13話 本祭にて事件は起こる。
「らいー!おきて!」
朝早くにそんな声で起こされる。何でこんなに早く起こされたか分からない。
「今日はパンプキンパーティー本祭だよ!」
そんな事を言っている。だから早く起こしたのか。
だけど本祭は夕方スタートだ。こんな早く起きる必要は無い。多分繭はその事実を知らない。
「今日の本祭は夕方からだからもう少し寝るね。」
と言って布団に潜りもむ。
「あ、ちょっと!」
と繭が言っていたが、それは無視する。すると、
「起きてよ!」
っと布団をバサッと盗られた。秋の朝方は結構寒い。
特に温かい布団の中にいた僕にとっては地獄のような寒さだ。
「さむ!」
そう言って僕は飛び起きる。そして繭から布団を取り返し、また布団に入って目を瞑る。すると、がさごそと、何かが擦れる音がした。そして、
「これで温かいでしょ?」
と声が聞こえる。その声の主の方を見てみると、同じ布団に繭も入っていた。それを見て僕はまたまた飛び起きる、心臓はバクバクだ。
「まぁ…温かくはなったよ。」
温かく無くても、今布団に入ったらさっきの事を思い出しそうなので、二度寝は出来なくなった。
「じゃあ起きててね!」
と言われる、もう起きてる事にしよう。夜まで暇だけど。
「分かったよ」
そう返して、僕はリビングに向かった。
#
「今日の本祭、絶対に離れないようにしてね、茶眩」
私はそう言う、茶眩もその言葉の意味がわかったのか
「分かったよ、緋莉。今日は危険だからね」
と答える。今日を乗り越えるまで気を抜く事は出来ない。
一方その頃
「今日は、あの二人を捕まえる絶好のチャンスです。しっかりと連れ戻して下さいね。」
そう言って笑う1人の美しい女性がいた、北の都市、パンプキンパーティー本祭会場、
#
時間は過ぎ、正午過ぎ。夕方までやる事のない僕は茶眩と共に仮装をさせられていた。理由は昨日のパンプキンパーティー前夜祭で仮装をしなかったからということだ。
「かわいいー!」
何故か僕に魔女の仮装をさせた繭がそう言う。厚手のローブとか色々着て結構暑い。僕の横では茶眩が吸血鬼の格好をしている。緋莉に、
「カッコイイー!」
と言われて照れている。確かにかっこいいので少し羨ましい。
#
その後も何度も何度も色んな仮装をされられ、数時間がすぎた。日は傾き、空は茜色に染まっている。そんな中僕達はパンプキンパーティー本祭に行く準備をしていた。名前はちょっと変だが、この大陸全体で行われる祭りだ。
「ほらっ、急いで!」
と繭が言う。その格好は浴衣姿だ。折角のお祭りだから浴衣を着たい、という理由で全員無理矢理浴衣に着替えさせられてる。そのせいで時間がかかってる訳だ。
「うん、今行く!」
そう言って玄関へ向かうと、僕以外の3人が待っていた。
「遅いですよ。」
と緋莉に言われる。
「慣れてないからしょうが無いですよね。」
と茶眩が言ってくれる。ありがたい。
そのまま玄関を出て、西鳴神社へと向かう事にした。目的地までは約10分位なので、着いたらやりたい事、食べたい物を話し合っているうちにすぐ着いた。
神社の入口、鳥居の前で、
「どうせなら2人のペアを作って回ろ!」
と繭が提案する。それに、
「いいねその回り方。」
と答える緋莉。続けて、
「じゃあ回ろっか茶眩。」
と茶眩の横へ行く緋莉。そして、
「集合は、祭りの終わりにこの場所で」
と言って2人で先に言ってしまった。
「じゃあ私達も行こうか。」
と言って繭が歩き出す。はぐれないように僕も慌ててそれに着いていく。
「凄いね〜」
繭が左右の屋台を見ながら言う。焼きそば、たこ焼きなどの食べ物系から輪投げ、射的といった遊べるモノまで沢山揃っていた。
「あっ、あれ食べたい!」
