夢題の短編集

佐藤.aka.平成懐古厨おじさん

日曜日の出来事

日曜日の街。人通りの多い繁華街。女子高生全裸バイオリンコンサートの帰り道のことだった。


手を繋いで歩く、仲むつまじい家族の姿を見かけた。


なんでこいつらはこんなに幸せそうなんだ。

別に私が32歳独身OLだからって嫉妬してるわけではないのだが、最悪な気分になった。せっかく、父親の借金のカタに無理矢理、全裸で得意のバイオリンを演奏させられる女子高生を見て、最高の気分になっていたのに。


白いワンピースを着た、いかにも育ちの良さそうなお嬢様風の少女。頭に付けた赤いリボン。父親に買ってもらったであろう、バースデーケーキ。そして、何より少女の嬉しそうな笑顔。世界でただ一人のお姫様だというような輝き。


ああ、なんて愛おしいのだろう。なんてムカつくのだろう。

唐突にこの幸せをぶち壊したくなった。


私は衝動のおもむくまま、少女に近づき、彼女の手からケーキの箱を奪い取って地面に叩きつける。続けて、彼女の頭からリボンをむしり取り、ビリビリと破り捨てる。バラバラになったリボンを私は、靴で思い切り地面に擦り付ける。最後に、驚き唖然としている彼女に強烈なビンタを喰らわせ、地面に倒れ込ませる。


ぐしゃぐしゃに潰れたケーキの箱。汚れてボロボロになったリボン。地面に座り込んで泣きじゃくる彼女に、父親が一言、「ああ、せっかくのリボンが汚れちまった、こいつはもうダメだな」。


「うう、お父さん、うわあああああああ」

「さーて、リボンの無くなったクソゴミはもう不必要だし、ここに捨てて帰るか」

父親は容赦なく吐き捨てて、去っていく。

それに従う母親は何がおかしいのか、かつて娘だったものを見て、大爆笑していた。


ああ、やっぱり、可愛い娘には、泣き顔がよく似合う。

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