27話 都立天ノ宮教育学校 3
僕達は約束時間の8時の20分前に待ち合わせ場所であるカフェ
まだ早朝なので人は少なく、辺りには肌寒い風が吹いていた。
「学校なんてはじめてだから楽しみです!」
茶眩が嬉しそうに言う。それを見ていると、足音が近付いてくる。その音の方向を見ると1人の女の子がいた。
「待たせてごめんなさいっす。」
とその女の子が言う。この発言からして、この子が僕たちを学校に連れていってくれる、と言った子だろう。
「はじめまして、えっと…貴方が繭の言ってた人であってる?」
「初めましてっす。私が繭ちゃんの言ってた、
舞さんが自己紹介をしたので、僕達も軽く自己紹介をする。ここの高等部が何歳からかは分からないが、日本と同じなら1歳年上だ。
「じゃあ着いてきてくださいっす。」
とそう言って舞さんが歩き出したので、僕達は後ろを着いていく。
舞さんは歩いてる途中、道の両端のお店について色々と話してくれた。気になったお店もいくつかあったので、今度行こうと思った。
そうして数分歩いていると、大きなお城みたいな建物が見えてきた。
「着いたっす。」
舞さんがその建物を指さしそう言う。
「すご……」
予想以上の大きさにそんな声が漏れる。舞さんが少しかけ足になって建物に走っていくので、僕達もそれを追いかける。
建物を囲う大きな門の前で舞さんが足を止めたので、ようやく追いつく。舞さんは門の前にいる人と話していた。
少し話したあと、舞さんは僕たちのいる所に来る。そして大きな門扉が音を立てて開いた。また舞さんに着いていく様な形で敷地内に入る。かなり大きい前庭には、噴水やベンチがあり、お昼ご飯時にはカップルで賑わうだろうという雰囲気だ。そんな景色を見ながら、舗装された道を歩いていると学校の玄関に辿り着いた。話が通っているのか、数人が僕たちを待っていた。その中で1人、白髪の男性が近付いてくる。そして、
「私がこの学校の校長です。今日は遠くから来ていただきありがとうございます。」
と言って頭を下げる。僕達は慌てて、
「こちらこそ忙しい中ありがとうございます。」
と深々と頭を下げる。
少しだけ校長の話を聞いたあと、僕は話があると校長に呼び止められたので僕抜きで学校を回ってもらうことにした。
校長に連れられ、校長室に入る。もちろん2人っきりだ。こうなった理由は僕が昨日とった行動にある。
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「ヤマトさん、いますか?」
村長であるヤマトさんの家の玄関で僕はそう叫ぶ。すぐに中から玄関に向かってくる足音が聞こえた。
「雷さん。どうしたんですか?」
「昨日、街に学校があると聞いたんですけれど。」
「あぁ、天ノ宮の事ですね、それがどうかしたんですか?」
「緋莉と茶眩をそこに入れてあげたいんです。校長に話を通してくれますか?」
「できますよ。あそこの校長とは仲も良いですから。」
「ありがとうございます。」
そう言ってペコりと頭を下げる。もう夜も遅いのですぐに帰ることにした。帰り道、どうしてヤマトさんがこんなに顔が広いのか気になって仕方が無かった。
#
校長という、明らかに立場が上の人と2人っきりで話すのはとても緊張するものだと思う。と言うよりもそれが一般的な常識だろう。だけどここの校長はとてもフレンドリーな人で、緊張してたのは最初だけだった。少しだけ世間話のような話をした後、話は本題に入る。
「ヤマトさんから聞いていると思うんですけど、この学校に入れさせたい人が2人居るんです。」
「緋莉さんと茶眩さんの事ですよね。勿論私たちは歓迎します。本人の意思はどうなんですか?」
「本人たちも入りたいと言っていました。今日来るのもとても楽しみにしていました。」
「それは嬉しい話ですね。では入学のためのいくつかの書類があるので、それを書いて後日持ってきてください。」
「分かりました。ありがとうございます。」
僕は座っていた椅子から立ち上がり、頭を下げる。
校長室から出た僕は、舞さん達と合流し学校を見て回った。その間緋莉と茶眩はずっと楽しそうな顔をしていた。
#
そんな楽しい時間も終わり、今は帰るための馬車に乗っている。はしゃぎ疲れたのか緋莉と茶眩は寝ている。
馬車が村に着き、寝ている2人を起こして、家に帰る。テーブルに貰った書類を置いて全員で目を通す。
校則や指定の制服等などを興味深そうに見る2人。
しかし、その書類に書いてあった1文を見て、僕たちの表情は暗いものに変わってしまった。だってそこには、
―入学者及びその保護者のサインを書いてください―
と書かれていたからだ。
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