と繭が1つの屋台を指さす。それは、桜葉の素揚げというよく分からないものだった。
「なにこれ?」
と、繭に聞くが
「知らない」
と返される。
「気になったから」
とも言っていた。知らないものを食べてみるのは結構勇気がいるので素直に凄いと思う。
1つ注文をする。サービスで2人分貰えたので、2人で一緒に食べる。
「美味しい…」
口に入れ、1口かじると、そんな声が漏れた。見た目は葉っぱの揚げ物なのに、噛むと少しモチっとして、口の中に甘い味が広がる。
「今度作ってみるね」
繭がそう言う。多分気に入ったのだろう。
その後も、金魚掬いをしたり、チョコバナナを食べたりして楽しんだ。
#
「このタイミングを逃したら次は無いですよ。」
そう言う美しい女性。その女性は此処、西鳴神社である少女を探している。何人かの仲間を引き連れ歩いている姿は組織の偉い人のようだ。
「早く見つけて下さいね」
女性は仲間にそう命令して自分は1人祭りを楽しんだのだった。
#
「たまには2人も楽しいね!」
そう言って目の前の少女、緋莉は笑った。今はパンプキンパーティー本祭の舞台、西鳴神社に出された屋台を2人で回っているところだ。
「そうだね」
そう答え、僕も笑う。何故だか2人の歩く速度は同じで、よってみたい場所も同じ。長年一緒に過ごしたからか考え方も似ているのだろう。
「こうしてると昔を思い出すね。」
そう言う緋莉、しかしその表情は笑ってなく、暗かった。
その理由は僕達の過去にある。
僕達は雷に出会う前、つまりまだ西の都市に住んでいる時。両親や周りの人から酷い扱いを受けていた。元々東の都市はスラム街が多く、犯罪なども多かったのだが、家の両親はかなり酷い人だった。僕力は当たり前、犯罪への手伝いもさせられた。それが嫌で逃げ出した私たちを救ってくれたのが雷と繭だ。多分僕達は未だに両親に追われてる。捕まるその日まで僕達は家族で居られたら良いなと願う。
「さくら?茶眩!」
そんな思考はいきなり話しかけられたその驚きで消しさらわれた。
「どうしたの?」
そう聞かれるが、
「何でもないよ。」
と笑って返す。でもその顔は笑っていなかったと思う。それは、よく知った顔が見えたからだ。
緋莉の母親、夏空
「ちょっとトイレ行ってくる。」
いきなり話しかけられ、
「えっ?あっ、わかった。」
と返してしまう。それが後の後悔に繋がるとは知らずに。
#
祭りも終わりに近づき、僕達は本殿へ向かっていた。今日のお祭りの本題、豊作を祈る様子を見るためだ。
「よく分からないけど、凄いね。」
横で繭が言う。本殿の中では神主のような人が、何かをしている。何をしているかは遠すぎて分からなかった。
「そろそろ戻ろっか。」
もう殆どの人が帰っているので、多分緋莉と茶眩も集合場所の鳥居の前に居るだろう。
「わかった。」
と言って、繭が歩き始める。
鳥居の前に着いたが、2人はまだ来ていなかった。
「遅いね。」
辺りにもう人は居ない。何かに巻き込まれたのか心配になってくる。
「そうだね、もう少し待って来なかったら探しに行こう。」
そう答える繭も、心配そうな顔をしていた。
数分後待つが、まだ2人は来ない。探しに行こうと思ったその瞬間、人が走ってくるのが見えた。
「2人、来たんじゃない?」
そう繭に言う。その人が茶眩だと気付き、僕達の表情は安心したものに変わる。しかしその刹那、僕達の表情は暗い物に変わった。
その理由は―――
近づいてくる人が1人なこと、その1人が泣きそうな顔をして、
「あかりがっ、緋莉がいなくなっちゃいましたぁ!」
と泣き叫んだからである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます