第3話 油断大敵?
説明し忘れていた部分の追記、一部描写の変更などの改稿を実施しました。
読者の方に混乱を招き申し訳ありません。
(2020/8/23)
───────────────
MMOにおける金策の定番といえば素材の売却や依頼の報酬だ。大抵のMMOには依頼を受注するための施設が存在する。
この"Continued in Legend"の世界にも同様の役割を持った施設は存在しているようで、住民に聞いた話では国民でなくとも登録さえすれば誰でも貴賎なく依頼の申請や受注ができる"組合"という組織があるらしい。
それをヘルプの情報で知った僕は人の良さそうな顔をした男性プレイヤーに道を訪ねてアルテラの街の"組合"まで案内してもらうことができた。
「ここだよ」
「ありがとうございます」
問題があるとすれば登録費用だ。
案内してくださった人の話では身分証明書を持っていない場合、それを発行するための手数料を支払わなければいけないらしい。
「手数料として100Rいただきます」
足りたが残りは530Rになった。
安定して稼げない内から散財しすぎたかもしれない。
「では組合の階級制度について説明いたします」
受付の男性の話では組合員の階級は最低位の1から始まり上限は設定されていないとのことだ。これは階級を上げることを目標に依頼を受ける無謀な者を減らすためのものらしい。
組合員が階級を上げるためには自身の価値を組合に認められなければならないそうです。
組合に認められるための要項は"人格"と"実力"と"実績"であることも教えてくれました。この場合の"実力"とは総合的な能力のことで戦闘能力主義というわけではないそうです。
「こちらが現在受注可能な依頼になります」
[組合依頼:森猪の討伐]
アルテラ西の森に生息する森猪の討伐。
報酬:1頭あたり10R~
[組合依頼:草原蛇の討伐]
アルテラ北の草原に生息する草原蛇の討伐。
報酬:1頭あたり20R~(上限10匹/1日)
[組合依頼:草原兎の捕獲]
アルテラ北の草原に生息する草原兎の捕獲。
報酬:1頭あたり100R(上限1匹/1日)
[組合依頼:草原狼の討伐]
アルテラ北の草原に生息する草原狼の討伐。
報酬:1頭あたり30R(上限5匹/1日)
[組合依頼:海蛞蝓の駆除]
アルテラ南の海岸に生息する海蛞蝓の駆除。
報酬:1匹あたり1R~
街の探索ついでにゴミ拾いでもしようと思っていたのにモンスターの討伐や捕獲に関する依頼しかない。
「街中のゴミ拾いなどの依頼はないのですか?」
「そういった依頼は街の外で活動できない構成員に優先して斡旋しております」
「なるほど、ありがとうございます。受注してからの有効期限や失敗した場合のペナルティはありますか?」
「ございます。受注した依頼は翌日の組合が終業する時刻を超過した時点で失敗扱いとなります。また失敗が続く場合は昇格査定に不利に働くなどの影響がございますが、意図的な依頼の失敗など組合の不利益となる行為を除けば原則として罰則はございません」
あらためて依頼を確認する。
僕の攻撃手段は魔力弾という遠距離攻撃スキルと果物屋で買ったナイフによる近接戦闘の2つだ。
どちらも生き物の捕獲に向いているとは思えないので[組合依頼:草原兎の捕獲]は無理だ。それに足元の小さな敵に対しても対象が難しそうなので[組合依頼:草原蛇の討伐]と[組合依頼:海蛞蝓の駆除]は外した方がいいだろう。
残るは[組合依頼:森猪の討伐]と[組合依頼:草原狼の討伐]だ。受付さんの話では、森猪は単独行動の多く体力が高いらしい。草原狼は群れで行動することが多いけど単体では森猪よりも弱いらしい。
「森猪の討伐の依頼を受けます」
魔力弾は一度使えば次に使えるのは5秒後だ。
群れが相手では間違いなく手数が足りない。
「森猪の討伐証明部位は魔石になります。お気をつけて」
「はい、ありがとうございます」
受付の人の話では西の森に行くには噴水広場から西に続く道を真っ直ぐ行けばいいと教えてもらったおかげで迷わずに西の森に着くことができた。
サービス開始初日ということで、やはりプレイヤーの数はフィールドに近づくにつれ増えていった。
しかし────
「なんでプレイヤーがいないんだ?」
森に入った直後からプレイヤーによる喧騒が聞こえなくなった。森の中から外を見てみるとプレイヤーの姿が一切見えなくなっていた。それに森の中にもプレイヤーらしき人影や物音は一切感じられない。
「もしかしてインスタンス?」
インスタンスまたはインスタンスダンジョンと呼ばれているそれは、パーティなどの単位で一時的に隔離されるマップのことだ。
「広域探索」
キャラクター作成時に習得した広域探索は効果範囲内の地形と生物を把握することのできるスキルだ。効果範囲は使用者の知力の数値に依存するみたいで、現在の効果範囲は半径14mしかない。
小さな虫にまで反応したらどうしようかと思ったけど、それは杞憂に終わってホッとした。
「猪はもっと奥かな?」
スキルは何度も使うことで性能が上がるらしい。
僕がそれを知ったのは広域探索で敵を探そうとしている最中だった。
[スキル:広域探索が広域探索Ⅱになりました]
というアナウンスが流れたのだ。
これによって効果範囲が少し増えたおかげで、落とし穴や古びたトラバサミなどの罠を回避することができた。
「あれか……?」
広域探索の範囲外、視界の端で苔の生えた岩が動いているように見えた時は錯覚かと思った。
慎重に近づいて広域探索を使う。
どうやら岩は擬態した敵のようだ。
「魔力弾!」
野球の硬球より一回り大きな光の球が苔の生えた岩に擬態した敵に命中した。命中したことで擬態が解けたのか名前と体力ゲージが表示される。
あの岩の名前はフォレストボア、漢字にすると森猪になるのでおそらく今回のターゲットだ。
(ギリギリいける!)
魔力弾1発で削れた体力は4割にギリギリ届かない程度だった。魔力弾は1度使うと再使用するのに5秒必要になるスキルだけど、あと2発当てることができれば倒すことができるはずだ。
「魔力弾!……っしゃぁ!」
こちらに気づき猛烈な勢いで近づいてくるフォレストボアに2発目の魔力弾が命中した。
しかし、その勢いは微塵も衰えない。
(ロケット花火かよっ)
僕に向かってくるフォレストボアの体力ゲームは残り3割を切っている。魔力弾の再使用までまだ4秒と少しあるけど次の1発でトドメだ。
(寸前まで引きつけて躱す!)
フォレストボアの突進が僕に届くまで目算で2秒と少しだ。
突進を回避されたフォレストボアが態勢を整えるより先に僕が狙いを付けるためにフォレストボアの突進を最小の動きで回避する。
────ドンッ
フォレストボアの突進を回避しようとした瞬間、背中に強烈な衝撃を受けた。
「嘘だ、ろ……もう、いっぴk……」
最期に僕の視界が映したのは倒そうとしていたフォレストボアよりも二回りは大きなフォレストボアだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます