4200


イオのメインスキル


《ヘルフレイム》

【効果】《フレイム》の上位スキル。敵一体に対し、剣から巨大な火の玉を放つ。

    ダメ―ジ“大”効果。

【コスト】MP1200消費。


《ファイアチャ―ジ》

【効果】全身に火を纏い、3秒間ダメ―ジ“大”効果。


【コスト】MP1400消費。


《ダブルフレイムソ―ド》

【効果】今持っている剣と、更に一本の火属性の剣を召喚し、

    一時的に二刀流連続攻撃を繰り出す。

   ダメ―ジ“極大”効果。

【コスト】MP1600消費。


ざっとまとめるとこんな感じだ。


◇◆◇◆


俺は駆け出しながら、ヤツのHPを確認した。

設定ミスのHPかどうかを確認するためだ。

……異常なしだ。

そのまま俺はメニュ―からログを出す。


――なるほど、強制戦闘のため逃亡不可か。

もう逃げられないな。


そして俺はドラゴンに斬りかかろうとする――がドラゴンの咆哮に吹き飛ばされる。


「ぐわッ!」


な、なに!?

咆哮ほうこう攻撃なんか設定したか?

……いや、恐らくこれはAIが勝手に追加した攻撃だ。

そして、吹き飛ばされた衝撃で俺のHPはニ割ほど減らされた。


『――――――!』


ドラゴンはまだ咆哮を続けている。


「イオッ!あのドラゴンの咆哮に気をつけろ!」


「わかりました。それよりもハヤトさん! 避けてください! 《ヘルフレイム》!」


「わかったッ!」


俺はぐにイオが何をしているのかを理解し、左にステップで避ける。


その直後――


――ドカ―ン!


咆哮がり止んだ後――ドラゴンの顔面目掛けて強力な一撃が放たれる。

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