魔法鍛冶師005

 そうしてある程度説明し終えたところで俺は説明を止めた。

 というより、そこから更に彼女に疑問が浮かび混乱し始めたので自重した訳だが……。

 

「魔剣だとしても……えっと……。

そもそもそんなものが本当に作れるのですか?

言っていることは分かるのですが、信じられません」


 説明したことは魔剣アクセルが魔剣という事実と、その能力について。

 それだけでも疑問は容易に浮き上がる。

 

「順を追って説明しよう。

まず、魔剣の作ることについてだが、それは可能だ。

見ての通りソレはこうしてここに実物がある訳だからな。

ならどうやってそれを打つだが……。

言っておくが、訊いたところで常人には不可能だぞ?


 その説明を、興味津々に見た目通りの子供のように目を輝かせてうんうんと相槌を打つロロア。

 それでもかまわないと言われて俺は説明を続ける。

 

「精霊は知っての通り剣や鎧の人口物を嫌う。

剣を魔剣はもちろん。そもそも剣を持ちながらの魔法は通常打てない。

それについては常識だろうか細かい話は簡略化するが、要はそれを何とかした」

「と言うと?」

「簡単な話だ。精霊が嫌わないように剣を鍛え上げた。

とは言え口で言うのは簡単だ。

そうだろ?」


 それができていれば、世界には数多の魔剣が乱造されているだろうかな。

 であれば、その方法自体はこの世界で唯一無に。まだ俺以外実現できてないということになる。

 

 とは言えその方法自体常人には不可能。

 多属性を扱え、賢者である母の元でいくたもの魔法理論を学んだからに他ならない。

 

 ではその方法とは?

 

「作り方はとしては鉄の剣を打つのとなんら変わらん。

まあ、それ自体お前たちの知る方法とは違うかも知れないだろうが。

そこは省く。打っているとことを直に見せてやるからいずれ分かるだろう。

であればどうというか――まあ、簡単な話。俺は道具に頼るから人口物になるという答えに達した」


 その答えに首を傾げるロロナ。

 

「単純に槌や炉などそれらすべを魔法で代用するようにしたということだ。

槌は土と風の魔法を扱い、人口物ではない魔法の槌を扱い。炉の代わりに炎の魔法で高温を発生させる。

色々試したが簡単な事だった。

ヒトが作ったものを扱えばそれだけ精霊が嫌うようになるが、魔法は自然物という判定らしいからな。自然物が作るのだからそれは自然物だ。通りは通っているてソレで魔剣の打つことは可能だ」


 長い間研究した結果、それが諸々な問題を対処する方法。

 だが、それにはロロナは反論する。

 

「ですが、それならば魔法使いが数人束になれば打てるのではないでしょうか?そんな方法なら発見されて既に魔剣は製造されています」

 確かに。

 ロロナが反論するのは確かだ。

 そんな簡単な事で作成できるのであれば、エルフや人間が魔法を扱い打てばいい話である。

 

 だが、それが今の今まで人類がそうしないのは不可能だから。

 

「言っただろう?俺しかできないと。

あくまで今言ったのは理論の一部だ。

実際に魔剣を打つ際には、打ちながら何十にも様々な属性を剣に微細な量で混ぜ合わせてかけて呪文を唱えなければいけない」


 それもコントロールして混ぜ合わせる魔力はあまりにも微細。

 料理で軽量カップや、測りを扱い寸分たがわず料理本と同じ料理を作るように微細だ。

 

 それを場所や打つ剣の性質。与える能力に合わせる必要がある。

 そんなもの、精霊の声が聞こえて好みが分かる俺でしか不可能なことだ。

 ましてや、複数の魔力を合わせて操作するなどハッキリ言って複数人でするのは不可能。そんなもの阿吽の呼吸ほどの以心伝心と言っていいほどの連携が必要。

 それが属性分。それもまた同じ属性でも性質分。人数が増えれば増える程難易度は、ただ大魔法を撃つこととは比較的にはならない程に跳ね上がる。

 

 だから不可能。

 

 一人で全て自己完結しているからこそ可能で。

 理論上、常人が複数人必要としている時点で前提から矛盾している。

 

 まあ、思考を同一化する魔法でもあるのなら話は別だが。そんな魔法を扱う者自体そもそもが大魔法使い。

 魔法使いは古くから伝わる呪文や魔力の扱い方を重んじるのだから、ワザワザ魔剣を打とうなどと新たに考える者はいない。彼らはそんなこと絶対にできない。

 

 何故なら、古くから伝わる技術こそが至高だから。魔法使いは古今東西古来よりそういう伝統を大事にする気質で、先祖が作り上げた呪文や魔法の術式、それは絶対で自分たちが目指す魔法の究極と言い張る。

 例え新技術なあったとしても扱わない。

 それは"過去に先祖が積み上げた魔法は偉大で絶対だ"という否定であり、老害極まりない理由でしか過ぎないが。彼らにとってはそれが当たり前。過去の先人が作ったものは偉大で、新たにでたものなど邪道。

 輝かしい先人を超えるものなどありえない。だから嫌う。新たなものを。

 松明やボウガンと言ったものがあれど、そんなものは魔力を練り呪文を唱えるという面倒な工程を踏んでどうにかしようとしてしまう。

 

 だから、そんな老害では剣を打ち魔剣を打とうと思わない。

 

 それは彼らにとっては新技術であり、先祖の伝統に反するものであるから。

 ありえない。

 

 話しは剃れたが、それらをロロナへ軽く説明したがそこでロロナの思考はショートして頭から煙りを吹き出したので説明をは終了した。

 まあ、そもそもが魔法とは無縁のドワーフであるのだから、魔法については難しかったのだろう。

 それから、俺が一つため息をつくと。ショートしたロロナはしばらくして帰ってきた。

 そうして最後に、何故か手を見せて下さいと言われ、俺は右手を差し出した。

 

 ロロナはその手を自身の小さな手で取ると俺の手のひらを見た。

 子供のようにフニフニした感覚と、暖かい体温の感覚がすごくもっちりとして、握っているのはロロナなのに俺が握って壊してしまいそうに感じる。

 

 そう思いながら俺の手のひらを見つめるロロナは口を小さく開いた。

 

「本当なんですね」


 と、思いもよらないような。

 若干驚き混じりにも、なにか懐かしいものを見るように、優しく座った瞳をしながら彼女は言う。

 

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