魔法鍛冶師004

 夜営の準備は直ぐに終わった。

 広い平原に持って来た薪を積み段を取って火を焚いてキャンプのようにしてそこで全員で調理された食事を取った。

 そうして後は各々は自由に、テントで寝る者や火の前で酒を飲み宴を始める者も居る。

 賑やかな夜会が広げられていた。

 

 そんなキャンプから少し離れ焚火をして座る俺は、同じように焚火を挟むようにして座るロロナに魔剣アクセルを受け渡した。

 

 ずっしりと、鞘に収まる剣を小さな両手で受けると彼女は静かにその柄に右手をかけ剣を引き抜く。

 

 そうして抜いた剣の刃の部分を斬らないように左手で支え、その刀身に鼻先が触れそうなぐらい顔を近づけて観察を始める。

 

「すごい……」


 焚火の火を反射させる刃を覗くようにして、ギラギラと瞳に移しながら彼女そうポツリと呟く。

 

 ロロナにとって、それは宝石よりも魅力的な魔性のソレだったのかもしれない。

 彼女の意識を吸う剣。

 それはただの剣ではなく魔剣だ。鍛冶師の娘であるからなのか、その存在には心底惹かれているようだった。ほぼゼロ距離で見る姿はそのままその剣で自身の首すら斬首してしまいそうなほどに。

 見知らぬ魔力が彼女を強く引き寄せ。

 刃を見つめる瞳は離さない。

 それは見るからに危なっかしい。

  

「おい――おい――ロロナ!!」

「えっ!?あっ、はい!?」


 本当に魔的な何か引き込まれて首を斬りそうな感じに心配になり、声をかけて見るも反応がなく。

 肩を揺らし名を呼んで、ようやく彼女は気が付いた。


「気が済んだか?」

「ええ……」


 呆然とする彼女から俺はアクセルを取った。

 

「ああ……」


 それになんだか物惜しそうに声を漏らすも、問答無用に剣を鞘に納める。

 

「あの……ホントにその剣を打ったのですか?」

「そうだが?」

「なら、素材は?」

「素材?鉄だが?」

「鉄?そんなはずが」


 ないと。言うが、事実そうなのだが……。

 山で手にはいる素材など、麓の町で分けてもらえる銅や青銅、鉄ぐらいだ。金などそれ以上の高価な鉱石など殆ど手に入らなかった。だから、アクセルの素材はほぼ鉄。一部例外な物もあるが、その素材の大部分は鉄である。

 

「なら何故刃は蒼なのでしょうか……。いや、それ以前に剣を持ちながらもどうやって魔法を……。その鋼の質量は……」

「ああ。それは――」


 疑問がこれでかと言うほどに沸き上がり、それらを口にするのは止まらない。

 まあそれ自体は仕方ないといえばそうだが。

 

 色々説明する必要はありそうだった。

 魔剣ということ自体彼女は知らないのだから。

 普通の剣と異なるということは分かっているのだろうが、それが何故なのか、魔剣を見たことがある訳でもないのだから分かるまい。

 だから、俺は魔剣アクセルについて説明することにした。

 


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 

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