拝啓、まだ攻略されていない世界へ

一 八重

第1章

第1話 目標は脱ぼっち?

 作中の矛盾などを理由に大幅に改稿しました。

 本話以降も順次改稿していく予定です。

 読者の方に混乱を招き申し訳ありません。

(2020/8/21)

───────────────




 高校に入学してから3ヶ月が経った。


「クラスに馴染めていない?」


「うん、避けられてる気がする」


 5月の連休明けまではクラスの男子と普通に会話ができていた。けれど5月の中旬辺りから少しずつ避けられ始めて最近じゃ挨拶くらいでしか話をしなくなったんだ。


 うちの学校は10年前まで女子校だった名残りで男子が各クラスに5人くらいしかいないの。男子から避けられる現状ではクラスから完全に孤立しているの言っていい。


「真宵は自分からじゃ女子に話しかけられないヘタレだもんね。これを機に少しはコミュ力磨いたら?」


「簡単にできたら相談しないよ……」


 相談相手の夏間げま藍香あいかは幼馴染だ。

 同じ病院で同じ日、同じ時間帯に生まれた僕らのことを僕らの両親からは『両親の違う双子みたいなものだよね』と頻繁にネタにされている。

 実際、双子の姉と弟(藍香の方が生まれるのが2分ほど早かったらしい)のような関係だ。僕の実の妹である暁も藍香のことをお姉ちゃんと呼んで実の兄以上に慕っている。


「どうすればいいかなぁ……」


「1番簡単なのは共通の話題を作ることね」


「共通の話題……?」


「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」


 "Continued in Legend"は来週末からサービスが開始されるVRMMOのタイトルだ。まだサービスが始まっていないのにバンバンCMを流している。


「まだ発売されてもないゲームがクラスメイトとの共通の話題になるの?」


「既に話題になってるわよ」


 言われてみれば"Continued in Legend"で動画配信するから観て欲しいとか言っていたクラスメイトがいたはずだ。


「VRMMOかぁ……」


「いいじゃない、また一緒にゲームしましょうよ」


 うちの学校はバイト禁止だからね。

 遊ぶ友達も……藍香しかいないし。


「分かったよ。帰りにお店に寄るね」


 藍香の両親は"見和即和チェンホーチーホー"というゲーム専門店を経営している。僕も小さい頃から何度も行っているので既に常連さんとも顔見知りだ。

 店名の由来は麻雀用語らしいけど意味は知らない。


「おかえり」


「なんか言った?」


「いいえ、なんでもないわよ」



◆◇◆◇◆◇◆◇



 今日は"Continued in Legend"のサービス開始日だ。

 本当に久しぶりにVRゲーム専用のギアを装着する。


「ログイン」


 視界が切り替わる。

 懐かしの僕のホーム我が家だ。


『プレイするゲームを選択してください』


 表示されているのはダウンロード済みのゲームだ。

 その1番下にお目当てのゲームはあった。


『"Continued in Legend"をスタートします』


 また視界が切り替わる。

 気がつくと空に浮かんでいた。


「綺麗だ……」


 眼下には海や山、遠くには街も視える。

 しばらく眺めていると目の前にパネルが現れた。


『利用規約に同意しますか』


 音声の案内もある。

 どうやら普通に応答するだけでもいいらしい。


「えっと……」


 利用規約の中にはチートや改造、解析といった行為は100万米ドル以上の罰金を科すなど過激な文章が含まれていた。

 またゲーム中での殺人に代表される犯罪行為を行うことは不可能ではないが、犯罪行為に起因するゲーム内での処罰に対して如何なることがあっても運営は責任を負わないと書いてある。

 PK(プレイヤーキル/他のプレイヤーを殺傷する行為)やNPK(ノンプレイヤーキル/ゲーム内の登場人物を殺傷する行為)そのものは可能だけれど、運営としては推奨しているわけではないということかな。


「同意します」


『プレイヤーネームを入力してください。既に登録されている名前はご利用できません』


 名前に関する注意事項がパネルに書かれている。

・文字数は1~8文字

・使用できるのは平仮名と片仮名、漢字と英数字のみ

・名前が重複した場合はナンバリングで区別される

・公序良識に反する名前は使用できない


 昔、藍香と動画配信で遊んでいた頃の名前はやめておくことにした。配信者に戻るなんてことはないだろうし、そもそも覚えてる人がいたら面倒くさい。

 

「マ、ヨ、イ、っと……」


『登録されました。次にアバターの作成を行います。VRギアに登録されているアバターデータを利用しますか』


 ゲーム内のアバターは以前作成したアバターを流用できるようだ。わざわざアバターを作るのも面倒なので保存されているアバターの中から特に気に入っているアバターを選択する。


 選択したのは現実の姿をスキャニングしたアバターを元に髪の色と長さを調整しただけのアバターだ。身体の大きさなどは現実の姿をスキャニングしたアバターの方が操作性しやすい……と僕は思っている。


「これを利用します」


『……適用しました。これよりプレイヤーキャラクターの作成を行います。貴方の持つ素質を最大2種類まで選択してください』


 選択した素質によってステータスや選択できるスキルが変化するようだ。

 選択できる6種類の素質の名称から予測するに他のゲームでいうところの職業のようなものだろう。それならば自身の望むプレイスタイルに沿う組み合わせを選ぶのが賢い選択のはずだ。まだ望むプレイスタイルが定まっていないのなら応用の効く組み合わせを探すのがいいだろう。


「狩人と魔術士で」


『次に獲得した素質の数までスキルを選択してください』


 これだけ美しい世界なんだ。

 色々なところへ行ってみたい。

 そのためには最低限の戦闘能力と生存率を上げるスキルが欲しい。


「《魔力弾》と《広域探索》の2つを習得します」


 遠距離攻撃と探索用のスキルを選択した。

 僕に近接戦闘は向いていない。

 不得手ではないが相手の身体を斬ったり叩いたりした時の感触が好きじゃないんだ。


『登録しました。初期クレジットを配布します。最後に作成されたキャラクターのプロフィールを確認してください』



◼︎パーソナル

名前:マヨイ

性別:男

位階:1

属性:狩人/魔術士


◼︎ステータス

体力:40

魔力:52

筋力:6

耐久:6

器用:7

敏捷:8

知力:7

精神:8


◼︎スキル

①広域探索

②魔力弾

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