第21話 ボルクス村 3

「それで、ルダ。私に何か言わなければいけない事があるわよね?」


朝一番、僕を起こして食堂に来るように言われ直ぐに降りると、レジ―おばさんと二人でテーブルに座っている母さんに、開口一番そう言われた。


「えっと、どれの事かな?」


テーブルにつく前だったので、その場で立ちつくし頭を掻きながら曖昧な返答をした。


「全部よ」


全部ね。

それは、本当に全部という事だ。

隠す事は許さないし、隠しても無駄だと言っている気がした。

母さんを騙せるなんてこれぽっちも思ってないけど。


「レジ―おばさんにも聞いてもらうの?」

「そうよ。これからの事でレジ―にも色々世話になるからね」


どういうことだろう?

・・・・まあ良いか。

僕は、シェリーと別れた直後からの出来事を包み隠さず母さんとレジ―おばさんに話をした。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、言う訳なんだ。信じてほしいとは言いにくいけど、これが事実で嘘は言ってないから」


さて、どう言われるか・・・。


「はあ~・・・・」


うわあ~深い溜息~。

信用されてなさそう~。


「まったくラフタラーテ様ったら、私の息子をなんだと思ってるのかしら」


え?


「そこまで魔改造しますか。予想通りと言うかそれ以上と言うか・・・」


あれ?


「お母さん? 疑わないの?」

「え? なんで?」

「え? だってラフタラーテ様だよ? 僕が魔操士だよ?」

「ん~魔操士どころの話じゃ終わらないわよ? ルダ、あなたラフタラーテ様の加護を貰ってどころかラフタラーテ様の体の一部を貰っちゃったんだよ? おかげで何その耐性、強化のオンパレードは。しかも魔法もたぶん制限なし、はっきり言って人の域を軽く超えた存在になってるの。自覚はある?」


え? え? ええええ??!!


「な、何それ?! いや! 何で母さんがそんな事が分かるんだよ!」

「そんなのルダの母さんだもん!」


自慢気に言いきられても納得できないよ?


「僕の母さんだから分かるって言っても・・・」

「私だから分かるのよ。ルダは魔法の素質は生まれつきあったの。でもその膨大な魔力のせいで、制御できるまで相当な時間が必要だったの。私の見立てでは、あと30年はかかるはずだったのに」


何を言ってるんだ? 母さんは。

僕が魔法の才能があった?

それを知っていた?


「ほれ、ルダが面食らって固まってないか? それこそちゃんと初めから説明してやらないと」

「あ、そうねレジ―」


何を説明すると言うの?

僕が知らない事が母さんにはあるのか?

しかもそれをレジ―おばさんが知っているなんて・・・。


「混乱してるわね、ルダ。これから母さんが言う事をちゃんと聞くのよ。あなたの将来にとても重要な事になるから」


僕を手招き、テーブルを挟んだ目の前に座らせる。


「その話し、私もお聞きしてもよろしいでしょうか?」


突然、階段の方からフィネーナ姫様の声がした。


「あら、起きてらしたの?」

「はい、と、うよりお気づきになられていましたよね?」


フィネーナ様とファルナさんまで一緒に階段を降りて来た。


「私だけ除け者は嫌よ」


続いてシェリーまで降りて来た。


「さて、どこまで聞いていたのかしら?」

「ルダ君がそのブルドでしたかしら? 酷い目に遭わされたあたりかしら?」

「そうですね。男として最低ですね」


フィネーナ姫様とファルナ様が眉間にしわを寄せている。


「昔はそうでもなかったけど、最近特に気持ち悪いというか、悪寒がするもの」


シェリーは腕を摩りながら思い出して本当に悪寒が走ったのかも。


「でも、その話が本当なら、ルダ君って・・・」

「さすがフィネーナ公爵令嬢、または魔王候補と言うべきですか。察しが良いですね」


フィネーナ姫様の言葉に母さんは微笑む。

でもその微笑みには何だか色んな意味がある様に思えた。


「ドン、ドン、ドン!」

「リエナさん! リエナ・ルーデルタさん! 居るかね!?」


そこへ家の玄関戸を叩く音と母さんを呼ぶ声がした。


「今から村長が訊ねて来る。あとゴージャスさんと息子のブルドさんもだ!」


玄関先から聞こえた言葉に、一同の顔が引きつった様見えた。


「いい度胸ね。ブルド」


最初にシェリーが言い出した。


「そうね。ルダ君を虐める者に慈悲はいりませんね」


何故かフィネーナ姫様までが怖い事を言っている。


「お手伝いします。姫様」


何の手伝いをするつもりなの? ファルナ様!


「どれだけシェリーが悲しみ苦しんだか・・・親としては黙っている訳にはいかないな」


手をバキボキ鳴らしながら凄まないで下さい。レジ―おばさん!


「そうね。会いましょうか。言い訳によっては、消滅衝動を抑えられないかも」


母さんが一番怖いよ!

それから程なくして、僕の家にブルド達がやって来た。

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