第2話 土の邪気
――キーンコーンカーンコーン……
「そうか。もう放課後なんだな」
資料室で本を読んでいた
「グラウンド使用者の怪我率の急上昇、か」
ここ最近、学校のグラウンドでは十分な整備がなされているにもかかわらず怪我人が続出していた。擦り傷、切り傷程度ならば大したこともない、と学校は判断していたが打撲や骨折、靭帯損傷など大怪我の割合も増えてしまい止むなく骸に調査を依頼したのだ。
「今日は満月だったな。都合がいい」
そう言って生徒が一人も居なくなったタイミングで骸はグラウンドへと歩を進めた。
「……」
グラウンドに出た骸は何やらブツブツと唱えながらライン引きで大きな陣を描いていく。そして陣の端に立ち、御札を一枚、陣の中に放り込む。
するとどうだろう、陣の中に無数の黒い手が生えてきた。そしてそれに特段驚くでもなく骸は無数の御札を次々と黒い手に投げつけていく。黒い手は御札に触れると霧散した。
それから暫くして陣の真ん中に巨大な黒い手が現れた。
「ふん。お出ましか……深淵より来たる漆黒の使徒よ、今ここに力宿らん」
唱えると同時、骸の腕には烏の骸が浮かぶ。
「迷惑な客は消えろ。『骸烏・弐式』」
鋭い黒羽根の剣をもって黒い手を骸は両断した。黒い手が消えると共に、陣も消えていく。
「これでいいだろう……一服するか」
グラウンド端のベンチに座り、骸は煙草に火を点ける。
やけに満月の明るい夜であった。
紫煙が月光に溶けてゆく。
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