第8話

 加護くんが好き。

私、こんなにおかしくなっちゃったのに、きっと誰からも分からないんだろうな。私は加護くんが好きで、毎日毎時間毎分加護くんのことで頭一杯で、一人でいっぱいマスターベーションなんかしちゃうし、気持ち悪いくらいに加護くんのことを考えているのに、私が普通に振舞っていれば、誰もそんなこと分からない。どんなに頭がおかしくなっていても、普通を装っていれば誰も私の頭の中なんて分からない。じゃあ誰が私の事を分かってくれるの?私の頭がおかしくなっても誰も分からないのに、私がいくら頭ではまともでいても、言動がおかしかったら誰も私をまともだなんて思わないよね。私がいくら冷静沈着な頭をしていたとしても、裸で教卓の上で踊りだしたら、みんな私の事を頭がおかしくなったとか思うだろう。私の頭は正常だったとしても!たったそれだけで!

 とたんに全部めちゃくちゃにしてしまいたくなる。真面目に真面目に振舞ってきた自分なんて全部捨てて、加護くんが好きってこの狭い教室で叫んでみたい。加護くんの唇に噛みついたら、加護くんは、みんなはどんな顔をするんだろう。大好きな加護くん、でも、大好きな加護くんは少なくとも私の加護くんじゃない。私に向ける笑顔も言葉も特別じゃないことくらい分かってる。だからめちゃくちゃにしたくなる。加護くんが私の事を忘れないように、どんな形でもいいから覚えておくように、印を付けたくなる。そんなこと、しちゃいけないのは分かってるんだけど。

 「まとも」で「真面目」だった私はまだどこかにいる。加護くんへの熱が冷めたらきっと元通りになるから。



 「ねえ、加護くん」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君といる時間以外全部死ね 青い絆創膏 @aoi_reg

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る