第23話 ボルクス村 5
「ゴージャスさんって失礼ですね。私の家がみすぼらしいだなんて・・・」
本当に悲しそうに言い
でもその顔の下は全然悲しそうじゃないけどね。
「な、何かうちの者が失礼をしたのでしょうか?!」
「いえ、宿の方はとても親切でしたよ? でも私がルダ君と一緒に居たいだけなんで」
「は? ルダ、とですか?」
戸惑っているゴージャスさん。
何で一緒に居たいのか僕も良くは分からないから人の事は強く言えないんだけど。
「それで、今の話はどう言う事か説明をしていただいてもよろしい? 私の思い違いなら良いのですけどもし思っている通りだと問題になりそうですし・・・特にゴージャスさんにとっては?」
この姫様も大概に演技派だな。
そう言えば母さんが言っていたっけ。
人の王侯貴族と言うのは腹の探り合いが優秀かどうかで、生き残れるかどうかという過酷な世界だって。
だからこういう言い合いはお手のものだって言っていた。
じゃあ母さんはどこで身に着けたのだろう?
「な、何の事でしょうな、あははは! 私は単にルダ君にお礼をしたくてお持ちしたまででして他に意味はございません!」
「そうですか? 何やら解雇とか不穏な言葉が出ていたようですが?」
「ま、まさかですよ・・・そ、そうだ! こ、今度この村でも養蚕業を始めよと思っておりまして、
「リエルさん、でしょ?」
「そ、そうリエルさんにお願いしようかと」
「・・・・・・・そうですか」
凄い言い訳だな。
「どうします? ルダ君、リエルさん」
「僕は別に、母さんは?」
「私は、そう言う事でしたら喜んで相談に乗らせていただきますよ」
「そ、そうかそれは良かったよ・・・・・く・・そ・・こうなったら」
「今、何か言いましたか?」
「いえ! 何も!」
「そうですか。それは良かったです。ではこれでこの件は終わりですね?」
フィネーナ姫様、ありがとうございます。
さすがに貴族の方を敵には廻したくはないだろうし、これ以上難癖付けてはこないだろう。
「はい、この件はですな」
ゴージャスさんの顔つきが変わった。
まだ何か企んでるのか?
「まだ何かあるのですか?」
「はい。村長の報告によるとルダ君が魔獣に襲われた時、下半身、特に喰いちぎられた足を確認しているとか? それなのに戻ってきたルダ君の足は完全に治っていた。たった3週間で再生するのはおかしいのではないかとね」
「そうですか? 高位の聖職者の方とかなら数時間あれば治癒系魔法で復元可能と聞きますが?」
「その高位聖職者はどこに? どなたなのでしょうな?」
「何が言いたいのですか?」
「噂に聞いた事があるのですよ。ハンターや、騎士が、瀕死の状態の時、悪魔のささやきを受け入れ自らが悪魔になる悪魔付きの事をです。その者はどんな重症であろうと一瞬で完治するそうです。その代わり人の生き血を求め、人の憎悪を誘うと」
どうやら今度は僕を悪魔付きとして捉えるつもりみたいだ。
確かにあの時は下半身の殆どを持っていかれてたものなあ。
ラフタラーテ様でなければ本当に死んでた。
でも困ったな。
僕が悪魔付きじゃないって証明をしなくちゃいけなくなったかも?
でもどうやって?
「私がルダ君は悪魔付きじゃないと証言しますけど?」
「何の証拠を持ってですかな?」
「・・・・・・・」
「言い返せないと言う事は証拠が無いのですな?」
何も言い返さない母さんとフィネーナ姫様。
「でしたら、悪魔付きでない証明には、3日間の隔離が必要になるのはご存じでしょう?」
「ええ」
フィネーナ姫様が返事をして母さんが頷いた。
「悪魔付きになった者は1日に一度は人の血を求める事は周知の事実。血を補充しないと禁断症状が出て体組織が崩壊するからだ。その崩壊限度が3日だと言われている」
「つまりルダを3日間隔離監視して悪魔付きかどうかを判定するというのね?」
母さんがゴージャスさんの言いたい事を先に言い当てる。
そのせいか少し眉間にしわが寄った様に見えたけど、直ぐに冷静さを取り戻したみたいだ。
「そうだ。これは世界基準法に則った証明方法だ。悪魔付きじゃなければ問題無いのだから、よもや拒みはしないだろう?」
あくまでも丁寧に焦ることなく喋るゴージャスさん。
それに対してこちらも特に荒立てることはなかった。
「そうですか。ルダの事を悪魔付きだと言われる事自体、心外ですけど疑いを掛けられる状況も分かります。なのでその申し出、受けさせていただきます。ルダも良いわね?」
もちろん僕も問題無い。
だって悪魔付きじゃないもの。
どちらかと言うと神様付きかな?
なので大きく頷き同意を示した。
「では今から我が家の地下牢内で監視期間に入らせてもらう。ついて来るんだルダ」
ゴージャスさんが僕を手招きする。
「ちょっと待つんだ」
そこにレジ―おばさんが顔を出してきた。
「なんだレジーまで居たのか」
「ふん、まあそれよりルダ君の監視に私も立ち会うよ」
「それは出来ん! 監視対象の身内は立ち会い出来ない規則だ」
「私は身内じゃないぞ?」
「お前はリエナの幼馴染なのだろう? その子とも近しい関係なので却下だ」
「では、私が立ち会いましょう」
次に手を挙げられたのはフィネーナ姫様だった。
「そ、そんな、こんな事でラウスシュタット公爵家の御令嬢にお手間を取らすことなど出来ません!」
「そんな遠慮はいらないわ。だいたいルダ君をこの村に送ったのは私だもの。もし悪魔付きの者だったとしたら、その様な者を連れ込んだ責任があるわ」
「しかしですな・・」
「私は身内でもないし、昨日会ったばかりの人間なのですよ? これ以上の適任者は居ないと思いますけど?」
「・・・・・・・・・・・分かりました。それでは3日間の立ち会いをお願いいたします。こちらからはブルドと村長が立ち合いをいたします」
「分かったわ」
そうして僕は、ゴージャスさんとフィネーナ姫様に連れられてゴージャス邸に向かう事になった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・行ったわね」
「おば様本当に良いのですか?」
「良いのよ。この方が手っ取り早いから。それに予想通りなら、そろそろ来るころだと思うのよね」
シェリーにはその意味が良く分からなかった。
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