ゴーストライター

有間 洋

第1話 文章と私

 昔は小説家になるのが夢でした。大学では文芸同好会というサークルに入って、時々書いてました。でも、私は小説家には向いていないことを思い知らされ、小説家になる夢は諦めました。


 なぜ、諦めたかというと、私にはプロット(小説の構成)や登場人物の細かな設定や、そういう作業がまるでダメだったからです。実際に起こったことを(ちょっと盛って)面白おかしく書くのはできるのですが、自分が神となって、ゼロから世界を作る事はできません。それに加えてたいした文章力もないのに、小説などは書けません。


 そんなわけで、大学卒業するときに、もう、文章を書くのはやめようと決心して、地元の会社に入社したのですが、皮肉なことに、ここで、採用活動の一環として、採用者に向けた本を作ることになって、文学部出身だった私は、この本の作成を任されたのです。


 その本は、その会社の何人かの社員の体験談みたいなのを、いくつか集めて、冊子にしたもので、採用活動では、応募者に配り、書店にも置いてもらいました(もちろん、ほとんど売れませんでしたが)。


 ただ、たまたま入社した会社で、就活のための書籍を作ることになって、その時に他人の作品を、読めるように書き直す、ゴーストライターのような仕事をやりました。要は小学生の作文のような文章を、本として読めるレベルの文章に書き直す作業です。


 この作業に私は向いていたようでした。それから、毎年、この冊子は作られ、私に任せられました。


 自分はゴーストライターのような仕事が向いているらしい、と気づいたのはその頃です。


 また、もう1つ、私は、会議の議事録作りも任されました。テープに録音された会議を

テープ起こしして、それから、読みやすく議事録に作り上げる作業です。


 これも、私には向いていたようで、何時間もかけて、月に2回、会議の議事録を作り上げました。


 こんな風に私は、小説は書けませんが、何か実際に起こったことを、アレンジして文章にするのは得意なようです。


 だから、小説を書こうとは思いません。小説を書ける方はリスペクトです。ゼロから世界を作れるなんてすごいと思うからです。


 小説を書かれる方が、仕入れから盛り付けまですべて自分でやって作る料理人なら、私は冷蔵庫の中を見て、残り物で何か作るただの主婦です。


 こんな私が文章について語っていこうと思ったのは、小説の書けないことを反面教師にして、

どうしたら、他人が読んでくれる文章を書けるのか、読み手として、一方で書けない書き手として、書いてみたいと思ったからです。


 どんな、作品になるか自分でもわかりませんが、面白い作品になるといいと思います。


 どうぞよろしくお願いします。


 

 


 

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