第8話 計画始動
「ふ~。ここからの眺めって結構いいな。森と街がよく見える」
俺が今いる場所は名古屋城の最上階にいる。それも対戦車ライフルを持って。
(狙撃ねぇ…。練習はしたけどいけるか?)
練習時間はおよそ4時間。的の中心付近を狙うことは出来るが、動く的を狙うのは困難だろう。他にも心配なことがある。それは、
(こいつ、途中で壊れないよな?)
慎士の使っているカード[幻想の書]はノートに書いた字の物体を具現化することが出来るが、字が汚いとまともに物体は具現化出来ないし、例え字のキレイなやつが書いてもたまに欠陥が出るというものだ。
一応、ライフルは慎士が1つにつき5分かけて書いてくれた。弾丸もだ。大丈夫と信じたい。
(そろそろ出番来ないかな?)
と俺が思って数十分後。雲1つなかった空に不自然に出来た雲。
(あれは……来たぜ)
俺は雲が出来た方向に銃を向ける。なんとそこには1人のプレイヤー。
(よし!慎士、サンキューな)
そう。あの雲こそが合図。プレイヤーが来ると慎士がそのプレイヤーの上空辺りに雲を作ってくれる。その雲も慎士本人によるものだ。カードが慎士に与えた異能力は空気を操るものだからな。雲ぐらい余裕だろう。
俺はスコープを覗き、プレイヤーを狙う。男だ。細くて眼鏡をかけた。あんなやつは俺のクラスにはいなかった気がする。つまり他のクラスか学校。クラスのやつの名前は知らなくても顔ぐらいは分かる。
「んじゃあ、殺るか」
俺は指を引き金にかけ、標的をよく狙う。そして――――発砲。弾丸は真っ直ぐ男へ向かって飛んでいく。見事に脇腹へ命中。即死亡。
これが対戦車ライフルの恐ろしさ。まず人間に当たればどこだろうが即死は免れないだろう。強い分扱うのは難しいと聞く。俺はこの銃が初めての銃だから分からんがな。
「おっと、ちゃんとプレイヤーだったな。これは貰ってくぜ」
カードが龍の元へと飛んで来た。正直に言うと、狙撃対象とした相手がプレイヤーかが分からないのだ。ただ、慎士がプレイヤーかは判断していてくれるらしい。プレイヤーと分かるのはカードが手に入る時だ。そこで疑問に思ったが、慎士はどこから見ているのだろうか。俺は知らない。後で聞いてみるか。
「このカードの異能力は………[海水]!んだよ海水って。こいつの元の持ち主は海が好きだったのか?眼鏡をかけているやつが海に行くイメージってあまり無いんだよなぁ…それにしてもどんな力だろうな。」
俺はカードにある説明文を読む。
[海水]
このカードを持つ者は海水に愛された者だろう。その力は海水を生み出し、あらゆる水を海水へと変えることができる。
俺は声に出して言った。
「使えねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
海水を生み出すって言われてもどうすんだよ。俺は炎系の異能力だから相性は悪いし、あらゆる水を海水にするってのはなんだよ!ただの嫌がらせか!?…………………………はあ、次の標的が来るまで頑張って使い道を考えるか…。
俺はそれから考えた。次の標的が30分後に来るその時まで。
〖〗
「よっしゃあ!これで3人目!ん?もう1人いるな……くたばれ!!」
ここまでプレイヤーを一撃で葬って来た龍。だがここで事態は起こった。
「嘘だろ!?あいつ、靴紐を結ぶためにしゃがんで結果的に弾を避けやがった!クソ!あいつ、狙われてることも気づいたようだな。リロードが間に合わねぇよ!」
俺は慌てる。気づいた以上生かしておくにはいかない。他のやつにばらされると困るからだ。だが、リロードが遅いため、逃げられてしまう。しくじったな…。そう思った時、プレイヤーの腹に穴があいた。血しぶきとともにプレイヤーは消滅する。
(そうか、友結だ!忘れていたぜ…)
計画では俺がしくじった時は友結が仕留める事になっていた。何故友結が重い対戦車ライフルを撃てるのか?理由は台座だ。そこにライフルを置き、標準を合わせる。
(感謝だぜ。友結)
カードが友結のいる方向へと飛んで行く。スコープで覗くと、しっかりと友結はいた。なんかこっちをみているぞ…。何しくじってんだ!みたいな形相だ。なんかこえーよ!
ん?なんかジェスチャーをしている?拳を前に繰り出す動作。ふ~ん。戦うと?確認で一応こちらもジェスチャーをする。指を銃の形にして見せる。すると、正解とやりたいのか手で大きな丸を作っている。
(さっきまでは俺が殺ってたからな。向こうも殺りたいのか。そうかそうか……………いや、自ら殺りたいとか狂気じゃない?)
そんなことをしている間にまた雲が出来る。
(おっしゃあ!!)
パンッ。
俺は撃った。弾丸は真っ直ぐプレイヤーへ飛んで行くものの、当たりはしなかった。その時にはもうそのプレイヤーは世界から消えていたのだ。
(あいつ、かなりやべぇな。こっちも負けてられねぇぜ…)
俺と友結は次の雲が見えるまで待つのであった。待ち時間くっそ暇だわ。
〖〗
勝負を開始してから3時間くらいたったころにはもうプレイヤーは来なくなっていた。
友結と俺、3:3で引き分けだった。とんでもない才能を隠し持ってやがった…。ふう、これで終わりか。俺が休んで待っていると、空に今までとは違う形の雲。あれは……戻れの雲か。待ち合わせ場所はここ名古屋城の入口。
俺は立ち上がり、銃を持つ。入口に向かうためだ。
「あ~疲れたわ~。今日は休むかー」
そう思っていた。その時、俺の周りには生ぬるい風が取り巻いていた。
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