#10 死後の世界

レアは鉄の巨人に投げられ――、HPは四割減らされた。


コ―デリアは詠唱えいしょうし始める。


「《ライトヒ―ル》!」


レアのHPが回復する。

だが、コ―デリアはもう魔法は使えない。


「レアっ大丈夫か?」


レアは起き上がりながら答えた。


「大丈夫ですっ! そんなことよりもお兄ちゃん! 喋っている暇はありませんよっ!」


と、鉄の巨人の方を指差す。


鉄の巨人は『ゴオオ――』と叫びすぐさま第二撃をレアに叩き込もうとする――


――速いッ!


さっきより明らかに攻撃速度が上がっている。

なるほど、HPが三割まで減ると、攻撃速度が上がるようになっているのか。


「はっ……」


レアはすぐさまバックステップをし、巨人の攻撃を避ける。

――ズドンと重い一撃が地面を叩く。


もう俺達のMPは殆ど残っていない。

……こうなったら短期決戦だ。


「リシテア! イオ!」

「なにかしら?」

「なんですか?」


俺は説明を続ける。


「俺達近接組が、奴の足を殴ってもう一回ダウンさせる」

「ええ」

「ダウンしたら、全員で頭に叩き込むんだ!」


「「了解!」」


俺と、リシテア、イオは剣を構え巨人の足元に向かう。

巨人は足で踏み潰そうとしてくる。

俺達三人は踏み潰し攻撃をなんとか避け、巨人の足元に近づいた。

そして、攻撃を叩き込む。


――シュババババ!


巨人のHPは一割減り、そのまま膝を付いてダウンする。


「今だッ! 全員で叩き込むんだ!」

「了解ですっ」


まずレアが杖で巨人の頭に攻撃を叩き込む。


「わかったわ! てりゃああッ!」

「これでも食らいなさい!」


リシテアとコーデリアも頭に目掛けて攻撃を仕込む。


「メラメラ……ッ!」

「ハッ――!」


最後にイオと俺が攻撃した。

そして巨人のHPを確認する。


……あと一割ッ!


俺は更に攻撃を叩き込もうとする。

しかし、巨人は起き上がり、攻撃を再開しようとする。

巨人は腕を振り下ろし、俺達をなぎ払ってくる――


俺はとっさにステップし、回避に成功するが、他の四人はまともに喰らってしまった。

彼女たちのHPが減っていく――、

追い打ちをするように巨人は更に追撃してこようとしてきた。


このままじゃ――彼女たちがやられてしまう――


やられたら――、


やられたら? どうなるんだ? 俺はどう“設定”した?


彼女たちが死亡したらどうなるんだっけ?


そうだ、モンスタ―と同様その場から“消滅”するように設定した……はずだ。

モンスタ―やNPCは消滅した場合、一定時間後に定められた場所に復活するはずだ。


巨人のすぐ近くに《ロックマン》の死骸しがいがある――


…………死骸?


俺は過去の記憶を思い出していた――。


最初に倒した《ゴブリン》。

その次に村付近で倒した《バジリスク》。

その後廃屋はいおく前で戦闘した《マッドウルフ》。


……森で戦闘した《スパイダ―》。

そして、目の前に倒れているままの《ロックマン》達――、

モンスタ―はしていなかったじゃないか!


じゃあ、倒された彼女たちはどうなるんだ?

モンスタ―と同じようにせずにそのまま倒れたままになるのか?

なら、その倒れたままの彼女たちの意識はどうなる?


いや、HPがゼロなんだから意識は無いのか?

モンスタ―と同様、意識が無いまま倒れたままになるのか?

そうだとしたら――、


彼女たちが倒されたら復活できない?!


まずいっ――。


俺はUIを確認し、MPの残量を確認する。


「そうか! 《ジャンプアタック》がまだあるじゃないかっ!」


俺は急いで巨人の前に歩み寄り、スキル:《ジャンプアタック》を発動させ――

俺は高く飛び上がり、巨人の頭上よりも高くび上がった。


そして、そのまま落下する。


落下する勢いに任せて、剣を振り下ろす――—


――—ドギャ―ン。


と重い金属音が辺りに響き――、


――どうだ!?


俺はそのまま地面に着地する。


俺は《“鋼鉄”のアイアンゴ―レム》のHPを確認した。

HPは0/18700と表示されている。


と、巨人は地面に向かって倒れ始める。

ズシャアアと巨人は頭から地面に突っ込んでいった。

UIにはレベルアップ! の文字が見える。

どうやら俺達はそれぞれ2つずつレベルが上がったらしい。

みんなのレベルは9になる。


……《ネ―ムド》を倒したわけだし、むしろこれくらいは上がらないとな。

しばらく経ったが、巨人も他のモンスタ―同様“消滅”しないままのようだった。


◇◆◇◆


「ハァ……ハァ……」


とりあえず、なんとかなったようだな。

俺は彼女たちを見る。

彼女たちも平気なようだ。

俺は安心し、その場に崩れ落ちる。


すると、彼女たちが俺のところにやってくる。


「ハヤトくんっ! やったわね!」


と、リシテアが上機嫌じょうきげんに言った。


「ハヤトくんのおかげで、鉄の巨人を倒すことができましたっ!」


レアはぱぁと明るくして笑顔になり、そう言った。


「ハヤト様が私達に指示してくれたから倒すことが出来ましたわね。

 ――って別に貴方のおかげって意味じゃないんだからっ」


コ―デリアはフンっ、と鼻を鳴らし腕を組みながら偉そうに言う。


「ハヤトさんのおかげですね! メラメラ……!」


イオはいつもよりメラメラとしながら(?)言った。


レアは俺に向かって話す。


「お兄ちゃん。この後はどうするんですかっ? またお友達探しの旅ですか?」


「いや、


――ザ―。


ノイズが走る。


――もうお友達探しは終わったよ。


もう、終わったんだっけ……?


ノイズは途切れる。


「だから、とりあえずはレアのカリロエに戻って蜘蛛の糸を納品のうひんしにいこう」

「蜘蛛の糸……ようやく納品ができるのですねっ」

「その後、ディオーネに戻って準備を整えてから友達探しにいこうと思う」


あれ? 俺……友達探しは終わったっていま言ったよな?

……なんでだっけ? まあ、いいか。


「そうですか! じゃあとりあえずは休憩ですねっ!」


俺は起き上がり、彼女たちを見て言った。


「さて、このおかしなマグマの《ヴィ―ナス》を抜けて、《カリロエ》向かうとするか!」


「「お―!」」


彼女たちは元気よく返事をする。


「ところでイオ、この《ヴィ―ナス》から、どうやって抜けるのが一番近道なんだ?」

「それはですね! ここから西に向かうと出口が見えますよ! メラメラ……」


イオは西を指差す。


「じゃあ、西に進むか!」


俺達は西に歩き出した。


歩いていると突然、ガタガタと物凄い音が鳴り初め、地面が物凄い勢いで揺れ始める――、


――ゴゴゴゴゴゴ!!


「なんだ? 地震か!?」

「なななななっなんですの?」


コ―デリアは顔面を蒼白にして驚いている。


「地面が揺れているわ! ハヤトくんっ!」

「早く逃げないとですっ!」


リシテアとレアは驚いているものの冷静なようだ。


イオは焦りながら俺に話しかけた。


「ハヤトさんっ! 行きましょう!」

「ああ!」


俺達は走り出す……!


ガタガタガタと、さっきよりも地面の揺れが増している――、


振動が止まらない――—!!

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