空に走る

暗黒星雲

第1話 誘惑

 私はベッドに押し倒された。

 

 狙い通り。


 拒否されるかもって不安はあったけど、シャワーの後にバスタオルを巻いただけの姿は刺激的……みたいだ。


 あおいは息を荒くして私の唇を求めてくる。そして舌を絡めてきた。私は少しためらってから葵を受け入れた。


 葵の唇は私の首から肩、そして胸へと移動する。

 バスタオルは剥ぎ取られた。


 もうドキドキが止まらない。


 我慢できなくなった私は、胸に吸いついている葵に言った。


「ねえ、早く来て」


 私の言葉に顔を上げ、驚くように私を見つめる葵。


「いいのか? かなで


 葵の言葉に私は頷く。


「うん」


 葵は着ていた衣類を脱ぎ捨てて、再び私に覆いかぶさる。そして私は葵に激しく、そして優しく愛された。


 パートナーを失ってからずっと塞ぎ込んでいた葵。

 私は彼を元気付けたかったし、彼の気持ちも知っていた。


 私は何度か葵に告白された。

 でもその都度、何か理由を付けてはぐらかしていた。


 それは、葵のパートナーであるつかさからも告白されていたから。


 私は葵も詞も大好きだった。

 二人に告白されて嬉しかった。


 でも私は、私のせいで二人の仲が悪くなってしまう事を恐れた。

 だから、詞にも葵にもきちんと返事をしていなかった。


 悪い女だ。

 心底そう思っていた。


 でも、あの二人のパートナーシップだけは壊したくなかった。


 夢に向かって突き進む二人。

 彼ら二人は二輪のレーサー。鈴鹿サーキットで毎年行われる四時間耐久レースで、今期の有力候補となった二人だったからだ。


 彼らの夢は4耐を制す事。


 私は大好きだった二人の夢を最大限応援する事で、彼等に応える。

 そう決めていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る