第18話 もふられたい系ヒロイン


 組合で些事を片付けた僕らは西の森に来ている。

 配信は1日に撮れる上限時間があるらしく、それに引っかかるということで組合を出る際に終了した。


「3人ともエリアボスは倒したんだよね。レベルもかなり上がってるし、ソプラの街に着いたら北の山に行ってみない?」


 僕が組合で1時間近く遊んでいた間に暁とクレアちゃんはレベルを既に14まで上げている。アイのレベルも20になっているので挑戦してみる価値はあるだろう。


「その北の山に何かあるの?」


「うん、ソプラの街で聞いた話だとワイバーンの住処らしいんだよね。普段は滅多に山から降りて来ないらしいから何か原因でもあるのかなって思ったんだ」


「兄さん、私たちまだレベル14だよ?」


「うん、あたしたちじゃ足手まといに……」


 この世界のワイバーンがどのくらいの強さなのか分からないので不安になりすぎるのも良くないと思う。それにアイの話では、西の森は初期の素質2個でレベル15前後の6人パーティで突破できるくらいの難易度に調整されていたようだ。

 それを3人──しかも内2人はレベル不足──で突破したアイたちのプレイヤースキルは間違いなく異常だ。


「うーん、行けると思うけどなぁ。僕のステータスも見せるから3人のステータスを見せて貰えない?」


「私はいいわよ。マヨイのステータスに興味あるし」


「「私も大丈夫(だよ/です)」」


 というわけで僕らはお互いのステータスを見せ合った。


◼︎パーソナル

名前:アイ

性別:女

位階:20

資質:戦士/商人/神使

覚醒:

称号:緋神の祝福


◼︎ステータス

体力:18120

魔力:3505

筋力:4465

耐久:1245

器用:2845

敏捷:2105

知力:165

精神:165


◼︎スキル

①吶喊Ⅱ

②契約Ⅲ

③緋の神威

④看破

⑤投擲


◼︎装備

武器:緋神の祭矛

胴装:街娘の服[服4/赤]

脚装:街娘の服[脚2/赤]

靴装:旅人の服[靴9/ピンク]

装飾:緋神の牙



「ちょっと待って。ツッコミが渋滞してる」


 アイも覚醒を手に入れてたなんて聞いてないよ。


「昨日の夜に噴水に行って覚醒を手に入れたまでは良かったんだけど、代わりに面倒なクエストに巻き込まれたのよね。あ、この装備はそのクエストのクリア報酬よ」


 僕と同じパターンだ。

 あのクエスト、失敗してたらどうなってたんだろう。

 アイは覚醒と称号、スキルの情報を見せてくれた。

 装備の性能については秘密にしたいらしい。


【緋神の巫女】

 緋神の意思を代弁する者

 筋力+11 器用+7 敏捷+5 耐久+3


【緋神の祝福】

 緋神に気に入られた者に与えられる。

 クリティカルダメージ+80%


 巫女の補正値は使徒と同程度だった。

 称号の祝福は相手に与えるダメージが増える有用な効果だ。


名称:緋の神威

分類:補助 神聖

対象:自身

射程:なし

効果:与物理ダメージ増加+100%

   被ダメージ増加+100%

   緋狼の召喚/使役

   人狼一体

再使用:なし



 このスキルを説明された僕の感想は1つだ。


「ピーキー過ぎない?」


 被ダメージ2倍が辛すぎる。

 緋狼の召喚も使役というのは待ち合わせの目印にされていた狼のことだろう。

 人狼一体は◯ののけ姫のサ◯みたいに狼に騎乗する効果だろうか。


「見せるわね。緋狼ひろう召喚」


 藍香の足元に緋色の魔法陣が広がったと思ったら魔法陣の上に大型二輪くらいの大きさの狼が現れた。

 緋狼という名の通り毛並みの色は緋色だ。


「ウォウン!」


「「可愛い!」」


「確かに可愛いな。触っても大丈夫?」


 僕は可愛いというよりカッコいいだと思うけど同意しておくのが吉だ。女性が可愛いと言ったものを否定すると大惨事が待っていることを僕は藍香から学んでいる。


「うーん……いいけど少し待ってね。人狼一体!」


「えぇ……なぁにそれぇ?」


 目の前に現れたのは緋色の狼の耳を生やした藍香だった。

 よく見ると緋色の尻尾も生えている。

 どうやら人狼一体は騎乗するのではなく、文字通り融合する効果だったらしい。


「もふっていいわよ?」


 両手を広げて僕の方を向く藍香。

 可愛い。可愛いよ。可愛いけどさ……


「できるか! ハラスメントで1発退場じゃんか!」


「真宵のヘタレ」


「兄さんのヘタレ」


「お兄さんの根性なし」


「クレアちゃんまで!?」


 おかしい。僕は間違ったことは言ってないはずなのに。


「ちなみに人狼一体の効果は融合した緋狼のステータスを自分のステータスに上乗せする効果よ」


「緋狼のステータスは?」


「私と同じ数値みたいね。だから実質全ステータス2倍」


「強すぎない?」


「だから元のスキルにデメリットがあるんじゃないかしら」


「「「なるほど」」」


「あと待ち合わせした時から気になってたんだけどアイたちの服ってフレーバー?」


「そうよ。組合の近くにある服飾店で買えるのだけど、種類も色も結構な種類があるから好きにコーデできるのよ。特殊な効果はないから値段も安かったわ」


「僕も買えば良かったな。そろそろ初期服卒業したい」


 麻っぽいからか少しチクチクするんだよね。

 こんな細かな感覚まで再現しなくてもいいと思う。


「次に組合に寄る時にでも一緒に行きましょう。次はショウとクレアのステータスを見せてちょうだい」


 このトンデモスキルを披露した後はつらいと思うぞ。


───────────────

すいません、ステータス回は今回だけで終わらせる予定でしたが上手く纏まりませんでした。

次回はショウとクレアのステータスとなります。


最後にレビューや感想、応援など非常に励みになってます。正直、プロットなしでモチベーションが保てているのはそれらのおかげです。

ありがとうございます。

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